参議院は、ＯＤＡ調査派遣第１班（団長松山政司議員、大沼みずほ議員及び大野元裕議員）を、平成２６年７月３１日（木）から８月１０日（日）まで、ヨルダン・ハシェミット王国、イラク共和国、モロッコ王国及び英国に派遣しました。

　ヨルダンでは、シリア内戦の激化に伴い大量のシリア難民が流入し、支援が必要となっている現状を踏まえ、首都アンマンの近郊にあり、約８万５千人が暮らす世界最大級の難民キャンプであるザアタリ・キャンプを視察しました。また、天然資源に乏しい同国にとって、観光業は貴重な外貨獲得源となっていることから、その発展を支援するために行われている観光セクター開発事業のうち、サルト市における持続可能な観光開発プロジェクト及び自然史博物館や展望等などから構成される複合施設である死海パノラマコンプレックスを視察しました。
　また、国連パレスチナ難民救済事業機関（ＵＮＲＷＡ）の清田明宏保健局長とＵＮＲＷＡの活動や最近のガザ情勢等について意見交換を行ったほか、青年海外協力隊員（ＪＯＣＶ）、シニアボランティア（ＳＶ）、ＪＩＣＡ専門家等との意見交換も行いました。

　イラクにおいては、ヨルダン同様、クルディスタン地域に大量のシリア難民が流入し、支援が行われていることから、その実情を調査するため、エルビル市近郊のカワルゴスク・キャンプを視察しました。また、同国では、モースル市等の北部地域を中心に、「イスラム国」を名乗る武装勢力と治安機関・国軍などとの戦闘が６月初旬に発生し、現在も継続していることに伴う大量の国内避難民も生じています。その多くがクルディスタン地域に流入しているため、同様に支援が行われており、その実情を調査するため、ハーゼル・キャンプを視察しました。そのほか、エルビル市内において、円借款事業「クルド電力セクター復興計画」において供与された移動式変電施設、技術協力「クルド地域園芸技術改善・普及プロジェクト」が実施されているゲダラシャ農業試験場を視察しました。
　また、ハムラーン・クルディスタン地域政府（ＫＲＧ）財務・経済庁長官及びサーディク・クルディスタン議会議長を訪問し、シリア危機やイラクにおける内政問題等が同地域に及ぼす影響と我が国の援助の在り方などについて意見交換を行ったほか、ＪＩＣＡ専門家、国際機関職員、ＮＧＯ、日本企業関係者などイラク国内で活動している在留邦人との意見交換を行いました。

　モロッコでは、ラバト市において、ノン・プロジェクト無償により供与されたマツダ製クリーンディーゼル車を、カサブランカ市において、水産無償で建設された国立漁業研究所中央研究所を視察した後、地方へ移動し、セタット県において、無償資金協力により施設・機材の供与を行ったほか、ＪＯＣＶによる産後母親学級が行われているハッサン２世病院を、マラケシュ市において、草の根・人間の安全保障無償による女性と子供のための社会センターを、それぞれ視察しました。なお、国内移動では、円借款によって建設されたカサブランカ市南部バイパス道路を使って移動を行い、その活用状況を視察しました。
　また、ビアディラ・モロッコ参議院議長及びアマラ・エネルギー・鉱山・水利・環境大臣を訪問し、開発協力における議会間交流の意義、同国の持続可能な開発に寄与する我が国企業の進出や援助の在り方などについて意見交換を行ったほか、ＳＶ、ＪＩＣＡ専門家、日本企業関係者との意見交換を行いました。　

　英国では、国際開発省（ＤＦＩＤ）及び外務・英連邦省（ＦＣＯ）を訪問し、英国におけるＯＤＡ戦略と実施機関との関係、緊縮財政下におけるＯＤＡ実績の対ＧＮＩ比0.7％目標達成のための取組、英国のＯＤＡにおける民間企業の役割等について、それぞれ意見交換を行ったほか、議会上院を訪問し、ヘニッグ上院議員と英国のＯＤＡ政策に対する上院の関わり方などについて意見交換を行いました。また、ＪＩＣＡ英国連絡所の中村首席駐在員より、国際開発をめぐる英国と日本との協力の可能性などについて説明聴取の後、意見交換を行いました。