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参議院の動き

参議院70周年記念論文表彰式

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 スマートシティ

神奈川県  聖ヨゼフ学園高等学校 2年

柴田 理美

私は、冬休みにロックフェラー系財団TRUST FOR MUTUAL UNDERSTANDINGとの連携によるオーデュボンプログラムというものに参加し、人口減少、社会保障、地方の過疎化、エネルギー問題など日本に浮上している様々な問題について学びました。その上で私は、将来の日本があるべき姿、重要視しなければいけないことは何なのかという観点で、この論文のテーマである「私が国会議員になったら」を考えました。

私が国会議員になったら、エネルギー問題について取り組みます。人口減少、社会保障、移民問題、様々ある中でこのエネルギーに焦点をあてた理由として、この問題の対象が環境つまり私たちの暮らす地球であるからです。

科学技術が発展していく中で、効率的かつ便利な暮らしを送っており、そうした生活にはエネルギーが必要とされることは言うまでもありません。二酸化炭素の増加、化石燃料の枯渇、原子力発電などのエネルギーに関する問題は多様であり、私たちはこれらの問題と向き合っていかなければならなく、地球に負荷をかけているということを忘れてはいけないのです。地球があるからこそ私たち人間は「生きる」ことができるのです。これらの事は決して日本に限ったことではなく、世界中が重要視しなければならないことであり、先進国である日本が率先して、取り組むべき問題です。現在、日本が進めている取り組みとして、電力の自由化や再生可能エネルギー固定価格買取制度などがあり、電力改革が進められていますが、より一層の改革が必要であると考えます。そこで、もし私が国会議員になったら新改革として日本のスマートシティ化を推奨するでしょう。

そもそもスマートシティ化とは、先端技術を駆使して街全体の電力の有効利用を図ることで徹底的な環境配慮型の都市を目指すことです。私がこのような政策を推奨する理由は3つあります。まず1つは、スマートシティ化することにより二酸化炭素を削減し地球にやさしい、エコな社会が構築できることです。そして2つ目が世界に誇れる日本のモノづくりの技術が活かせる場であり、日本の経済発展を促せること、そして3つ目はこのプロジェクトの総数が400にも達しており、世界中のトレンドとなっていることがあげられます。具体的な事業をいくつか説明します。

近年スマートハウス・電気自動車などが注目されています。スマートハウスを導入することにより、先端技術を使って家庭内の電力を制御することで、エネルギーの無駄を省き二酸化炭素の削減をすることできます。また電気自動車は電気を使って走行することで、スマートハウス同様二酸化炭素の削減を目指します。電車やバス、新幹線などの交通手段が主流となり、「車離れ」という言葉を、耳にすることがあります。しかし、依然として地方ではこれらの交通手段よりも自動車の需要が高いため、この電気自動車の活躍が期待できるのではないでしょうか。そして、スマートシティ化の事業として、農業にも焦点をあててみました。農業は耕作・収穫などの負担が大きいわりに、年々所得が減少しており、耕作放棄地の拡大や跡継ぎ不足が懸念されています。これらの課題を解決するために、私はスマート農業が役立つのではと考えます。スマート農業とは人工知能をつかって生産物の管理を行うなど、耕作・収穫の際の重労働を機械が代行することで、労働による負担の軽減をします。また、農耕地の上に太陽光発電機を設置し、農業と発電を同時に行うことで、より効率的な生産を行うソーラーシェアリングというものがあります。このようなスマート農業によって跡継ぎなどといった課題の解決の糸口にもなるのではないでしょうか。地方においてもスマートシティ化を目指すことで、単にエコな社会を構築できるだけでなく、顕在化している地方の課題も解決ができると考えます。

続いてスマートシティ化において重要となる、エネルギー供給についてお話します。やはり、エコな社会を目指す上で忘れてはいけないのが再生可能エネルギーです。原発事故がおきてから、脱原発の風潮が高まり、また固定価格買い取り制度が取り入れられるなど、我々国民も再生可能エネルギーを意識せざるを得ない状況になってきました。しかし、原発を廃止し、非再生可能エネルギーの利用をなくし、再生可能エネルギーだけのクリーンな世の中をつくることができるのかというと、それは不可能に近いと思います。現在ドイツでは、持続可能な社会を目指し再生可能エネルギーの割合が着実に上昇しており、2014年には26.2%を占める最大のエネルギー源となりました。しかし、日本でも同じ成果を得るには、ドイツのような広大な土地が必要とされますし、島国である日本には、万が一エネルギーが枯渇した場合に供給源となるネットワークがありません。よって、いくらドイツと日本が様々な面で酷似しているからといって同じような成果を得るのは難しいのです。しかし、私は決して再生可能エネルギーを否定しているわけではなく、むしろ最大限に活用しつつ、賄いきれない分を化石燃料で補っていくべきだと考えます。将来的に非再生可能エネルギーの割合を減少させていくことができればいいと思うのです。

私の住んでいる横浜市では現在、先進的なスマートシティの開発が進められています。市内全域を対象に、公募により選定された実施事業者を通じて、ホームエネルギーマネジメントシステム・住宅用太陽光発電システム・家庭用蓄電池・電気自動車充給電設備の導入補助を行うことで、横浜市民のYSCP実証実験への参加を促進しています。また、市内の中小企業のビルを補助対象としてビルエネルギー管理システム(BEAMS)導入補助事業の実施がされています。これはビル内の発電設備、空調設備などの電力使用量の制御を行うためのシステムです。この他にもスマートシティ化に向けた実証実験が行われています。これらの実証を通して、広域で住宅、商業ビル、マンションなど様々な機器やシステム間での連携は可能であり、エネルギー供給バランスを有効に維持することができたという成果が収められています。一方、このスマートシティ化の課題としては、国・自治体等の補助による実証事業が終了した後、どのように設備等の費用を賄うのかという点があげられます。更に、実際にこのビジョンを作るためには、市民のニーズを聞き取る能力が必要であり、つくりあげたビジョンを関係者で共有するコミュニケーション能力も不可欠です。スマートシティを構築していくためには、町と市民との連携が必要なのです。

私たちの生活は、エネルギーを源とする先端技術によって成り立っています。スイッチを押せば電気がつく、電車に乗れば電子機器を使用し暇を潰す、教育現場でもPCを使った授業が増加しています。もし、私たちの暮らしからエネルギーがなくなったとしたら、そう考えても、実際どのくらいの影響があるのか想像すらできません。そして私たちはこの便利な暮らしと代償に地球に負荷をかけているのです。江戸時代のような、持続可能な社会に、もはや回帰できなくなった私たちを導くのがこのスマートシティ化であり、地球への負担を軽減させることができるのも、このスマートシティ化なのです。私たちは国に対して「クリーンな政治」を求めています。東京都知事選で小池都知事が当選したことが、そのことを裏付けているでしょう。エコによるクリーンな環境を目指すためには、国民が安心できるクリーンな社会があってこそ成り立つ自治体と国民の連携が必要です。そして、国民一人一人にエネルギーについて考え直させる、そのような政策が今の日本に必要であるのです。