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参議院の動き

参議院70周年記念論文表彰式

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 デンマークから学ぶ社会福祉制度

大阪府  大阪桐蔭中学校 3年

澁谷 哲太郎

私は、国会議員が目指すべきものはただ1つであり、それは「国民の幸福」だと考える。「幸福」という語には、人それぞれの価値観が宿っている。しかし、ここでは、今日本が抱えている問題と、幸福度が高い国が行う政策等を照合した上で、私が国会議員になったら実現したいことを述べる。それは「介護職の公職化」だ。

先ず、日本の介護業界の現状についての資料を示す。厚生労働省の発表によると、2025年度には、介護職員が全国で約38万人不足するということが分かっている。また、社会保険・社会福祉・介護事業に勤めている人の勤続年数は7.1年、平均月収は23万9,500円だ。全産業での統計では、順に11.9年、32万2,800円であるのに対して、である。

一方で、「2016年 世界幸福度ランキング」で世界トップのデンマークには、社会福祉において、日本が学ぶべき点がいくつもある。

大きな違いとして挙げられるのは、「社会福祉の財源を全て税金で賄っている点」、「介護職の殆どが公務員である点」、「ノーマライゼーションの精神が徹底されている点」だ。

デンマークでは、社会福祉の財源を税金で賄っており、日本のように社会保険料を徴収することはないそうだ。また、少子高齢社会となった今の日本社会で、「賦課方式」が成り立つとは思えない。事実、社会保険料を払うことができずに倒産した中小企業は少なくない。しかし、デンマークの所得税は一律50%で、消費税は25%と日本に比べて非常に高い。このような高い税率でも、デンマーク国民の高い幸福度は、医療費や看護費だけでなく、年金や教育費までもが全て国庫から賄われているということの安心感によって保たれている。

次に、この論文の核となる、「介護職の殆どが公務員である点」についてだ。デンマークでは、介護職だけでなく様々な職業が公職化されていて、労働者の実に35%が公務員なのである。医療や福祉に関わる人々ももちろん例外ではなく、給与も安定している。後述するが、日本の介護職が不足している原因の1つとなっている低賃金もこれによって解消されるのではないだろうか。

そして、私が、日本の最も変わって欲しい点である「高齢者に対するノーマライゼーションの精神」についてだ。ノーマライゼーションとは「障害者などが地域で普通の生活を営むことを当然とする福祉の基本的考え。」(広辞苑)のことであり、デンマークでは、その理念の実現のため、介護が必要な高齢者も自分の子どもと同居し介護されるということはない。それらも全て国が責任をもって行い、公務員である介護職員が、高齢者のできることを増やしていくという目的の下、働いているのだ。

以上主に3点では、日本とデンマークの介護や社会福祉全般における対比を示した。

最後に、前述してきた事実から、私が国会議員になって行いたい政策と、実現して欲しい日本の未来について述べる。

私は「介護職の公職化」を掲げたい。今、国庫には金が余っていないし、その余裕が国にあるとも思えない。しかし、そうすることで介護職に安定した賃金と労働環境がもたらされ、高齢者が積極的な老後を送れるようになれば、彼らが幸福感を覚えることができるようになるだけでなく、彼らの子どもである現役世代も介護などの負担が減り、良い循環が生まれるだろう。こうして国民全体の幸福度が高まれば、多少税率を上げようとしたところで、今のように反論は受けまい。なぜなら、その税金が、さらなる社会福祉の発展につながっていくことは明確だからだ。是非、この政策を掲げてみたい。

そして、これからの日本についてだ。今の日本では、「老人ホーム」や「障がい者施設」と、非健常者を隔離した環境で見守る傾向がまだまだ強い。そうすることにも長所はあるのかもしれないが、それが社会を幸福へと導く可能性は低いだろう。国民全員がいつまでも「普通に」暮らせる社会。そんな日本、世界を私は望んでいる。