本協議会は、小委員会から去る二月八日に報告書(別紙一)が提出され、議院運営委員会における各会派の合意に基づき本年三月から実施されている「参議院本会議議事速報」及び「参議院予算委員会総括質疑速報」の発行については、これを了承するとともに、今後引き続き会議録作成過程のシステム化及び組織の拡充を図ることにより、「速報」の発行範囲の拡大に努めるべきものと認めた。
さらに、小委員会から去る三月十五日に提出された「秘密会会議録公開の問題」に関する報告書(別紙二)並びに去る五月二十五日に提出された「請願審査の充実等」、「国会会議録データベース構築の推進」、「委員会会議録の公共図書館への提供」及び「調査会の活性化推進」の四項目に関する報告書(別紙三)に基づき協議した結果、右報告を了承するとともに、前記と併せ、これを本協議会の答申とすることとした。
よってここに報告する。
平成七年六月一日
参議院改革協議会座長 小川仁一
参議院議長 原文兵衛 殿
別紙一
本小委員会は、「参議院本会議議事速報」及び「参議院予算委員会総括質疑速報」の発行について鋭意検討を行った結果、結論を得たので報告する。
平成七年二月八日
参議院改革協議会小委員長 田沢智治
参議院改革協議会座長 小川仁一 殿
開かれた分かりやすい国会を目指すためには、審議の内容を中心とする国会の情報を直接、間接を問わず国民に広くかつ速やかに知らせるシステムを整備していくことが必要である。
そのためには、委員会公開の問題、委員会会議録の公共図書館への提供、会議録の早期発行あるいは「速報」の発行、テレビ中継による映像の提供、検索のためのコンピューターを用いた会議録データベースの構築、さらには現在まで未公開の秘密会会議録の公開の問題等、検討すべき課題は多い。
本小委員会は、昨年十二月の再発足に当たって、当面の検討項目を選定した際にもこれらの観点を含めテーマ選びを行ったところである。
これらの検討項目のうち、会議録の早期発行については、従来からその実現のための方策が講じられてきたが、会議録の性格上、その発行期日を大幅に短縮することはなお困難な実情にある。そこで、ワードプロセッサー等OA機器の整備拡充を図り、さらに、事務体制の工夫を加え、正規の会議録とは別に、当面、他の会議と競合することの少ない本会議及び予算委員会総括質疑についてその内容を「速報」の形で発行する方途について検討した。
その結果、本小委員会は、他の問題に先立ち、本会議及び予算委員会の総括質疑について、次の要領によりそれぞれ「速報」を新たに発行することが適当であるとの意見で一致した。
別紙二
小委員会は、「秘密会会議録公開の問題」について鋭意検討を行った結果、結論を得たので報告する。
平成七年三月十五日
参議院改革協議会小委員長 田沢智治
参議院改革協議会座長 小川仁一 殿
戦前戦後を通じ、帝国議会の貴族院及び現行憲法下の参議院において秘密会が開かれ、多くの秘密会会議録が公開されないまま現在に至っている。近年、知る権利や情報公開に対する国民の関心が高まっていること、また、これらの未公開会議録は、歴史的資料として高い価値を有するものと推察され、研究者からもその公開を望む声が寄せられていることなど、秘密会会議録を公にする意義は大きいものと考えられる。
本小委員会においては、このような認識の下に、国会の情報をいかに国民に提供していくかとの観点から、秘密会会議録公開の問題について検討を行い、以下の結論を得た。
現行憲法下の国会における秘密会会議録については、そのうち特に秘密を要するとされた部分については公表しないこととなっている。この未公開会議録を一定期間(例えば五十年)経過後に一定の手続に従って公開する制度を導入することは適当であると考えるが、そのためには法制の整備が必要であるので、今後、この点について両議院間において協議を進めることとする。
一方、帝国議会の貴族院秘密会議事速記録については、現行憲法下の本問題についての考え方を当てはめるとしても、既に作成後五十年以上経過しており、また、貴族院と参議院との間に統治機構としての継続性はなく、秘密会議事速記録の刊行を禁じていた議院法も廃止され公開を妨げる規定もない。以上のことから、人的・物的に貴族院を引き継ぎ、これを保管している参議院が現在自らの判断で公開することは可能である。したがって、次の要領によりこれを公開することが適当である。
一 貴族院の秘密会の議事速記録は、議長の決定に基づきこれを公開する。ただし、議長において特に秘密を要すると認める部分については、この限りでない。
二 特に秘密を要するかどうかの認定に当たっては、国の重大な利益に対する悪影響の有無、個人の秘密に対する不当な侵害の有無などを総合的に考慮する。
三 公開する議事速記録の公開の方法、公開の手続その他公開に関し必要な事項は、事務総長が定める。
別紙三
本小委員会は、「請願審査の充実等」、「国会会議録データベース構築の推進」、「委員会会議録の公共図書館への提供」及び「調査会の活性化推進」の四項目について鋭意検討を行った結果、結論を得たので報告する。
平成七年五月二十五日
参議院改革協議会小委員長 田沢智治
参議院改革協議会座長 小川仁一 殿
請願は、すべての人がその要望を国や地方公共団体に直接申し立てることのできる基本的権利であり、議院にとっては、民意を把握するための重要な手段でもある。特に、「国民に開かれた国会」の実現を目指している本院にとっては、国民と国会を結ぶ請願について、審査のより一層の充実を図り、国民の声を国政に反映させることが重要である。
本小委員会は、このような認識の下に、請願審査充実の具体的方策について鋭意検討を行った結果、次のような改善策を採ることが適当であるとの意見で一致した。
近年、国会情報、特に国会会議録の内容を迅速かつ容易に検索できる環境を整備すべきであるという要請が強まっている。議員の立法調査活動に対する支援を一層強化するとともに、「国民に開かれた国会」を更に推進するためには、会議録情報の提供手段を抜本的に改善することが必要である。参議院改革協議会は、昭和六十年十一月二十日の議長への答申において、国会会議録システムの構築について、関係機関と共同して検討を進めるよう指摘したところである。
この課題に対処するため、事務局においては、平成四年に衆議院及び国立国会図書館と「会議録フルテキスト・データベース検討会」を組織し、国会会議録のフルテキスト・データベースの構築に向け、検討を重ねてきた。そして、平成六年度には、外部研究機関への委託調査を実施するとともに、平成七年度にはその結果を踏まえてシステム構築のための基本的な諸問題を解決するため実証試験を伴った調査を実施する段階を迎えている。
本小委員会は、このような経過を踏まえて検討を行った結果、現在の会議録による情報提供は、その役割を失うことはないものの、利用者の多様なニーズにこたえられないこと等の問題があることにかんがみ、最近における情報処理・情報通信技術の発展に対応して国会会議録のフルテキスト・データベースを構築し、電子情報として提供していくことが必要であり、次のような推進策を講ずべきであるとの意見で一致した。
一 事務局は、衆議院及び国立国会図書館と連携して、「国会会議録フルテキスト・データベース」の構築に向け、その推進体制を早急に整備するとともに、具体的な実行計画を作成し、できるだけ早期に利用が可能となるよう積極的に業務を推進する。
二 このデータベースの開発に当たっては、会議録作成過程からシステム化を図るとともに、国会議員を始め国民のニーズに立脚した利便性の高い、操作性の良い検索システムを構築するほか、未定稿段階の会議録が検索できるシステムを併せて構築し、今国会から発行されることとなった本会議議事速報及び予算委員会総括質疑速報によってカバーできない委員会等の質疑内容が議員事務室等から迅速に検索できるよう配慮する。
三 将来的には、国際化への対応を考慮し、インターネット等を通じて情報を発信できるよう機能の拡充を図るとともに、マルチメディア時代への対応についても今後検討を行う。
都道府県及び政令指定都市の議会図書室への委員会会議録の無償配付は、昭和四十八年以来、衆議院と歩調を合わせて、国立国会図書館を通じて実施してきたものである。
昭和六十年には、委員会会議録の公共図書館への無償配付の可能性について検討を行ったが、委員会会議録の部外持ち出しを禁止している衆議院との調整の問題等が指摘され、委員会会議録の無償配付先は従前同様とすることとした。
平成五年八月、事務局が実施した委員会会議録の利用状況等についてのアンケートの結果、本院送付の委員会会議録は地域住民等に十分に利用されていないことが判明した。
一方、昨年十二月、衆議院は衆議院規則の委員会議録の持出禁止条項を削除したことから、委員会議録の取扱いが本院同様とされた。
本小委員会は、これら諸般の事情を踏まえ、委員会会議録の配付の在り方について討議を重ねた。討議の過程においては、本院がこれまで実施してきた措置及び改善策について検討するとともに、今後の方策についても協議した。
その結果、「国民に開かれた国会」のより一層の推進のためには、一般国民が国会での実質的審議の場である委員会の会議録を容易に閲覧及び入手できるようにすることが肝要であることから、以下の措置を講ずべきであるとの意見で一致した。
一 一般国民が国会の会議録をより容易に閲覧できるようにする観点から、新たに公共図書館にも委員会会議録を無償配付する方向で検討を進める。
無償配付する公共図書館としては、当面、都道府県及び政令指定都市の中央図書館とし、衆議院と連携して実施するよう努めることとする。
二 委員会会議録の都道府県及び政令指定都市の議会図書室への無償配付については、一般国民のみならず、地方議会関係者への便宜を図る観点から行われていることにかんがみ、引き続き実施することとする。
三 委員会会議録の無償配付については、現在検討が進められている国会会議録のデータベース化が図られた段階で、再検討することとする。
四 委員会会議録の閲覧方法等が地域住民に十分周知されていない現状にかんがみ、都道府県広報誌を通じて閲覧方法の周知徹底を図るよう都道府県に要請する等一般国民への積極的な広報活動を実施することとする。
五 委員会会議録の購入希望者については、これまで財団法人を通じて有償頒布を実施しているが、委員会会議録の入手の機会をより多くの一般国民が享受できるようにする観点から、今後、その入手方法について大学図書館等に対する広報活動を強化することとする。
参議院の調査会は、昭和六十一年に設置されて以来これまで三期九年間、国政の基本的事項に関し、長期的、総合的な観点から調査を行う参議院独自の機関として、委員相互間の自由討議、公聴会や地方公聴会の開催、参考人との意見交換などの活動を展開し、様々な政策提言等を行ってきた。
本小委員会は、こうした調査会制度の意義及び各調査会の活動実績を踏まえて検討を重ねた結果、次期においても参議院の特色ある制度として調査会を存続させるとともに、なお一層その充実改善を図っていくべきであるとの意見で一致した。
次期における調査会の数及び名称、充実改善のための方策等具体的な事項は以下のとおりである。