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参議院のあらまし

総予算審査方式の改善(委嘱審査制度)及び当面の運営問題について答申

参議院改革協議会報告書

 本協議会は、参議院の組織及び運営の改革についてかねてより検討を重ねてきた。さらに昨年四月には改革の具体案作成のため、小委員会を設置した。その後、本年二月二十三日にいたり、小委員会から検討結果の報告書が本協議会に提出された。

 本協議会は協議の結果、右報告を了承し、本協議会の答申とすることとした。

 よってここに報告する。

昭和五十七年二月二十四日

参議院改革協議会座長 桧垣徳太郎

参議院議長 徳永正利 殿


参議院改革協議会小委員会報告書

 本小委員会は、参議院改革協議会の決定に基づき、委員会制度の改革、総予算審査方式の改善等を中心とした改革案の検討を鋭意進めてきた。その結果、総予算審査方式の改善及び当面の運営問題について下記の成案を得たので報告する。また、委員会制度の改革についての現在までの検討の経過を、併せて報告する。

昭和五十七年二月二十三日

小委員長 遠藤要

参議院改革協議会座長 桧垣徳太郎 殿


 いうまでもなく、参議院は、国権の最高機関であり唯一の立法機関である国会の一翼を担っており、立法に関して積極的にその責務を果たさなければならない。同時に参議院は、二院制を採用した本来の趣旨に則り、衆議院に対する抑制と補完の機能をも果たさなければならない。

 本院発足以来、既に三十余年を経た現在、参議院が本来の使命を果たすための問題点を徹底的に検討し、よりよき参議院とするため一層の努力をすべき時期にき ていると考える。また、参議院の在り方については、同僚議員からはもちろん、国民からも多くの提言や意見が寄せられており、これらの提言には傾聴すべき点 も少なくないと考えられる。以上の観点から、参議院の組織及び運営に関して検討するための参議院改革協議会が設置され、また、委員会制度の改革を中心とす る具体案作成のための小委員会も設置され、真剣な討議を重ねてきた。

 参議院がその役割を果たすためには、参議院にふさわしい、衆議院とは異なった独自の機構、運営、審議について考慮することが肝要である。現行国会法は委員会中心主義を採用しており、審議は主として委員会で行われていることから、本小委員会としては、参議院の特性を発揮するため委員会制度を改革すべく、その方策について検討した。

 更に、議案審査においても衆議院とは異なる観点から充実した審議をする必要があると考え、その一環として、予算審査に際して議員の全員参加による徹底した審議方式を検討した。

 その他、本小委員会は、参議院改革を前進させるために、可能なものから順次、これを実現していくことが必要であると考え、当面する運営上の諸問題についても併せ検討した。

 その結果、昨年九月には討議の経緯と大方の小委員の意向を踏まえて、新しく参議院独自の制度として調査会を導入し、併せて委員会の再編を行うこと、総予算審査に際して各委員会がそれぞれの所管に係る予算について精査を行う、委嘱審査の方式を採用すること等を内容とする小委員長案が提示された。

 この小委員長案に対し各会派による慎重な検討が加えられた結果、本小委員会において、総予算審査方式の改善案については大筋において合意し、今国会の総予算審査から実施にうつすべく、更に実施に関する細目の検討を続けた。これに加えて予算委員会をはじめ関係各方面の意見をも踏まえ、ここに総予算審査方式の改善について小委員会としての成案を得た。

 また、本小委員会は、当面する運営問題について検討の結果、十二項目について意見の一致をみ、成案を得た。

 なお、参議院独自の委員会制度の改革については、引き続き検討することとなった。

 以下、各項目について詳述する。

一、総予算審査方式の改善について

 予算は国の施策の根幹をなすものであり、その十全の審査は立法、国政調査と並ぶ国会の重要な責務であることはいうまでもない。
 この重要な責務に全議員が参画したいとの要望がかねてから議員間にあり、また、より参議院らしい予算審査方式を確立したいとの観点に立って検討した結果、予算委員会をはじめ関係各方面の意見をも踏まえ、本小委員会は次のような、他委員会が予算審査に関与できる方式を提案するものである。
 即ち、

  1.  予算委員会は、総予算の審査に当たっては、総括質疑終了の後、一定の期間その審査を休止し、その間他の委員会に対して、当該委員会の所管に係る各省各庁別の予算に関し、審査を委嘱すること(以下「委嘱審査」という。)とする。
     委嘱委員会としては常任委員会(議院運営委員会及び懲罰委員会を除く。)のほか、当面、科学技術振興対策、公害及び交通安全対策、沖縄及び北方問題の三特別委員会とする。
     また、委嘱審査の各委員会別の省庁分担については、当面、別紙のとおりとする。
  2.  委嘱審査期間は、予算委員会が統一的に定めるものとするが、その期間は二日ないし四日とする。
     ただし、委嘱審査期間内であっても、予算委員会が特に必要と認めるときは、総予算審査のため予算委員会を開会できるものとする。
  3.  各委員会は、理事会において委嘱審査に関する具体的日程(審査日、審査方法)を定めるものとする。
  4.  各委員会は、政府側から予算の説明を聴取した後、質疑を行うが、討論、採決は行わない。
     なお、各委員会は、委嘱審査においては、公聴会、連合審査会、委員派遣、証人喚問は行わないものとする。
  5.  委嘱審査における出席大臣、政府委員は、原則として当該予算を所管する大臣、関係政府委員とする。
  6.  予算委員会に提出される資料のうち、各省各庁所管各目明細書等、委嘱審査に必要なものは、政府から各委員会に提出させるものとする。
     その他必要な資料は、各委員会から政府に提出を求める。
  7.  各委員会は、予算委員会に対し、審査の概要につき報告書を提出するものとする

 以上のような方式であるが、その実施のために次のような趣旨の本院規則の改正を行うものとする。

  1.  予算委員会は、他の委員会に対し、審査中の総予算について、当該委員会の所管に係る部分の審査を期限を付して委嘱することができるものとする。
  2.  審査の委嘱を受けた委員会の委員長は、その審査の後、審査概要を予算委員会に報告するものとする。
  3.  予算委員会は、委嘱に係る審査期間内であっても特に必要と認めたときは、総予算の審査を行うことができるものとする。

 以上が改善案であるが、本小委員会としては、今国会における総予算審査から実施できるよう格段の御配慮を願うよう、申し添える。


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(別紙)

委嘱審査省庁別所管一覧表

内閣
皇室費、国会所管、内閣所管、総理府所管(総理本府、青少年対策本部、日本学術会議、宮内庁、行政管理庁、防衛本庁、防衛施設庁)
地行
総理府所管(警察庁)、自治省所管、公営企業金融公庫
法務
裁判所所管、法務省所管
外務
外務省所管
大蔵
大蔵省所管、日本専売公社、国民金融公庫、日本開発銀行、日本輸出入銀行
文教
文部省所管
社労
厚生省所管、労働省所管、医療金融公庫、環境衛生金融公庫
農水
農林水産省所管、農林漁業金融公庫
商工
総理府所管(公正取引委員会、経済企画庁)、通商産業省所管、中小企業金融公庫、中小企業信用保険公庫
運輸
運輸省所管、日本国有鉄道
逓信
郵政省所管、日本電信電話公社
建設
総理府所管(北海道開発庁、国土庁)、建設省所管、住宅金融公庫、北海道東北開発公庫
決算
会計検査院所管
科学
総理府所管(科学技術庁)
公害
総理府所管(公害等調整委員会、環境庁)
沖縄
総理府所管(北方対策本部、沖縄開発庁)、沖縄振興開発金融公庫

 なお、委嘱審査を行うに当たり、右の省庁別所管と各常任委員会の事項別所管が合致しないものについては、事項別所管により審査を行う(例えば国家公務員共済関係予算は内閣委員会が審査する。)ものとする。


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二、当面の運営問題について

 本小委員会は運営面の諸問題についても種々の検討を行った。その結果、当面の問題として次の十二項目について改善策を協議し、次のような結論を得た。この実現のために必要な措置を採ることを提案するものである。

1 重要議案の審議日数の確保の問題
 審議を充分尽くすため、重要議案の参議院における審議期間は、原則として最低二十日間を確保する。
2 予備審査制度の活用の問題
 参議院の審議を充実するため、日切れ法案等必要に応じ、予備審査制度を一層活用する。
3 先議案件の増加の問題
 政府は参議院先議案件の増加に努めるべきである。
4 両院議院運営委員会の合同理事会開催の問題
 衆・参両院にかかわる問題について協議するため、両院議院運営委員会合同理事会の開催に努める。
5 決算審査の充実の問題
 参議院における決算審査の一層の充実を図るため、次の事項に配意する。
一 、政府は決算委員会の審査日程の確保に積極的に協力すべきものとする。
二 、総括質疑の充実を図る。
三 、警告決議に基づき採った措置について政府は適時委員会に報告するものとする。
6 委員会の開会時刻の問題
 委員会の開会時刻は原則として午前十時とする。
7 議題外発言の問題
 参議院規則第百条を遵守するものとする。
8 委員会の定例日再編の問題
 委員会審査の充実を図るため、定例日の再編につき検討する。
9 自由討議の活用の問題
 委員会は、自由討議を積極的に活用するよう努める。
10 参観人等に対する対応の問題
 参観、傍聴については、国民の要望に充分応えるよう、必要な措置を講ずる。
11 請願審査の充実の問題
 請願審査については、既に会期途中での審査を行う等改善を図ってきたが、更にこれを徹底させる等審査の充実に努める。
12 参議院規則の整理の問題
 死文化している規定など実態に則していない規定の整備を行うものとする。

 なお、右のほか、予算委員会における発言時間割当を片道時間制から往復時間制に改める問題外二十二項目について引き続き検討することとしている。

三、委員会制度の改革について

 本小委員会は、委員会制度の改革について検討した結果、六年という参議院議員の任期に着目し、長期かつ総合的な観点からの調査を行うことのできる機構が必要であることについて意見の一致をみた。
 しかし、現在の委員会のほかに新たに国会法上の機関として調査会を創設することは時期尚早であるとの意見もあって見送りとなったが、意見の一致をみた改革の方向性を活かし、現行の特別委員会の制度を活用し、調査会構想を採り入れた調査特別委員会を二、三設置して試行してみてはどうかとの提案もあり、目下この提案を検討、意見を調整中である。
 また、委員会の再編については、調査会新設問題と一体のものとして検討を続けてきたが、右の事態を踏まえ、改めて常任委員会の組織の見直し及び特別委員会の再編問題として現在検討中である。