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参議院のあらまし

常会の1月召集の問題について答申

参議院改革協議会報告書

 本協議会は、去る二月五日議長から諮問された事項のうち、常会の一月召集の問題について協議を行い、別紙の結論を得た。

 よってここに報告する。

 昭和六十年四月十五日

参議院改革協議会座長 斎藤十朗

参議院議長 木村睦男 殿


 現行の常会は、十二月に召集され、その後約一ケ月間のいわゆる自然休会となっている。これは、総予算が財政法の規定にかかわらず、十二月中に提出されないためである。

 このことにより、会期制を採用している国会審議が大きく制約され、会期末においては、常に、参議院の審議日数の確保をめぐって会期延長問題が生じており、かねてより、これへの対応が求められていた。

 一方、国民からみても、この慣習化した自然休会は理解が得難く、国会の空白、非効率化として、各種の批判がある。

 当協議会は、この問題に対し、政府は財政法の規定どおり十二月中に総予算を提出すべきであるとの認識に立ち、政府の見解をただしたところ、翌年度の経済情勢の動向等をできる限り的確に見通して編成する必要があるため、政府予算案の決定がどうしても十二月末になるという実態があり、さらに、予算書の作成等のため、膨大な作業及び印刷等で相当の時日を要し、十二月中に提出していないことは遺憾であり、現実に合わせた財政法の改正について検討したい旨の表明があった(別添資料一参照)。

 こうした状況を勘案し、現実的にも総予算が大正六年度予算以降、十二月中に提出されていない事実に照らし(別添資料二参照)、この際、予算の提出時期を含め、常会の召集時期を検討すべきであるとの意見が大勢を占めた。

 常会の一月召集問題は、参議院独自の問題ではなく、両院共通の重要問題であるので、議長においては、速やかに衆議院議長と協議されることを希望する。

 右、答申する。


資料一

予算の国会への提出時期について  六〇・三・一三

 去る三月五日、参議院議院運営委員会理事会におきまして、予算の国会への提出を十二月とし得ないかについて、見解を提出するようお求めがありましたが、これについては以下のとおりであります。

一 、予算について十分御審議いただくために、できるだけ早く予算を国会に提出することが望ましいことは勿論であるが、他方、予算の編成については、基本的に要求から査定にいたる作業に多大の時間を要するものであるほか、内外の経済情勢の動向等と密接不可分の関係にあるので、翌年度の経済情勢の動向等をできる限り的確に見通して編成する必要があるため、政府予算案の決定がどうしても十二月末になってしまうという実態がある。

(注)  予算は政府経済見通しに則って編成されるが、次年度経済見通しについては、できる限り的確な見通しを行うとの観点から、国民総支出等の当年度上半期までの速報値(七-九月QE)及び前年度の実績等を踏まえて本格的な見通し作業を開始し、作成している。
 なお、税収の見積りに当たっては、上記政府経済見通しによる経済諸指標を基礎とし、それまでの課税実績、収入状況等を勘案しているところである。

二 、更に、概算決定後、予算を国会に提出するまでにも、予算書の作成等のための膨大な作業がある。御高承のとおり、予算書は一、八〇〇余ページにも及んでおり、これまでも、休日を返上して作業に当たるとともに、合理化のため種々の努力を払っているものの、計数整理、予定経費要求書等の作成、計数の総突合、校正、印刷製本等の作業のそれぞれの段階において遺漏なきを期すためには、どうしても相当の時日を要することとなっている。

三 、このようなことから、財政法制定以来十二月中に提出していないことは遺憾なことであるが、以上の諸事情を御理解いただきたい。
 なお、予算書の作成までに至る作業の全体について、政府としては一日も早く予算を国会に提出できるよう、今後とも最大限の努力を払ってまいる所存である。

四 、以上のような状況にかんがみ、政府としても、財政法第二十七条と国会法第二条との関連、これらについての国会の御議論を踏まえつつ、財政法第二十七条の見直しについて検討してまいりたい。


資料二

 旧憲法下においては、常会の召集時期について特段の定めはなく、毎年十二月下旬に召集されるのが例であった。また、旧会計法は、歳入歳出の総予算は前年の帝国議会集会の始めに提出すべき旨定めていたが、当初の四年間はこの規定どおり年内に提出されたものの、その後、次第に一月提出が多くなり、大正六年度総予算以後、総予算はすべて一月のいわゆる自然休会明けに提出されていた。

 現行憲法施行の際、常会の召集時期について、一月にすべきであるとの議論もあったが、旧憲法下における十二月召集の慣例を考慮するなどの理由から十二月上旬と定められ(国会法第二条、本条は昭和三十年の改正により「十二月中に召集するのを常例とする」と改められた)、また、総予算の提出時期についてもこれを受けて「内閣は、毎会計年度の予算を、前年度の十二月中に、国会に提出するのを常例とする。」(財政法第二十七条)と定められた。しかし、この規定にもかかわらず、総予算は十二月中に提出されたことはなく、ほとんど一月下旬に提出されている。