1. トップ >
  2. 参議院の動き >
  3. 平成29年の参議院の動き >
  4. 参議院70周年記念論文表彰式

参議院の動き

参議院70周年記念論文表彰式

受賞論文一覧に戻る 


 地域をもっと元気に、そして活力ある地方へ

山形県  山形大学附属中学校 2年

秋場 啓希

僕は山形県天童市から隣の山形市にある中学校へ、電車とバスを乗り継いで通学している。朝は電車もバスも十分な本数があるが、それ以外の時間帯になるとどちらも本数が極端に減ってしまう。このため学校から帰宅する際には乗り換えもうまくいかないことも多く、朝の通学は45分、帰りは2時間という日も珍しくない。このためもっと電車やバスの本数があったら、もっと有効に時間を使うことができるのにといつも思ってしまう。

父と母は、幼い頃、買い物や病院の通院にはよくバスを利用していたと話すが、その後徐々に車社会になり、電車やバスの利用者は少なくなっていったそうだ。このような電車やバス路線の減少や廃線は、その地域に暮らす人々の生活に大きな影響を与えてしまう。しかし「利用者減少のため」と言われれば仕方がないことなのかもしれない。では、利用者を増やすためにはどうすればいいのだろうか。利用者を増やすためには、その地域で暮らす人が増えなければならない。その地域で暮らす人が増えるためには、その地方で暮らす人が増えなければならない。難しい問題だが、ではどうして地方に暮らす人が減っていくのだろうか。

平成27年に山形県が作成した人口ビジョンによると、人口の増減は、出生数と死亡数の差である自然増減と、転入者数と転出者数の差である社会増減の2つの要因による。自然増減については、自然増で推移してきたが、平成9年以降は自然減に転じている。社会増減については、一貫して社会減で推移しているということだ。今後も自然減は避けられないといわれ、よっていかに社会減を解消するかが重要ではないだろうか。

この人口ビジョンによると、山形県の高校卒業者の進路では、大学進学者の73%、専修学校進学者の約65%が県外へ進学している。また就職者は、約23%が県外就職しており、高校の卒業生全体で55%が県外へ転出している。また県内の4年制大学及び高等専門学校の卒業生の県内就職率は、30%程度と低い状況となっている。県内で最も学生数の多い山形大学では、全学部の卒業生の県内就職率は30%未満と低く、特に理工系学部及び大学院の卒業生については県内就職率が10%台である。

ここで、山形県に暮らす人が減っていく原因の1つが明らかになった。県内の高校を卒業した人の55%、特に大学進学者の75%が県外へ転出していること。より高い知識や技術、専門性をもつ県内の大学や専門学校を卒業しても、県内就職率が30%未満であることだ。若い世代の半数以上が県外に流出し、さらに一度県内外から集まった優秀な人材の7割以上が県外に流出している。まさに社会減といわざるを得ない。私が国会議員になったら、このような問題を少しでも解消し、地方創生、地域活性化を実現したい。

地方創生、地域活性化を実現するために一番重要なことは教育、つまり優秀な人材の育成だと思う。中学校までの義務教育で基礎的な学力の向上、高校では大学進学、工業、農業、専門職など様々な進路に対応できる高いレベルの教育を提供することが重要だと思う。そしてそのような人材を受け入れる大学、企業が必要だ。例えば山形大学工学部は米沢市にあるが、大学と企業が協力して有機ELの研究そしてそれを利用した商品開発などを行っている。これはまだ大きな産業にはなっていないが、そのような専門性の高い大学、研究機関、そして企業が1つの大きな組織となり、優秀な人材を受け入れ、育て、働き続けることができればその地域は十分活性化されると思われる。大きな成功例としてアメリカのピッツバーグがある。昔鉄鋼の都市として栄えたピッツバーグは、現在医療産業都市として発展している。1970年代に鉄鋼業が衰退し失業率が上がっても、子供たちに高いレベルの教育を提供し続け、その後医療産業を核に地域再生を図った。そうして医療、研究、医療産業はともに発展し、現在では地域再生繁栄の成功例としてあげられている。

ピッツバーグは医療に注目して成功したが、それぞれの地方の気候や風土に根ざした産業に特化した、例えばバイオテクノロジーやIT関連などの教育・研究・企業が一体となった組織が、その地方で大きな産業となれば、地方創生、地域活性化、地域格差などの問題は少なからず解消されるのではないだろうか。

世界的に見ても必ずしも首都が、経済や教育の中心である必要はなく、東京一極集中による弊害やリスクを回避する上でも、地方創生、地域の活性化は絶対に必要だと思う。

私が国会議員になったら、地方創生、地域の活性化を実現したいと思う。