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参議院のあらまし

参議院のあり方及び改革に関する意見

昭和六十三年十一月一日 参議院制度研究会)

はじめに

 参議院制度研究会は、藤田・土屋両参議院議長の諮問を受け、(1)広く世界の議会制度の歴史のなかにおける両院制の存在意義は何か、(2)日本国憲法下の両院制における参議院はいかにあるべきか、(3)現行の参議院の選挙制度及び運営に改革すべき点はないか、について研究、検討を行ってきた。ここに、その結果を報告する。

1 両院制の諸型態と上院の役割

(1) 近代国家における両院制は、議会制度の発展過程のなかで、各国において種々の型態をとって形成されてきた。この場合、両院のうちの一院たるいわゆる下院が国民の公選に基づくものであることは当然とされており、したがって、両院制の型態の相違は、他の一院たるいわゆる上院の組織の相違によるものということができる。

 すなわち、上院の組織を概観すれば、その第一の型態は、両院制の母国というべきイギリスにその原型が見られる貴族院の型態である。それは、上院の議員は国王の任命によるものとするとともに、その主たる構成員を貴族とし、これによって上院を国民の公選による下院に対立させる型態である。それは当初、君主制国家に議会制度が取り入れられるに当たって、民選の下院を抑制する役割を上院に期待したものである。わが帝国憲法の下における貴族院は、この型態に属するものであった。

 上院の第二の型態は、連邦制国家に見られる型態である。例えば、アメリカ合衆国においては、両院はともに公選によるものではあるが、下院が全連邦の国民を代表するのに対して、上院は連邦を構成する各州を代表するものとされている。

 上院の第三の型態は、現在、多くの国家において見られる型態であり、両院をともに公選によるものとする。それは、国民の参政権の拡大による民主政治の発展の歴史を反映するものであることはいうまでもない。また、この型態をとる両院制において、下院と上院との権限については、下院に優越的な権限を与えるという型態も見られるに至っている。この型態においては、下院を議会におけるいわば第一次的な議院とし、上院には下院を補完するいわば第二次院としての役割を期待しているものということができる。両院制の母国たるイギリスにおいても、二十世紀以降、議会法の改正により、法律の議決などについて下院の優越が定められた。日本国憲法の下における両院制は、この型態に属する。

 以上のように見れば、日本国憲法における両院制は、両院制の歴史的発展の大勢に一致するものというべきである。

(2)  現代各国の制度を概観すれば、一院制をとる国家の数は両院制をとる国家の数より多いということができる。しかし、現代各国のうち、君主制国家でもなく、また連邦制国家でもない諸国においても、上院の組織及び権限については、いろいろの相違があるとしても、両院制をとっている国家はなお相当多数にのぼっている。

 この点で特に注目すべきは、現在、アメリカ合衆国の五十州においても、ネブラスカ州を除く四十九州において両院制がとられていることである。貴族もなく、また連邦でもない各州におけるこの実情は示唆に富むものがある。これら各州の上院は、議員の定数については、下院の定数が平均約一一〇人であるのに対して、そのほぼ三分の一程度に当たる平均約四〇人という少数であり、その任期については、大多数の州においては、下院が二年であるのに対して四年であり、かつ、その多くは二年ごとの半数改選とされている。また、選挙区については、下院の選挙区よりも広い区域とされているのが通例である。そして、上院の役割としては、議会の審議を慎重にすることのほか、以上のように上院の議員は下院よりも広い選挙区から、長い任期をもって選出されていることから、全州的な立場に立ち、また安定性の強い機関として、下院に対する抑制・均衡・補完の役割を営むことができると考えられている。

 すなわち、上院は下院とともに全州民の公選によるものとされながら、その定数、任期、選挙制度を異にすることによって、上院の議員をして下院の議員とは異なる立場及び視点に立って審議に当たることが可能となり、これによって上院が独自の機能を果たすところにその存在意義及び役割があるということが、各州の長い歴史を通じて広く認められてきたということができる。そして、上院にこのような独白の機能が期待されていることは、広く現代各国の両院制における上院の存在意義及び役割についても、共通に当てはまるのである。

2 日本国憲法における参議院の役割

(1)  日本国憲法下の参議院の役割も、広く両院制における上院の役割とされているものと異なるものではない。すなわち、参議院の役割は、衆議院に対する抑制・均衡・補完の機能を通じて、国会の審議を慎重にし、これによって衆議院とともに、国民代表機関たる国会の機能を万全たらしめることにある。

 日本国憲法は、両院の権限については、一定の場合に衆議院の優越を認めているが、この衆議院優越制の下においても、参議院には、両院制の存在意義を生かすために、このような役割が期待されているのである。

(2) 参議院が以上のような役割を果たすためには、参議院が衆議院と異なる独自の立場と視点に立って、国政審議に当たることがなければならない。それによって、衆議院に対する抑制・均衡・補完の作用を営むことが可能となる.すなわち、もしも参議院における審議が常に衆議院におけると同じ立場と視点によってのみ行われるものであるならば、参議院はいわば第二衆議院に堕し、その存在意義を失うこととなる。

(3) 参議院に期待される独自の立場と視点は何か、といえば、それは参議院が特に次の諸点に努めることによって形成されるといえよう。

(1) 長期的・総合的な視点に立つこと
 すなわち、国政上の諸問題について、特に、参議院は単にその時々の変化や要求に対処するにとどまることなく、国政における継続性及び安定性をも目指して、長期的・総合的な視点に立ちつつ、それらの問題に対応することが期待される。

 日本国憲法が参議院議員の任期を衆議院議員よりも長い六年と定めていること、参議院は解散されることがないものとしていること、さらに、参議院議員の選挙を三年ごとの半数改選とし、一挙に参議院議員が交代することのないことを保障していることは、参議院に以上のような長期的な視点を期待していることを示しているものといえよう。

(2) 衆議院のみでは十分に代表されない国民各層の利益や意見を代表し、反映すること
 すなわち、国民の多種多様な利益や意見のなかには、衆議院のみによっては十分に代表され、反映されていないものもないではなく、参議院は、その審議において、努めてそれらを吸収し、反映することが必要である。また、その場合、特に社会の各部門、各職域における特別の知識経験を有する者の、いわば専門家としての意見を十分に取り入れることが期待される。

(3) 議員各自の意見をできる限り尊重し、反映すること
 現代の議会政治が政党をその主たる担い手として運用されていることの結果として、議員はその属する政党の党議に従って行動するのが通例である。しかし、特に参議院においては、政党に属しない議員の活動の場を広く認めるとともに、政党に属する議員についても、多数党・少数党を問わず、問題によっては、議員各自にその信ずるところに従って意見を主張する自由が、衆議院におけるよりも広く認められることが望ましい。すなわち、参議院は、政党の党議によって画一化されない多種多様な意見、あるいは非政党的色彩をもつ意見をも十分に取り入れることによって、その独自性を発揮することが期待される。

(4) 参議院が以上のような役割を十分に果たし、その独自性をよく発揮することができるかどうかは、第一には、公選制の下における参議院の選挙制度をどのように定めるか、第二には、参議院の運営をどのように行うか、に依存するところが多い。

 すなわち、参議院には、その役割を果たすにふさわしい議員を選ぶことを可能とする選挙制度を設けることが必要であり、また、参議院の運営についても、その役割を果たすことを可能とする運営が図られなければならない。参議院の諸制度の改革を考える場合にもその改革の基本方向は、この二点に求められるべきである。

 以下、参議院の現行の選挙制度及び運営の二点について、なお改革を加えるべき点がないか、どうかについて検討する。

3 参議院の選挙制度

(1) 参議院には、その独自の役割を発揮するために、どのような選挙制度を設けるべきか、は参議院の創設に当たっての最大の問題であった。

 すなわち、当初の参議院議員選挙法の制定過程においては、各種の案が検討されたが、それらのうち、(1)一般選挙人が参議院議員選挙人を選挙し、この参議院議員選挙人が参議院議員を選挙することとする間接選挙制、及び(2)例えば衆議院または地方議会が参議院議員を選挙することとする複選制は、いずれも憲法の要求する「公選」の原則及び平等・自由な選挙の趣旨に反するのではないかという疑いがある、として採用されなかった。また、(3)地域とはかかわりなく、一定の職能団体を選挙母体として参議院議員を選挙することとする職能代表制、及び(4)職能団体等が参議院の候補者を推薦し、その候補者について選挙することとする推薦選挙制は、いずれもその職能団体等をどのように定めるかが制度的・技術的に困難である、として採用されなかった。その結果、当初の選挙法においては、参議院議員の被選挙権年齢を衆議院議員の場合よりも五歳高くして、三十歳と定めたほかは、選挙区については、各都道府県を一選挙区とする「地方区」(一五〇人)と、全国を一選挙区とする「全国区」(一〇〇人)を設け、この全国区選出議員のなかに、政党に属することなく、かつ社会各分野における全国的な知名の人物、全国的な利益や意見を代表する人物などが選出され、これによって、政党を基盤とし、かつ狭い選挙区から選挙される衆議院議員とは異なる性格をもつ議員が参議院に選出されることを期待したのであった。

(2) 全国区制度の実績を見ると、当初の数回の選挙においては、期待されたように、いずれの政党にも属しない各界有識の人物が相当多数、全国区から選出され、これらいわゆる非政党議員が地方区選出の非政党議員をも加えて、非政党的な会派(緑風会等)を結成し、その活動によって、参議院の独自性が発揮された事例もあった。しかし、以後、通常選挙の度ごとに、非政党議員は漸次に減少の一途をたどり、参議院の政党構成も衆議院と同様となり、かつ、その運営も衆議院と同様に政党の支配の下に行われることとなったために、参議院の独自性を発揮することが困難となった。このようにして、全国区制度は当初の期待に反することとなった。

 以上のほか、さらに全国区選挙においては、有権者にとっては、投票したい候補者の選択がきわめて困難であり、また候補者にとっては、その選挙活動のための労力が過重なものとなるとともに、その選挙に要する選挙資金が莫大なものとなり、これをめぐる弊害も生ずるに至った。そのため、主としてこれらの点を是正するための方策として、昭和五十七年、公選法改正により、全国区に比例代表選挙制度が採用されることとなった。

(3) 比例代表選挙制度の下においては、選挙人の投票は候補者個人に対する投票ではなく、政党の作成する候補者名簿に対する投票となり、この点で、この制度は「政党本位」・「政党主体」の選挙制度である。したがって、この制度の採用は参議院の政党化をさらに一層促進するという結果をもたらすのではないか、ということが当初から問題とされ、危惧されていたのであった。そして、以後、その実績を見ると、この当初の危惧が現実のものとなっていると認めざるを得ない。

 また、この制度の下では、各政党がいわゆる「出たい人」よりも「出したい人」として、参議院にふさわしい人物をその作成する候補者名簿に掲げることが可能となるとも期待されたが、この期待も必ずしも十分に達成されているとはいえない。さらに選挙資金の節減についても、その実情はその期待に反しているという批判が強い。

 これらの点で、早くも、この制度の廃止または改革がとなえられるに至っている。参議院の選挙制度の改革としては、まず、この比例代表選挙制度の改廃が中心とならざるを得ない。

(4) 参議院の選挙制度の改革を考える場合、その改革の主要点としては、次の諸点を取り上げるべきである。

(1) 比例代表選挙制度を廃止して、都道府県選挙区のみとすること、もし、比例代表選挙制度を存置する場合は、その選出議員の定数を相当程度減少すること
 なお、都道府県選挙区における定数是正を行うことも必要であるから、右の減少される定数の一部を都道府県選挙区の定数是正のために用いることとすること

(2) 比例代表選挙制度を存置する場合は、現行のいわゆる拘束名簿式の制度を改め、各政党の作成する候補者名簿に掲げられている候補者の範囲においては選挙人の候補者個人に対する投票をも認めることとするいわゆる非拘束名簿式とすることについても、その当否を検討すること

(3) 比例代表選挙制度または都道府県選挙区の制度に代えて、広域のブロックを選挙区とする制度とすることについても、その当否を検討すること

(4) 民主的・公正な組織による、権威ある何らかの推薦母体を設け、その推薦による候補者について一般選挙人が投票するという候補者推薦制度を取り入れることは憲法の要求する「公選」の原則にも反するものではないと解されるので、新たな問題としてこの制度についても検討すべきであることを特に指摘しておきたい。

(5) 参議院の選挙制度の改革に当たり取り上げるべき主要点は以上のとおりであるが、衆・参両院の選挙制度は相互に関連し、連動すべき性質のものであり、総合的に考えるべきものである。この意味において、衆議院の選挙制度にも改革すべき点がないかどうかも検討すべき重要な問題である。したがって、真に参議院にふさわしい選挙制度の樹立のために、衆議院にも呼びかけ、その協力を得て権威ある第三者機関を設け、衆議院の選挙制度との関連を総合的に検討しつつ、早急に具体的改革案の審議、作成に着手すべきである。

4 参議院の運営

(1) 参議院においても、政党に所属する議員が大勢を占めるに至り、その結果として、参議院の運営が次第に政党の支配・統制を強く受けるようになった.このような「参議院の政党化」の進展の背景のもとに、参議院の機能を十分に発揮するためにはいかなる方策がとられるべきか、がその運営上の重要な課題となった。

 すなわち、昭和四十六年、河野議長の下で、参議院の運営改革の基本方針が打ち出され、その方針を実現するための諸方策が示された。

 これらの諸方策のうち、議長は第一会派、副議長は第二会派から選出するという議長・副議長選出の原則、並びに選任された議長・副議長は党籍を離脱するとの原則は、現在では運営の原則として定着するに至っている。

 さらに、運営改革の諸方策は、その後、昭和五十二年に設置された参議院改革協議会において調査、検討されることとなり、歴代議長の下で、多くの改革が実施されてきた。例えば広報活動の拡充、総予算の委嘱審査制度及び調査会制度の新設などがその主要なものである。

(2) 現在まで参議院の運営に関し改革の必要を指摘されてきた項目のなかには、すでに実現し、定着したもの、あるいは、院内共通の認識を得てある程度定着したものもある。しかし、方策として取り上げられながらもいまだ実現を見ないものもあり、さらに、最近の国会運営の実情にかんがみ、新たに指摘すべき問題も生じている.ここでは、それらのうち、現状に照らして特に重要と思われる問題を改めて指摘し、その改革の実現を要望することとしたい。

(1) 常会の召集時期の変更
 常会の全会期を十分に活用するためには召集時期を現行の十二月から一月に変更することが望ましい。このことはつとに指摘されたところであり、現に参議院も衆議院に対して検討を要請してきたところであるが、この際改めて特記して、その実現を期待するものである。

(2) 議案の委員会への即時付託
 議事手続として当然なすべき議案の委員会付託が、いわゆる国会戦術の手段として大幅に遅延させられるという傾向は目に余るものがあり、極めて遺憾であるというほかはない。議案は提出(発議及び予備審査のための送付を含む)されたならば、法規に従って即時に委員会に付託すべきものである。この場合、本会議における趣旨説明の要求がなされた議案については、委員会付託後に趣旨説明を行うことを妨げないものとする。

(3) 党議拘束の緩和
 日本国憲法第四十三条は「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」と規定しているが、ここに議員が「全国民を代表する」ということが明記されていることの意義について、改めて特に注目する必要があると思われる。同様の規定は、例えば西ドイツ基本法第三十八条第一項「議員は全国民の代表者であって委任及び指示に拘束されることなくその良心にのみ従う」にも見られるところであり、フランス憲法第二十七条、イタリー憲法第六十七条等も同様の趣旨を規定している。これらの規定は、議員は一度選挙された以上は選挙区の選挙人、特定の政治的・社会的団体その他の集団の代理人としてではなく、全国民の代表者として行動すべきことを示したものであり、わが国の国会議員についても、このことはひとしく憲法の期待するところであるというべきである。

 ただし、現代において議会政治運用の基盤をなしているのは政党であり、議員が政党に所属する以上、その政党の拘束を受けざるを得ず、ここにこれらの規定と党議拘束との間に困難な問題が生ずることは避けられないところである。この点については、綱領に明記された政党の基本政策に関連する議案について、議員が所属政党の紀律に服することは理由なしとはしないであろう。しかし、少なくとも参議院においては、その性格にかんがみ、各政党は党議による拘束の範囲をできる限り縮小し、議員個々の良心と良識に多くを委ねるという姿勢を保持することが望ましい。そうでなければ、両院制の存在意義と機能の妙味を発揮することは遂に困難となるであろう。

(4) 本会議・委員会の形骸化の是正と公明正大な審議の実行
 国会における審議の中心は常に本会議又は委員会でなければならない。しかるに最近の両議院の運営の実情は、本会議や委員会における公的な審議が形骸化し、各党間の協議・折衝にむしろ重点が移るに至っている。これがいわゆる「国対政治」とよばれる現象であって、その弊害は無視できないものがある。また、この現象の結果として、議案の内容・審議の経緯はほとんど国民の前に明らかにされることがない。かくては議会政治に対する国民の不信感を招来することにすらなりかねない。国会の運営の基本は、本会議・委員会を活発に運用し、公明正大な審議を展開して、国民とともに議事を進める姿勢を堅持することに求められるべきである。

(5) 参議院独自の調査会の活用
  調査会は、六年という参議院議員の安定した任期に着目し、長期的かつ総合的な観点から調査を行うための機関として設けられたものである。ここでは、議案の審議は行われず、専ら国政の基本的事項についての長期的・総合的な調査が行われている。また、その調査に当たっては、参考人からの意見聴取、委員派遣による現地調査、議員相互間の自由討議などが積極的に用いられている。現在設置されている三調査会からはすでに二回にわたって、国政の基本事項に関する重要な提言を含む中間報告書が議長に提出され、公表されている。

 調査会の制度は、参議院独自の立場からの国政調査という点から見て参議院にふさわしい制度であり、参議院の機能の発揮の場としてさらにその運用に工夫を加え、一層積極的な活用を図るべきである。

(6) 電子式投票装置の採用
 参議院は、その運営改革の一環として、電子式投票装置の採用の問題を取り上げてきたが、いまだ実現を見るに至っていない。電子式投票装置は、議事において、定足数や賛否の正確かつ迅速な把握を可能とし、議事の能率化に資するばかりでなく、これに用いるコンピューターの多目的利用により、事務の合理化のみならず、高度情報化の進展に対応する議員の広範・多様な国政活動に対し質の高い充実したサービスを提供する総合的な議院情報システムの整備にも役立つところが多いであろう。

 参議院における審議の効率を高め、また、充実した議会機能の発揮を図るため、諸外国における電子式投票装置の実例も十分に検討し、その採用を図るべきである。

5 その他-いわゆる同日選挙の問題

 以上の各項目に加えて、ここにいわゆる同日選挙の問題が参議院のあり方の上にきわめて重要な問題であることを特に指摘しておきたい。

 いわゆる同日選挙とは、衆議院の解散による総選挙と参議院の通常選挙とを同一の期日に行うことをいう。この同日選挙は、これまで昭和五十五年及び昭和六十一年の二回行われたが、それが日本国憲法の定める両院制の原則に違反するものではないか、が論議されている。

 憲法の解釈からすれば、衆議院の解散は、国政上の重要問題に関し、総選挙によって国民の審判を求める必要があるという、内閣の高度な政治的判断に基づいて行われるべきものであり、この解散を決定する権限が内閣に認められている以上、その解散に伴う総選挙の期日がたまたま参議院の通常選挙の期日と同日となる結果が生ずることがあってもそれは直ちに憲法に違反するものではないと解されよう。

 しかしながら、もしも同日選挙がいわゆる選挙戦略上有利であるという予測等の下に、衆議院解散の時期を作為的に操作し、これによって総選挙の期日を作為的に参議院の通常選挙と同日とすることが慣行化・常例化するに至るならば、それは憲法の定める四年の衆議院議員の任期が事実上三年となるのが常例となる観を呈するという点できわめて問題であるだけではなく、また次のような点で、それは参議院の存在意義と重要性を没却することともなりかねない。

(1) 憲法が参議院を衆議院と併立する独立の機関としている以上、参議院の選挙は本来衆議院とは別個の選挙として行われるべき性質のものである。もしも同日選挙が慣行化・常例化し、かつその際に国民の関心も衆議院の総選挙の帰趨に重点が置かれることとなるならば、参議院選挙の独自の重要性についての国民の意識が事実上稀薄となる結果ともなりかねない。

(2) 憲法は衆議院の任期満了による総選挙、解散による総選挙及び参議院の三年ごとの通常選挙の三種の国政選挙を設けており、これによって適当な時期的間隔を以て国民が国政に参加する機会を保障しているというべきである。もしも同日選挙が慣行化・常例化するならば、この国民の国政参加の機会が減少する結果となるであろう。

(3) 憲法は、衆議院の解散後に国に緊急の必要がある場合の措置として参議院の緊急集会の制度を定めており、この緊急集会は参議院のきわめて重要な役割である。そして憲法がこの制度を設けたのは、衆議院の解散後においても参議院は正常・完全な形で存在していることを予定し、これに国会の権限を行わせることとしたものと解される。同日選挙が行われる場合であっても、緊急集会を開くことは可能ではあるが、この場合においては参議院が正常・完全な形にあるものとはいい難く、そのような状況の下における参議院に憲法の予定している緊急集会の役割を期待することができるか、どうかには疑問を感ぜざるを得ない。

 以上の諸点を考えるとき、同日選挙は直ちに違憲と断ずべきではないとしても、憲法が予定している参議院の存在意義及びその重要性を失わせるおそれがあるといわなければならない。

 参議院が、この問題について真剣に思いを致し、適切に対処することを強く期待するものである。


参議院制度研究会
 座長  林  修三
 委員  内田 健三
 委員  河野 義克
 委員  佐藤  功
 委員  林  忠雄

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