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参議院のあらまし

改革協専門委員会(選挙制度)、参議院議員選挙の定数較差問題について改革協に報告書を提出

平成17年10月21日

 参議院改革協議会座長 片山 虎之助 殿

参議院改革協議会専門委員長(選挙制度)

阿部 正俊

参議院改革協議会専門委員会(選挙制度)報告書

 本専門委員会は、協議会座長からの委嘱を受け、「参議院議員選挙の定数較差問題」について調査検討を行い、結論を得たので、別紙のとおり報告する。

専門委員長 阿部  正俊(自民)
専門委員 泉   信也(自民)
同     木村   仁(自民)
同     朝日  俊弘(民主)
同     小川  敏夫(民主)
同     魚住 裕一郎(公明)
同     井上  哲士(共産)
同     又市  征治(社民)


(別紙)

はじめに

 平成13年参議院議員通常選挙における選挙区間の定数の最大較差5.06倍について、平成16年1月、最高裁判所判決は、立法裁量権の限界を超えるものでないとして合憲の判断を下した。しかし、多数意見を形成した裁判官9名中4名から「無為の裡に漫然と現在の状況が維持されるならば、次回は、違憲判断の余地は十分に存在する」旨の、立法裁量権を広範に認めていた従来の多数意見とは異なる厳しい姿勢が示された。
 平成16年2月6日、各会派代表者懇談会の下に「参議院議員選挙の定数較差問題に関する協議会」が設置された。同協議会は、同年5月28日に、「7月の選挙後、平成19年通常選挙に向けて、定数較差問題について結論を得るよう協議を再開するとの意見が大勢であった」旨の報告書を参議院議長に提出し、6月1日、各会派代表者懇談会で、同様の申し合わせが行われた。
 このような経緯の下、参議院改革協議会専門委員会(選挙制度)は、平成16年12月1日の第1回参議院改革協議会において設置が了承され、平成17年2月9日の第2回協議会において、専門委員長に阿部正俊君(自民)を指名し、参議院議員の定数較差問題についての検討を始めた。
 本専門委員会は2月24日に第1回の委員会を開会し、以来、10月21日まで9回にわたり協議を行った。以下、協議の結果と内容について報告を行う。

1 本院における議員定数是正に向けての対応

 議員定数の配分に当たっては、憲法上の要請である投票価値の平等の実現に向け最大限配慮した、公正かつ効果的な代表を選出する選挙制度であることが求められている。
 しかしながら、参議院における議員定数の是正を考慮する際には、本院の選挙制度の特殊性にも配慮すべきである。その特殊性とは、二院制の趣旨から都道府県単位の選挙区と全国単位の比例代表の選挙制度を採用していること、選挙区選挙が地域代表的性格を有していること、半数改選要請に伴う偶数配分が挙げられる。
 このうち、前二者については憲法上の要請でなく、定数是正に際して余り考慮しなくてもよいとの意見もあるが、一方で、参議院が創設されて約60年を経過してきた重みがあり、これまで果たしてきた役割、安定性も重視されてしかるべきとの見解も根強く出されている。
 投票価値の平等の要請を踏まえて、定数是正を行うに際し、どの程度の較差まで許容範囲と考えるかは大変難しい問題であるが、憲法事項である半数改選に沿って、制度発足以来維持されてきた偶数配分の選挙区選挙の果たしてきた都道府県代表的機能を考慮すると、定数是正策として採り得る選択肢の範囲には、一定の制約が存するといえよう。
 なお、参議院の選挙制度については、参議院の在り方も含め、今後、道州制、憲法改正等の論議の行方によっては、制度改正、再構築が大きな検討課題となる時期が到来することになると考えられる。

2 平成19年選挙に向けての当面の是正策の検討

  •  上記の認識を踏まえ、較差の現状を勘案し、さらに平成16年1月の最高裁判決を重く受け止め、次期通常選挙までに較差是正を講じるという点では意見が一致した。
  •  較差是正のため、総定数の変更を行うことについては、大勢は定数の増減は適当ではないとの意見であった。しかし、一部に平成12年改正の定数減を検証し、必要なら定数を戻すことも検討すべきとの意見も出された。
  •  選挙区の較差是正に際して、比例代表の定数の減員を図ることについては、大勢は選挙区と比例代表の役割、比率等にかんがみ、行うべきではないとの意見であった。しかし、一部に比例代表からの減員はなるべく行うべきでないが、やむを得ない時には致し方ないのではないかとの意見も出された。
  •  選挙制度を根本から変更するような改正は今回は見送るべきとの意見が示された。

 以上の大方の意見を踏まえ、選挙区の定数是正に当たり、どの程度の水準まで較差解消を図るべきかが議論となった。そこで示された考え方を整理すると、(1)較差5倍を超える、また近い将来5倍を超えるおそれのある選挙区を含めて是正を図る4増4減程度が妥当、(2)4倍前半まで解消を図ることを考慮し、その選択肢としては14増14減まで含めて検討する、(3)較差は4倍未満とすべきであり、それには選挙区定数の増減だけでは相当の困難を伴うので合区を検討する、との三通りの是正策に集約される。
 これらの具体的内容とその検討状況は以下のとおりである。

3 是正案の内容とその検討

※  なお、較差の数値は、選挙人名簿登録者数(平成16年9月2日)による。

<是正案の具体的内容>

(1)  較差5倍を超えている選挙区、また近い将来5倍を超えるおそれのある選挙区を含めて解消を図る、いわゆる4増4減案。

4増4減案 …
2選挙区を増員、2選挙区を減員。
(増員区)東京、千葉 (減員区)栃木、群馬
(是正後の最大較差)4.759倍(神奈川)

(2)  4倍前半まで較差解消を図ることを考慮し、その選択肢として14増14減案まで含めて検討する案。
 選挙区定数の増減案としては、6増6減から14増14減までの考え方がある。

6増6減案 …
4増4減案に加えて、5倍に近い選挙区も増員、3選挙区を減員。
(増員区)東京、千葉、神奈川
(減員区)栃木、群馬、福島
(是正後の最大較差)4.755倍(大阪)
8増8減案
神奈川と同様の較差を有する大阪も増員、4選挙区を減員。
(増員区)東京、千葉、神奈川、大阪
(減員区)栃木、群馬、福島、岐阜
(是正後の最大較差)4.71倍(北海道)
10増10減案 …
平成6年改正で半減となった北海道も増員、5選挙区を減員。
(増員区)東京、千葉、神奈川、大阪、北海道
(減員区)栃木、群馬、福島、岐阜、長野
(是正後の最大較差)4.55倍(兵庫)
14増14減案 …
現時点で4倍を超える7選挙区を増員、7選挙区を減員。
(増員区)東京、千葉、神奈川、大阪、北海道、兵庫、福岡
(減員区)栃木、群馬、福島、岐阜、長野、宮城、新潟
(是正後の最大較差)4.13倍(東京)

(3)  較差は4倍未満とすべきであり、選挙区定数の増減だけでは相当の困難を伴うので合区を検討する案。
 具体的には、現行の都道府県単位選挙区制を改め、議員一人当たりの人口の最も少ない選挙区(鳥取)を、隣接県と合区する案が考えられている。

 なお、上記の案の外に、道州制の議論も行われており、選挙区選挙、比例代表選挙を廃止し、全国10程度の選挙区とするブロック制を検討してはどうかとの意見も出された。

<是正案の検討>

 上記の各案について次のような意見が示された。

(1)について

  •  過去の定数是正の沿革、最高裁の判断等を踏まえ、少なくとも較差5倍を超えない定数是正を図るべきであり、当面、最低限2選挙区について5倍前後の較差解消を是正の第一段階とすべきである。
  •  4倍後半の較差の解消が図られないため、投票価値の平等要請に十分には応えていないとの批判が生ずる可能性がある。

(2)について

  •  増減案によっては4倍後半から前半までの較差となるが、(1)案に比べると投票価値の平等要請にかなり応えているといえる。
  •  較差の解消をより大きく図ろうとすれば、対象となる選挙区が多くなり、その影響度が増大する。また、過去の定数増減との整合性をどう捉えるかの新たな問題も生じ、具体的にどの案を採用すべきかは、選挙区選挙の沿革、在り方も含めた十分な議論が必要となってくる。

(3)について

  •  現在の5倍超の較差を考えると、定数是正に際しては、3倍から3.5倍程度にするくらいの検討をしないと国民の理解は得られない。
  •  他の選挙区定数の増減を一切しなくても、合区の仕方によっては、較差が3.88倍となり、4倍未満の不均衡に抑えることができる。
  •  選挙区選挙の都道府県代表的機能が果たしてきた役割を考慮すると、その実質的変更を伴う制度改正はできない、合区は選挙制度の根幹の改正につながる、合区を行う際のルールが明確にできないとの意見が多く出された。また、合区を議論するならば、定数の多い選挙区の分区も検討する必要があるとの考え方も示された。
  •  都道府県の在り方そのものが議論となっている状況下では、都道府県単位選挙区制の見直しは、選挙制度の中だけで検討するのでなく、地方制度全般の見直しの動き等を見極めながら議論する必要があり、本委員会の判断だけで議論を尽くすことは困難な面がある。

ブロック案について

  •  投票価値の不平等の問題が生じず、選挙運動も旧全国区のように過酷にはならない長所がある。
  •  選挙制度の抜本的改革であり、十分議論する時間が必要になる。都道府県単位選挙区制を見直す案であり、(3)と同様、本委員会の判断だけで議論を尽くすこは困難な面がある。

 以上が各案の検討状況である。平成19年選挙に向けての当面の是正策としては、(1)案が有力な意見であるが、(2)案に示された増減案の中のいずれかにより是正を図るべきとの意見もあり、(3)案は、慎重論も多く示されているが、本案により4倍未満の較差解消を図るべきとの意見も根強く出されている。

4 その他の検討課題

(1) 参議院の在り方にふさわしい選挙制度の構築の必要性

  •  平成19年選挙に向けての当面の是正策の検討に加え、第二次措置(将来の課題)として、憲法改正事項も含めて、参議院の在り方にふさわしい選挙制度についての議論も進めていくべきとの意見があった。
  •  これまでの歴代議長の下でなされた各種提言、本年3月に出された「憲法調査会二院制と参議院の在り方に関する小委員会調査報告書」等があるが、それらと関連付けながら、現行の選挙制度を検証し、参議院に期待される在り方にふさわしい選挙制度の構築を進めていく時期に来ているといえよう。

(2) 継続的な検証等の調査

  •  平成19年選挙に向けての較差是正の後も、参議院の在り方にふさわしい選挙制度の議論を進めていく過程で、定数較差の継続的な検証等を行う場を設け、調査を進めていく必要がある。

(3) 在外選挙制度の見直し

  •  在外選挙制度に関する最高裁判所の判決が本年9月にあり、在外選挙制度の対象となる選挙を当分の間、両議院の比例代表選挙に限定している現行公職選挙法の規定は憲法に違反するとされたことから、その見直しに向け、適切に対応していく必要がある。