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参議院の動き

参議院70周年記念論文表彰式

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 私の望む日本の福祉

千葉県  東邦大学付属東邦中学校 3年

小泉 晟利奈

私は、今日の日本の福祉は、改善すべき点がいくつもあると思います。それらの問題点を解決するために、どのような政策が必要か自分が国会議員になったつもりで考えました。

まず初めに、私の体験から感じた2つの事をあげます。2年前、同居していた私の祖父ががんを患い自宅と病院での闘病生活を経て息を引き取りました。家族が自宅で最期まで看病をし続けたかったのですが、祖父が激しい痛みを伴ったときは家での看病は無理でした。病院から退院して自宅で療養するためには、家族が自ら訪問看護ステーションを探さなくてはなりませんでした。がん患者の往診が可能な病院を紹介してくれることもない上、家族が探したところで近所にはありませんでした。祖父に人生の最期を家で迎えて欲しいと家族皆で願っていましたが、自宅療養の準備をしている最中に祖父は亡くなりました。このように、がん患者の終末期に対する医療が日本ではまだまだ不十分であると私は感じました。がんの終末期の患者、つまり死を目の前にしたがん患者に対して国が整えるべき事は以下の通りです。1つ目は「臨床心理士などの専門職による、患者とその家族の心のケアを受けられるようにする。」2つ目は「自宅療養でも往診により十分な医療を受けられるようにする。」十分な医療とは、車椅子や杖、ベッドの貸し出しだけでは補うことはできないと私は感じました。

次に、私の重度障がい者の兄の在宅での生活において感じることがあります。まず1つは、兄には生きていくために、痰吸引や胃ろう部からの栄養注入などの医療的ケアが必要なのですが、そういった医療的ケアを行える介護ヘルパーが少ないのが実情です。つまり、人材不足なのです。また、緊急時に安心して預けることのできる施設がとても少ないといった問題もあります。さらに、ほとんどの特別支援学校が高等学校で卒業となるため、兄のような重度障がい者は、卒業後に過ごす通所施設を必死で探さなければなりません。そのような施設がとても少ないことによって、現在高2の兄の卒業後の生活への不安を母は日々感じています。比較的軽度の障がい者を受け入れている施設は増えているようでも、重度障がい者を受け入れることができる施設はなかなか増えていないのが現状です。このように、現在の日本の障がい者への福祉環境には、改善すべき点がたくさんあります。1つ目は「医療的ケアを行うことのできるヘルパーの人材育成を促進させる。」こうすることによって、在宅で過ごす重度障がい者の保護者の負担が軽減されます。2つ目は「国が民間に設立資金を助成することで、重度障がい者を受け入れることのできる施設を設立しやすくする。」十分な通所施設があることにより、在宅で長く暮らしていくことができるのです。そして、緊急時にも安心して預けることができるようになります。

次に、ニュースや新聞などの報道から知り、感じた事をあげます。最近、たびたび耳にする、全盲の方や車椅子を利用している方が駅のホームで誤って転落し事故に遭ってしまうという胸の痛む出来事があります。また、昨年の7月に起きた障がい者施設での大量殺人事件から、日本社会の障がい者への意識の低さが浮き彫りになってしまいました。こういった、日本社会の障がい者への意識の低さの改革を、国をあげて行うべきだと私は思います。具体的には、義務教育課程において、道徳などの教科で学ぶことはもちろんのこと、さらには、特別支援学校との交流を通して障がい者と自然に接することを学んだり体験したりすることを、日本全国どの地域においても充実させるといったような取り組みです。そういった体験を、幼い頃から積み重ねることにより、大人になったときに障がい者の方に自然に声かけをし手助けすることができるようになる、そしてそうすることによって救える命があるのです。また、日頃兄と共に外出する際、周りから珍しいものを見るような目つきで注目の的となり私はそれによって不快で嫌な気持ちになります。しかし、このような教育が行われれば、健常者と障がい者の間の壁を壊すことができると思うのです。

最後に、私は、日本で暮らす医療を必要とする高齢者や障がい者が、将来に不安を抱くことなく笑顔で人生を楽しむことができるような未来に、日本の福祉が確立されることを強く望みます。そして、私達日本国民は、健常者だから福祉には関係がないと目を逸らさずに、対等な立場でお互いを支え合っているということを常に感じ、意識しなくてはならないのです。これらの事が実現すれば、日本の福祉は必ず良くなると思います。