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参議院のあらまし

「委員会審査及び調査の充実について」外四件の答申

参議院制度改革検討会報告書

 本検討会は、議長からの諮問を受け、「我が国の二院制下における参議院の在り方に関する諸問題とその改善策」について検討を行い、「委員会審査及び調査の充実」外四件について結論を得たので、別紙のとおり報告する。

 平成八年十二月十六日

参議院制度改革検討会座長 前田勲男

 参議院議長 斎藤十朗 殿


 本検討会は、議長からの諮問を受け、昨年十月五日に設置されて以来、「我が国の二院制下における参議院の在り方に関する諸問題とその改善策」について鋭意検討を進めてきた。

 特に参議院が国民の期待に十分にこたえていくために、抜本的に、かつ従来の視点とは角度を変えて改革に取り組むとの観点から改革の方策を探求してきた。

 この間、学識経験者から意見を聴取し、検討項目の選定を行うとともに、各会派一名の委員からなるワーキンググループにおいて、これらの項目について議論を深めた。なお、検討期間が限定されていること等もあり、憲法改正に係る事項及び参議院の選挙制度に係る事項については、検討項目としないこととした。

 検討会においては十二回にわたり、また、ワーキンググループにおいては二十二回にわたり熱心かつ慎重な検討を行い、今般、改革の一環として、「委員会審査及び調査の充実」、「決算審査の充実」、「本会議表決における押しボタン方式の導入」、「議員立法の充実」及び「情報公開」の五項目について、次のとおり議長に答申することに決定した。

 なお、本答申をまとめるに当たって、これまで提言されている改革策を更に推し進めるとともに、現行制度の積極的活用等運用により早期に実施が可能なものについては、速やかに具体化していくべきであるとの意見で一致したので、付言する。

一 委員会審査及び調査の充実について

1  委員会及び調査会の組織の見直しについて
 我が国憲法下における参議院の役割は、衆議院とともに国民の代表機関たる国会の機能を万全たらしめることにある。参議院がこのような役割を果たすためには、参議院独自の立場と視点に立って国会審議に当たることが重要である。
 さらに、今日、国民のニーズは一層多様化し、一省庁の範囲を超えるものが多い。国会において、複数の省庁間を横断した政策要求あるいは複数の省庁間の隙間に存在する問題等を国民の生活実態に即して取り上げることが重要となってきており、今日の省庁別縦割りの行政機構に拘束されることなく、多様化したニーズに対応しつつ、中長期的視点に立った広い視野からの審議が強く求められている。
 このため、国会における審査の中心である委員会について、事実上衆議院とほぼ同様となっている組織を以下のように見直しを図るとともに、併せて委員会の運営の改善のための措置を講ずるべきであるとの意見が大勢を占めた。
 なお、委員会再編成の検討を否定するものではないが、多様化した国民のニーズに的確に対応する点で、なお慎重に協議を続ける必要があり、特に常任委員会及び常設的な特別委員会が大幅に削減されるような事態となれば、審議充実に逆行するため、賛成し難い旨の意見があった。
(1)  第一種常任委員会
 現在の第一種常任委員会及び特別委員会において所管している国政事項を十二程度の基本政策別に分類し、その基本政策別に第一種常任委員会を編成する。十二の基本政策別の常任委員会とした場合、別図のような試案が考えられるが、委員会の名称及び所管事項等に関しては、引き続き検討することが望ましい。
(2)  第二種常任委員会
 第二種常任委員会は、当面は現行のとおりとする。なお、これに関連して、国会同意人事案件を審査するための人事委員会及び参議院に提出された請願を審査する請願委員会の設置についても検討を行ったが、これらについては引き続き前向きに検討することが望ましいとの意見が大勢を占めた。特に請願委員会に関しては、現在、行財政機構及び行政監察に関する調査会においてオンブズマン制度及び請願審査の在り方が鋭意調査検討されているところであるので、その調査結果を踏まえて検討を進めるべきである。
(3)  特別委員会
 現行の特別委員会については、常任委員会の再編に伴い全面的に見直すこととする。なお、特別委員会を設置するに当たっては、必要に応じて設置することとし、その存続についても厳格に判断を行うべきである。
(4)  調査会
 調査会は、参議院改革の大きな成果であり、今後も存続すべきものである。特に今後は、参議院独自の審議機関としての存在意義をより発揮するために、例えば、人権問題、女性問題、世界人口・食糧問題等のグローバルな観点、あるいは、より個別具体的な観点からの調査テーマを選択するなど工夫を加えつつ、その発展拡充に努めるべきである。そのための予算措置についても配慮する必要がある。また、調査会の報告については、政策及び立法により反映されるよう環境整備に努めるべきである。

(5)  常任委員会の組織の再編を実行するに当たっては、議院の自律性を確保するという観点から、現在国会法第四十一条で規定されている常任委員会のうち予算、決算、議院運営及び懲罰の四委員会を除き、その数と名称を各議院規則で定めることが望ましく、今後、両院間で調整を行うべきである。

2  委員会等の運営の改善について

 委員会の審査及び調査の充実を図るために、運営の改善措置について以下のように取りまとめることで意見が一致した。

(1)  委員会における審査等の活性化のために、従来の政府に対する質疑に加えて、政策論議を中心に大臣・政務次官を含む議員間討議を積極的に行うべきである。

(2)  充実した審査及び調査を行うには、審議時間を十分に確保すべきである。特に重要議案については、これまでも二十日間の審議日数の確保を衆議院に申し入れてきたところであるが、改めて衆議院にこの旨の確認を求める必要がある。
 また、先議案件が増加することは審議時間の確保のためにも有効であるので、今後とも参議院先議の議案を増加するように求めるべきである。
 なお、会期末に十分な審議時間がないままに衆議院から法案等が送付されてきた場合には、参議院は継続審査にするか会期延長を要求するようにすべきであるとの意見、及び参議院は衆議院の状況に影響されることなく運営されるべきである旨を各会派間で申し合わせることも必要であるとの意見があった。

(3)  限られた会期を有効に活用するために、定例日は必ず委員会を開会することとし、全大臣が拘束されがちな予算審議中にあっても、一般調査、議案に関する調査及び法案大綱や請願についての委員間討議を行うなど積極的に定例日を活用すべきである。なお、大臣不在の場合でも政務次官の出席のもとに審査等を積極的に行うべきであるとの意見があった。

(4)  質疑時間の割当てについて小会派に配慮する等柔軟な委員会運営がなされるよう努めるべきである。なお、委員の割当てのない会派の所属議員にも出席・発言を認める委員外議員の発言の制度を積極的に活用すべきである。

(5)  既に成立した法律や附帯決議、あるいは採択した請願のフォローアップを行うよう努めるべきである。

二 決算審査の充実について

  1.  決算の早期提出を政府に求めるとともに、早期提出を確実なものとするため財政法及び関係法令の改正を併せて求めるべきである。
     常会の一月召集(第百二十三回国会・平成四年)に伴い、決算の提出時期が財政法第四十条の規定により、十二月から翌年一月に変更された。決算の提出時期については、一月以前においても可能であると考えられるので、政府において早期提出に努力するよう求めるとともに、早期提出を確実なものとするため、例えば秋に臨時会が開かれる場合には、その国会に提出するというような財政法及び関係法令の改正を併せて求める。
     なお、決算の早期提出問題は、参議院独自の問題ではなく、両院共通の問題であるので、議長においては、速やかに衆議院議長と協議されることを希望する。
  2.  早期提出を求める以上は、参議院としても決算の早期審査を行う必要がある。決算が早期提出された場合には、当該国会において直ちに概要報告を聴取し、決算委員会が早期に審査できるよう配慮すべきである。決算の早期提出が実現されるまでの間は、常会冒頭に行われる代表質問の議事に引き続き決算の概要報告を聴取し、決算委員会が常会の会期当初から審査できるよう配慮すべきである。
  3.  警告決議の議決及び警告決議に対して内閣の講じた措置の報告について改善すべきである。
     改善の方法について次のことが考えられる。
    ・ 本会議における警告決議議決の際、内閣総理大臣に所信を述べさせる。
    ・ 警告決議に対して内閣が講じた措置の報告について、内閣総理大臣名で議長あてに報告書を提出させるとともに、当該報告を直近の本会議録に掲載するものとする。
    ・ 政府の責任を明確にするため、決算の是認否認にかかわらず、警告決議を行うことができるものとする。
  4.  検査官の任命同意に関する衆議院優越規定を削除すべきである。
     会計検査院は政府の財政の執行を監視し、検査することを任務とする憲法上の機関で、内閣に対し独立の地位を持つ公正中立的な機関である。したがって、このような重要な機関であるからこそ、検査官は民主的な方法により任命されることが求められる。いやしくも両議院が同意しないものを任命することは妥当ではないと考えられるため、会計検査院法第四条第二項等を削除する。
  5.  その他、決算審査の充実に関連して、決算委員会においても次の事項を検討願いたいとの意見で一致した。

(1)  決算審査に当たって、審査の成果が後年度の予算編成及び政策遂行に一層反映できるよう審査すること。

(2)  決算審査に当たって、各省庁の事務次官を出席させること。

三 本会議表決における押しボタン方式の導入について

 議案に対する議員個々人の賛否を国民に明らかにすることは、議員の政治責任をより一層明確にすることになり、また、情報公開の点からも大きな意味を持つことになる。さらに、今日、幾つかの政党において党議拘束を緩和する方向に向かっている情況にかんがみ、本会議の表決において迅速に議員の採決結果を集計記録し、国民に明らかにすることが可能となる電子式投票装置を導入すべきであるとの意見が大勢を占めた。
 なお、従来の木札による記名投票の機会が狭められるおそれがあり、必ずしも投票の効率化につながらず、また、現在の財政状況においては無駄であるとの理由により、電子式投票装置の導入には賛成し難い旨の意見があった。
 電子式投票装置の導入に伴う措置について、次のとおり取りまとめることとした。

  1.  電子式投票装置を用いて投票する案件の選択等、その具体的な運用については、議院運営委員会において検討されたい。なお、ワーキンググループにおいては、電子式投票装置は議案等の表決に使用する(本装置は選挙の機能を有しない)こととし、電子式投票装置の採用に当たっては、従来の表決方法、特に記名投票の要求(本院規則第百三十八条)については現行のとおりとするとの意見で一致した。
  2.  電子式投票装置を使用する表決の投票結果については、記名投票と同じく会議録に賛成者及び反対者の氏名を記載する扱いとする。
  3.  電子式投票装置を使用する際の「棄権」の取扱いについては、当面は現行と同様の取扱いとするが、将来的な取扱いについては、議院運営委員会において検討されたい。なお、棄権の意思表示を認める取扱いとなる場合を考慮し、投票機に設置するボタンについては、出席、賛成、反対のボタン以外に予備のボタンを設けることとする。
  4.  議場内に設置される表示盤については、出席者数、投票総数、賛成者数及び反対者数の数値が表示されるものとし、本会議場の景観が損なわれないよう配慮すべきである。また、各議員において自らの表決の確認を行えるランプを設置するものとし、各議席における表決の結果を視認できる方式が望ましい。
  5.  電子式投票装置の導入に当たっては、電子投票システム専用の小型高性能のコンピュータを使用する。また、導入にかかる経費については、厳しい国家財政を考慮して三~四億円程度にとどめるよう努めることとする。
  6.  電子式投票装置を導入するために、本院規則について所要の改正を行うとともに、必要に応じ、議院運営委員会において申合せを行う。

〔参 考〕

電子式投票装置の使用方法について

 電子式投票装置を用いる場合の使用方法はおおむね次のとおりとなる。

(1)  議員は出席した際は、出席ボタンを押す。

(2)  議場内の表示盤に出席議員数が表示される。

(3)  議長は、本装置による投票の際、投票の開始を宣告するとともに、採決操作機により各議席の投票機の作動の開始を操作する。なお、議場は閉鎖しない。

(4)  議員は、本装置による投票の際は賛成・反対のそれぞれの態度に応じたボタンを押す。

(5)  議長は、投票の終了を宣告するとともに、採決操作機により各議席の投票機の作動の終了を操作する。

(6)  議場内の表示盤にそれぞれ投票総数、賛成者数及び反対者数が表示される。

(7)  議長は、投票終了後、集計表示機の数字に基づいて投票の結果を宣告する。

(8)  印刷記録装置により記録印刷を行う。この記録に基づき、会議録に賛成者及び反対者の氏名を記載する。

四 議員立法の充実について

  1.  議員立法を活性化するために、国会法第五十六条に規定されている議案の発議要件を三名程度に緩和すべきである。また、予算を伴う法律案を発議する場合の加重要件についても撤廃すべきである。
     なお、これに関連して、本会議における修正動議等の提出要件について別途、検討すべきである。
  2.  議員立法を活性化するとの観点から、とりわけ議員提出法案については、提出後、可能な限り早期に委員会に付託し、委員会で積極的に審議すべきである。
  3.  議員立法については、現行制度の活用によって法案大綱段階における審議が可能であることを踏まえ、委員会において、委員から提出された法案大綱について委員間討議を行うなど、議員立法の実質的審議を積極的に行うべきである。
  4.  議員立法の活性化のためには、広範な国政にかかる議会の情報収集機能の拡充・強化が必要であるので、行政府からの資料提供の迅速・円滑化はもとより、民間情報・調査機関の積極的活用も図るべきである。また、議員立法の補佐体制を強化すべきである。

五 情報公開について

  1.  委員会公開の問題、国会審議のテレビ放送の問題については、現在、議院運営委員会理事会において各会派の協議が進められているところである。検討会においては、この協議を見守ることとするが、国民に対する情報サービスの提供を推進すべきであるという点において意見の一致しているところであるので、本格的な国民向けテレビ放映が早期に実現できるよう努めるべきである。
  2.  国民に対する情報サービスの提供を積極的に推進すべきである。インターネット等電子情報手段を活用して法案等の審議経過や結果等の議会情報を広く国民へ提供するとともに、国民からの意見の受信にも努めること、また、これらと併せて議会独自の刊行物の充実を図るほか、マスコミ等の活用を含めた活字による広報の充実についても検討すべきである。
  3.  議会活動の広報をより積極的に展開するため、広報活動の基礎となる参議院広報関係予算について、その規模を拡大するよう努めるべきである。
  4.  情報公開の一環として、院内情報網の基盤整備を早期に行い、参議院公報の電子情報化等、院内情報システムの充実を図るべきである。
     なお、上記答申のほか、次のとおり取りまとめることとしたので、併せて報告する。
     参議院においては、これまで多くの改革の方途が検討されてきたが、その中には、衆参両院が歩調を合わせて実行に移していくことにより、より一層効果が発揮できると考えられるものもある。このため、国民の国会に対する期待にこたえるためにも、両院合同で国会改革について協議する場を設けることが望ましい。

参議院制度改革検討会委員(会派)
座長     前田  勲男(自民)
    委員     斎藤  文夫(自民)
    同      宮崎  秀樹(自民)
    同      矢野  哲朗(自民)
    同      泉   信也(平成)
    同      鶴岡   洋(平成)
    同      寺崎  昭久(平成)
    同      及川  一夫(社民)
    同      吉川  春子(共産)
    同      伊藤  基隆(民緑)
    同      椎名  素夫(無ク)
    オブザーバー 佐藤  道夫(二院)
    同      奥村  展三(さき)
    同      栗原  君子(新社)