
「請願審査の充実について」外二項目の答申
参議院改革協議会報告書
本協議会は、去る六月十二日小委員会から提出された「請願審査の充実について」、「参議院規則の整理の問題について」及び「閉会中の文書質問の提出について」の三項目に関する報告書に基づき協議した結果、右報告を了承するとともに、これを本協議会の答申とすることとした。
よって報告する。
昭和六十年六月十九日
参議院改革協議会座長 斎藤十朗
参議院議長 木村睦男 殿
参議院改革協議会小委員会報告書
本小委員会は、去る二月二十七日設置されて以来、「調査特別委員会の拡充強化及び常任委員会、特別委員会の再編を図る問題」外六項目の検討項目について十二回にわたり会議を開き、鋭意検討を進めてきたところ、今般、「請願審査の充実について」、「参議院規則の整理の問題について」及び「閉会中の文書質問の提出について」の三項目について結論を得たので報告する。
昭和六十年六月十二日
小委員長 井上吉夫
参議院改革協議会座長 斎藤十朗 殿
請願審査の充実について
国民の請願権は、憲法が保障する基本的権利であり、議院に対する請願は、国民の請願権を実現し、国民と国会とを結ぶ重要な役割を担う制度である。このような請願制度の重要性にかんがみ、請願審査の一層の充実を図り、もって国民の声を広く国政に反映させることが肝要である。
本小委員会は、このような認識の下に、請願審査の時期、方法等、請願審査充実の具体的方策について検討するとともに、請願審査の衝に当たる各委員長の意見を聴くなど、鋭意検討を行った結果、次のような改善策を採ることが適当であるとの意見で一致した。
一 請願審査の時期については、第九十一回国会(昭和五十五年二月二十日)における議院運営委員長の各委員長に対する要請にもかんがみ、会期末に一括して審査される傾向にあるのを改め、会期途中においても積極的に審査する。
二 緊急に措置する必要のある請願については、その内容に応じて、時機を失しないよう審査する。
三 議案の審査及び国政調査に当たっては、これに関連する請願に十分配慮する。
四 請願審査に当たっては、各委員会の実情に応じ、自主的に請願審査の実をあげるよう努める。
五 採択した請願について、国会で処理できるものについては、積極的にその実現に努めるとともに、内閣に送付したものについては、政府の処理状況を聴取するなど、その願意の実現を図る。
参議院規則の整理の問題について
本小委員会は、参議院規則の整理の問題について検討を行ったところ、実情に合わない規定、意味を明確にする必要があると考えられる規定などについて、次のとおり改正するべきであるとの意見で一致した。
- 主査の補足報告に関する規定(第七十五条第四項)を削除する。
理由 本会議において主査が委員長の報告を補足することは行われていない。
(現行規定)
第七十五条第四項 主査は、議院において、委員長の報告を補足することができる。
- 質疑に当たって自己の意見を述べることの禁止規定(第百九条)を削除する。
理由 質疑に当たっては、通常、自己の意見を述べ、答弁者の見解をただすことが行われている。
(現行規定)
第百九条 質疑に当つては、自己の意見を述べることができない。
- 討論において発議者又は提出者が発言した場合、更に討論に入ったものとする規定(第百二十一条)を削除する。
理由 討論が終わった後は直ちにその議題の採決に入るべきであり、また、討論終局の動議が成立した場合には、直ちに本動議の採決を行うべきであって、発議者又は提出者の発言を認める必要はなく、本条は不要と思われる。
(現行規定)
第百二十一条 討論が終つた後、又は討論終局の動議が成立した後、その議題について、発議者又は提出者が発言した場合は、更に討論に入つたものとする。
- 委員会の審査手続に関する規定(第三十九条)を次のように改める。
第三十九条 委員会は、議案が付託されたときは、まず、議案の趣旨について説明を聴く。
理由 審査手続の順序を明確にする。
(現行規定)
第三十九条 委員会は、議案が付託されたときは、先ず議案の趣旨について説明を聴いた後、審査に入る。
- 常任委員会の調査承認要求の手続に関する規定(第七十四条の三)を次のように改める。
第七十四条の三 常任委員会は、付託案件の外、その所管に属する事件について、調査をすることができる。
右の改正に伴い、次のとおり関係条文を整理する。
第三十五条中「付託案件又は議長の承認を得た事件の」を削る。
第七十二条第一項中「付託又は承認された案件について、」を「案件の」に改める。
第七十三条第一項中「議長の承認を得て」を削る。
理由 常任委員会は、各会期ごとに議長の承認を得て調査を行っているが、議長の承認を得ることなく、その所管に属する事件について調査することができることとする。
(現行規定)
第七十四条の三 常任委員会は、付託案件の外、議長の承認した事件について、調査をすることができる。
常任委員会が、議長の承認を求めるには、調査しようとする事件の名称及びその目的、方法、期間等を明らかにした文書を議長に提出しなければならない。
前項の要求を承認したときは、議長は、その旨を議院に報告しなければならない。
第三十五条 委員会は、付託案件又は議長の承認を得た事件の審査又は調査のため、小委員会を設けることができる。
第七十二条第一項 委員会が付託又は承認された案件について、審査又は調査を終つたときは、報告書を作り、委員長からこれを議長に提出しなければならない。
第七十三条第一項 常任委員会が議長の承認を得て調査中の事件について、議院に中間報告しようとするときは、委員長から書面でその旨を議長に申し出なければならない。
- 請願の委員会における議決区分に関する規定(第百七十条)を次のように改める。
第百七十条 委員会は、審査の結果に従い、次の区別をして、議長に報告書を提出しなければならない。
一 採択すべきもの
二 不採択とすべきもの
採択すべきものについては、なお、次の区別をしなければならない。
一 内閣に送付するを要するもの
二 内閣に送付するを要しないもの
右の改正に伴い、第百七十一条及び第百七十二条を次のように改める。
第百七十一条 委員会において採択すべきものと決定した請願については、委員会は、前条の報告書に付して意見書案を提出することができる。
第百七十二条 委員会において議院の会議に付するを要しないと決定した請願については、委員会は、議長にその旨の報告書を提出しなければならない。
前項の場合において、報告書が提出された日から休会中の期間を除いて七日以内に、議員二十人以上から会議に付する要求がないときは、同項の決定が確定する。
理由 本会議においては請願を採択するか否かを議決している(国会法第八十一条)ので、委員会においても請願を採択すべきか否かを決定することとする。
(現行規定)
第百七十条 委員会は、審査の結果に従い、左の区別をして、議長に報告書を提出しなければならない。
一 議院の会議に付するを要するとするもの
二 議院の会議に付するを要しないとするもの
議院の会議に付するを要するとする請願については、なお、左の区別をしなければならない。
一 内閣に送付するを要するとするもの
二 内閣に送付するを要しないとするもの
第百七十一条 委員会において議院の会議に付するを要するものと決定した請願については、委員会は、前条の報告書に附して意見書案を提出することができる。
第百七十二条 委員会において、議院の会議に付するを要しないものと決定した請願の報告に対して、七日以内に、議員二十人以上から会議に付する要求がないときは、委員会の決定を確定とする。
- 傍聴席に関する規定(第二百二十条)を次のように改める。
第二百二十条 傍聴席は、これを皇族席、貴賓席、外国外交官席、衆議院議員席、公務員席、公衆席及び新聞記者席に分ける。
理由 貴賓席が設けられているので、これを明確にする。
(現行規定)
第二百二十条 傍聴席は、これを皇族席、外国外交官席、衆議院議員席、公務員席、公衆席及び新聞記者席に分ける。
- 本会議における懲罰事犯と議長の採る措置に関する規定(第二百三十二条)を次のように改める。
第二百三十二条 会議において懲罰事犯があるときは、議長は、休憩若しくは延会を宣告し、又は事犯者を退場させることができる。
理由 懲罰事犯があっても必ずしも休憩、延会を宣告し、又は事犯者を退場させる必要のない場合もあり得るので、議長がこれらの措置を採ることについて裁量できることを明確にする。
(現行規定)
第二百三十二条 会議において懲罰事犯があるときは、議長は、休憩若しくは延会を宣告し、又は事犯者を退場させる。
- 参議院公報について、次のとおり、一章を設け、一条を置く。
第二十一章 参議院公報
第二百五十三条 議長は、参議院公報を発行し、議院の会議に関する事項その他必要と認める事項を各議員に通知する。
第百七十五条の規定による議院に対する報告については、参議院公報による通知をもつて代えることができる。
右の改正に伴い、「第二十一章 補則」とあるのを「第二十二章 補則」と、第二百五十三条を第二百五十四条とそれぞれ改める。
理由 参議院公報の発行を規則上明らかにするとともに、第百七十五条による衆議院から議案を受け取ったときの議長の議院への報告について、その実態に合わせ、参議院公報による通知をもって代えることができることとする。
閉会中における文書質問の提出について
本小委員会は、閉会中における文書質問の提出について鋭意検討を行ったところ、次の理由から、当面閉会中においても文書質問を提出できるとすることは困難であるとの意見で一致した。
一 、会期制度を採る憲法の下においては、国会の活動は会期中に限られ、その例外をなすのは、特に議院の議決をもって行われる委員会の閉会中の審査・調査、議員派遣など特定のものに限定されている。文書質問については、特に例外規定が置かれていない。
二 国会法等を改正し閉会中における文書質問の提出を認めることは、会期制度及び閉会中の他の議院活動との関係を考慮し、慎重に検討する必要がある。
三 閉会中においても文書質問を提出できることとする場合においても、議長の承認しなかった質問の取扱い(国会法第七十四条第三項及び第四項)、政府の口頭答弁(参議院規則第百五十四条)等の措置について困難な問題が生じる。
四 現行法規の下で、運用により閉会中における文書質問を認めることについては、文書質問は両院に共通する制度であり、かつ、政府と直接かかわりを持つものであるので、その実現が困難である。