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参議院の動き

参議院70周年記念論文表彰式

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 「おはよう給食」で未来を照らす

熊本県  ルーテル学院中学校 2年

岩下 唯愛

私が、国会議員になったら、全ての小学校・中学校で「おはよう給食」を始める。温かい朝ご飯をお腹いっぱい食べて、元気に勉強できる学校を作る。

私が考える子どもを育てる学校はこうだ。

朝、登校すると、「おはよう給食」が待っている。おはようの挨拶と共に握られるおむすびと湯気の立った具だくさんのお味噌汁、パリッと歯ごたえのあるお漬け物。それだけ。だけど、心はきっと満たされる。お米は自分たちが授業の中で育て収穫したもの。お味噌汁の味噌は自分たちで作り、具は、学校の畑で採れた野菜たち。お漬け物も家庭科の時間漬けたものだ。学校は、生きる楽しみを学ぶところだ。

学校には、さまざまな問題を抱えた子どもたちが集まっている。いじめ、不登校、非行などがあるが、他にも、お金には困っていないのに食事を与えてもらえない子どもたちがいる。その子たちを救うことができるのは、「おはよう」の声かけから始まる、この給食しかない。

それを作るのは、いつも、子どもたちを守ってくれている、地域の人たちだ。昨年の熊本地震の時、この「地域の力」が見事に発揮された。地域の人たちが、避難所だった小学校に集まって、炊き出しなどを行ったのだ。私は、その力が思いがけず大きいことに驚いた。私たちは、協力すれば、必ず何かを成し遂げられるものなのだ。そして、それは、近くに住む身近なおじさんやおばさんの力が不可欠だろう。

地域の人たちは、早起きだ。朝早くから犬の散歩や庭の手入れをしている。そして、とても元気だ。

学校は、このような人たちの力を積極的に借りるべきだ。ちょっとお節介ないつものおばさんが「ゆめちゃん、おはよう。昨日はどぎゃんしたとね?」と言いながら、握ってくれるおむすびは、きっと体だけでなく心も元気にしてくれ、学校に来るのが楽しみになるはずだ。学校は、そこにいる先生たちだけではなく、地域の人たちと協力しながら育てる。子どもたちの問題は、家庭だけでなくその地域の大人が一緒になって考えて、その子のために解決策を見つけてあげるのだ。そのような地域で育ったら、前に挙げた問題は、必ず無くすことができる。そして何よりも、子どもたちが愛に満たされ幸せに生活できる。

近年、貧困などの問題を抱えている子どもたちを救う策として、「子ども食堂」を開設する地域が増えている。私の住む地域でも始まっている。これによって、救われたという子どもたちも大勢いるだろう。しかし、1つだけ気になる点がある。それは、その開設が「毎日ではない」ということだ。人間は、毎日お腹がすく。毎日なのに、「子ども食堂」は、月に1、2回しか開いてない。今日が空腹で死にそうなのに、そこまで待つことができるだろうか。大人は、そういう子どもたちを見逃してはいけない。

マズローの欲求5段階説というのを聞いたことがある。彼は、段階別にした欲求を一目で分かるように三角形のピラミッドで説明した。ピラミッドの1番下、土台となる部分が生理的欲求で、食事や睡眠などだ。その上が安心・安全欲求で、安心・安全な場所で暮らしたいと思うこと。その上が、所属・愛情欲求。ちゃんと自分の居場所を見つけ、愛情を注いでもらうこと。さらに上が、承認欲求で、他人から認めてもらうこと。そして、頂上にあるのが、自己実現だ。つまり、土台からちゃんとやっておかなければ、自己実現まで達成できないのだ。どんなに愛情をかけて育てていたとしても、土台がしっかりしていなければ、ぐらついてしまう。やはり、食事は本当に大切なのだ。

だから、私は、子どもたちのために「おはよう給食」を提供する学校を作りたい。この改革が実現すれば、活気溢れる学校になるだろう。教室には笑顔が溢れ、校庭では、子どもたちが元気に走り回っている。問題を抱えていそうな子には、地域のおばさんたちが積極的に声かけして安心して登校できるよう、サポートする。考えただけでわくわくしてきた。

私は、この改革を、震災を経験したわが街熊本で最初に行いたい。それが成功すれば、全国的な「おはよう給食」の先駆けとなり、地域の活性化にもつながる。

マズローは、晩年、6段階目に他者を豊かにしたい欲求、隣人愛を付け加えている。「おはよう給食」を食べて育った子どもたちは、将来、提供する側に廻る。そしていつの日か、再び、朝ご飯は家庭で食べるという当たり前の習慣に戻れるだろう。