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参議院の動き

参議院70周年記念論文表彰式

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 義務教育からの主権者教育と投票の利便化

香川県  香川県立高松東高等学校 2年

木村 亮太

私が参議院議員に立候補するには満30歳以上になり、なおかつ供託金の300万円が必要となる。そのうえ当選しなければ自分の提案を実現することは難しい。この年齢で参議院議員として提案をする事は実際には出来ない事なので、今私が考えている事を参議院議員であるとして以下の文章で述べていきたい。

第24回参議院議員通常選挙は、公職選挙法改正により、選挙権が18歳以上に引き下げられた後の初の国政投票となった。これに先立ちマスコミや選挙管理委員会が新たな有権者に投票を呼び掛けたにも関わらず総務省の「第24回 参議院議員通常選挙年齢別投票者数調(18歳・19歳)(全数調査)」によると投票率は46.78%と半数にも及ばないものであった。さらに、私の住んでいる香川県においてはそれよりも低い36.52%で全国ワースト5位であった。ではどうすれば若者の選挙における投票率を上げることが出来るか。まず初めに提案するのは主権者教育により、政治的無関心を無くすことである。

投票率の低さの主な要因となっているのが、政治に関する無関心である。四国新聞社が香川県内の大学生を対象にアンケート調査した結果選挙に行かない理由として一番多かったのは「投票したい人や政党がない」というものであった。そのような意見を持った人が社会に増えてくると今後ますます選挙に対する関心が低下し、投票率も下がってしまう。しかし、若者が今を満足し将来に希望を持っているわけではない。私は将来年金が受け取れないのではないかと心配している。また保育園不足による待機児童問題に関心があり、エネルギー問題等将来への不安も尽きない。では投票率を上げる具体的な主権者教育として何をすれば良いか。まず1つ目に挙げられるのは家庭での主権者教育である。共同通信社の行った「新有権者とその親50組100人を対象にしたアンケート」によると、「参院選で投票に行くか」との問いには50組中34組(68%)が「行く(もしくは期日前投票で行った)」と回答している。親が「行く」というのに子が「行かない」と答えた10組の内5組は行かない理由として「住民票を移していないから」と手続き面の困難さを挙げている。さらに、子の「行く」と回答の内、親子で普段から政治経済や社会問題について話し合うと答えたのは29人(78%)であり、「行かない」「決めていない」と答えた子の13人の内9人(69%)が「親子で話す機会がない」と答えている。このことから普段政治に関する事を話している親子は政治に参加する意欲が高い。つまり、家庭での主権者教育が投票率の向上には有効だと言える。

もう1つは教育現場における主権者教育である。これは義務教育の間にしておくべきだ。それは、高校に進学しない人や中退する人もいるからだ。学校では教育基本法第14条第2項の規定があるため、その実施には十分に注意する必要があるが、主権者教育によって政治や選挙に興味を持つようになるだろう。なお、主権者教育においてはじっくりと時間をかけることが望ましい。そのために、学校の総合学習の時間などを使って生徒同士が社会の諸問題について議論する場を設けることも有効であろう。同じ年齢の人と自分たちの未来に関わる問題について議論する中で、社会の成員としての当事者意識が高まるだろう。このような主権者教育を行っていけば、徐々に若者の投票率も上昇するに違いない。

私は主権者教育こそが政治に関心を持たせる第一歩であると考えている。だからこそ、学校で主権者教育を授業の中に組み込んでいけるように法律の案を作成し、議会の承認を得て公布出来るようにしたい。また学校での主権者教育を行う事により子供が政治に関心を持つようになり政治に関心を持っていない親が子供との会話を通して政治に関心を持つようになる。そして、義務教育中に主権者教育を受けた人が大人になった時その子供たちに主権者教育をする事が出来る。若い世代だけでなく他の世代の投票率が上がる可能性も十分にあり得ることではないだろうか。

次に私が提案したいのは現在の選挙における投票の在りかたである。第24回参議院議員通常選挙で投票率の低い原因は「不在者投票」や「期日前投票」といった選挙の制度や仕組み自体の周知が不足するなどの理解不足もあった。これは選挙権が18歳以下に引き下げられたことで注目された。例えば、北海道では生活実態がないという理由で選挙人名簿に登録されず投票出来ない人もいた。新たな有権者は年齢的に見ても就職や進学などで実家を離れ、別の地域で暮らしている人も決して少なくない。そういった人のために「不在者投票」という制度が存在するが、この制度は手続きを必要とする。「期日前投票」は事前の手続きが不要で住民地で投票が可能であるが、選挙管理委員会の選挙人名簿に3か月以上登録されなければならない。今回の選挙においてはこれらの制度についての周知不足が明るみになった。投票したくても出来ない人がいるというのは大変残念である。このような選挙の仕組みをきちんと理解出来るように主権者教育と共に徹底的に周知するべきではないのかと思う。そこで私は選挙の投票方法に新たな案を提案していきたい。まず、提案するのが期日前投票所の在りかたの改革である。現在、期日前投票所は市役所・支所やショッピングセンターそして18歳選挙に伴い国公立大学といった多くの場所に設置された。もちろん、そういった所に投票所を設置することにより、投票しやすくするのは良いことである。しかし、投票しやすい環境を整えたとしてもその投票に行くまでの手段がなければ意味がない。そこで、私は期日前投票所とは別に新たに「投票カー」を提案したい。これは、バスを改装し投票所の機能を設置する。つまり移動できる投票所だ。さらに、大学や専門学校にもこの車を巡回させる。「投票カー」を使えば体育館等を使用する事なく準備が簡単に済む。大学等に期日前投票所は設置されているが限界があり設置されていない大学等も当然ある。そこで設置していない大学等のために「投票カー」が巡回する。巡回することでより多くの大学等を回ることが出来、投票する学生も増えるのではないかと思う。しかも、この車で過疎地域を巡回すれば高齢者等、投票所が遠く今まで車を利用し投票していた人や運転出来ない人にとっても非常に便利であると思われる。期日前投票の環境を整える。これは、選挙における投票率上昇につながることであると言える。

また、投票しやすくするために、従来の郵送で各世帯に送られる投票所入場券の制度を廃止したい。そして、その代わりにマイナンバーカードが従来の投票所入場券になるようにする。マイナンバーは当然全ての国民が持っており、マイナンバーカードは申請すれば誰でも入手が可能である。さらに、この制度を採用する事により、投票所入場券を送らなくて済むので選挙管理委員会の負担も減少する。確かにマイナンバーカードの交付には時間がかかる上交付費用も掛かるだろう、しかし、マイナンバーカードは様々な行政に使える。さらに、1回の選挙でしか使えない投票所入場券と違いマイナンバーカードなら選挙のたびに使えるので長い目で見れば確実に費用削減になるだろう。さらに、投票所入場券は住む場所により届くまで差があり、中には期日前投票が始まった後に届く事もあるだろう。しかし、マイナンバーカードなら、この差を無くす事ができる。さらに、写真付きなので今以上に本人確認が十分に行われる。マイナンバーカードは携帯に便利なので期日前投票所があれば気軽に投票出来るのではないか。以上のことから私は経費削減のため、また厳密な本人確認のため、さらにいつでも期日前投票出来るようにするために投票所入場券を廃止しマイナンバーカードを採用する事を提案する。それがマイナンバーカードの一層の普及にもつながると思う。なお、投票所入場券を廃止した場合でも投票所の案内は必要である。こればかりは仕方ないが、投票所入場券を入れなくてよいので葉書一枚になる。封筒で郵送するよりは費用も削減できるのではないか。

これまでの事から私が参議院議員になったとしたら選挙における投票率上昇のために義務教育における主権者教育の義務化と期日前投票所の在りかたの改革、そして投票におけるマイナンバーカードの活用。この3つを目標に努力していきたい。参議院というものは解散が無いのでじっくりとこれらの課題に取り組む事が出来るであろう。現代の日本社会では政治家は人口が多く投票率の高い高齢者に有利な政策を打ち出すようになった「シルバーデモクラシー」といわれる状態にある。このままでは日本の未来が見えなくなる。若者の意見に耳を傾ける必要がある。そのためにも、若者の投票率の向上には対策が必要である。今も大切だが未来はそれ以上にもっと大切である。「私たちは、選挙を棄権し政治への参加を放棄するのではなく、罰則はないが義務であり権利だと思って投票すべきだ。」という自分の考えを多くの人の共感を得て欲しい。そして、私の案が多くの人の賛同を得ることで私の理想を実現したい。



《参考文献》

・四国新聞


・総務省ホームページ