参議院ＯＤＡ調査派遣第４班

　参議院は、ＯＤＡ調査派遣第４班（団長赤石清美議員、石井正弘議員、長浜博行議員及び辰巳孝太郎議員）を、平成２７年１２月１３日（日）から１２月２１日（月）まで、パラオ共和国及びミクロネシア連邦に派遣しました。

　パラオ共和国及びミクロネシア連邦両国は、国土が太平洋上の広大な地域に散らばっており、そのため国内市場の規模が小さく、さらに、国際市場からも地理的に遠い等、太平洋島嶼国に共通する開発上の困難が指摘されています。

　パラオ共和国では、インフラ整備の遅れが観光業等の産業発展や経済成長に向けた海外投資促進の阻害要因となっています。また、教育分野では、国内の教育機会（特に高等教育）が限られていることによる人材不足や近隣諸国への優秀な人材流出が深刻な問題になっており、特に、教員の指導力の低さ、生徒の算数・数学の学力の低さ等が課題となっています。保健医療分野では医療機関における医療機器の老朽化や医療水準の向上が課題となっています。環境分野では、豊かな自然環境を活用した観光開発が経済発展のための主軸としており、環境保全と開発との調和が重要になっていますが、増加する廃棄物の処理や気候変動等によるサンゴ礁生態系の破壊等が問題となっています。
　以上を踏まえパラオ共和国では、生ゴミのコンポスト（堆肥）化等リサイクルについてコロール州廃棄物リサイクルセンター（草の根無償、技術協力、ＪＩＣＡボランティア、中小企業支援普及実証事業）、教員の指導法支援、算数・数学教育の改善について教育省及びミューンズ小学校（以上、ＪＩＣＡボランティア）、医療機器の整備状況、医療・保健衛生サービスの改善についてパラオ国立病院（草の根無償、ＪＩＣＡボランティア）、同国における最大の観光資源であるサンゴ礁生態系の保全等についてパラオサンゴ礁センター（無償資金協力、技術協力）、インフラ整備の状況についてパラオ国際空港及び日本・パラオ友好橋（以上、無償資金協力）を視察するとともに、コロール州周辺海域における、太平洋戦争時の海中残留不発弾処理を行う「日本地雷処理を支援する会」（日本ＮＧＯ連携無償）から活動状況を聴取し意見交換を行いました。
　また、戦後７０周年の節目の年であることを踏まえ、先の大戦で日米が激戦を交わしたペリリュー島を訪問し、西太平洋戦没者の碑において献花を行い戦没者の慰霊を行うとともに、ペリリュー州の経済・物流の要であるペリリュー北港及び同港浮き桟橋の整備状況（無償資金協力、草の根無償）、学校施設整備等についてペリリュー小学校（草の根無償、ＪＩＣＡボランティア）を視察しました。
　さらに、レメンゲサウ大統領、クアルテイ国務大臣、チン上院議長等政府、議会関係者と会談し、我が国の援助の在り方等について意見交換を行ったほか、青年海外協力隊員等ＪＩＣＡ関係者、州知事等と意見交換を行いました。

　ミクロネシア連邦では、政府の歳入の約５割を米国との自由連合協定に基づく財政支援に依存しているぜい弱な財政構造を背景に、国内に小規模な農業、漁業以外に主要な産業がなく、生活物資の多くを輸入に依存している結果、国民所得の大半が海外に流出し、国内の産業育成や雇用創出の阻害要因となっています。また、経済活動に欠かせない最低限の基礎的インフラ整備の遅れ、保健医療分野における糖尿病などの生活習慣病の急増、環境分野における大量の物資輸入等に伴う固形廃棄物の急増等の問題を抱えています。
　以上を踏まえミクロネシア連邦では、首都パリキールのあるポンペイ州において、インフラ整備の状況についてポンペイ国際空港（無償資金協力）、大統領府太陽光パネル（無償資金協力）、医療機器の整備及び病院の管理運営指導についてポンペイ州立病院（草の根無償、ＪＩＣＡボランティア）、多くの島・環礁が散在する同国における安定した海上輸送手段の確保について貨客船（キャロライン・ボイジャー号、ミクロネシア・ナビゲータ号）（無償資金協力）、低コストで簡易な埋立地改善技術である「福岡方式」（準好気性埋立方式）を導入している最終廃棄物処分場（無償資金協力、技術協力）、零細漁民が漁獲物の鮮度保持に必要な氷を供給する製氷施設（無償資金協力）、自然環境の現状についてアンツ環礁を視察しました。
　さらに、クリスチャン大統領、ロバート外務大臣等政府、議会関係者と会談し、我が国の援助の在り方等について意見交換を行ったほか、青年海外協力隊員等ＪＩＣＡ関係者と意見交換を行いました。