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参議院本会議決議本文

第12回(臨時)国会

昭和26年11月14日 
参議院本会議 

社会保障制度推進に関する決議

 国民福祉の向上と民生の安定を基本とし、民主的社会の平和と繁栄をはかることは日本国憲法に一貫せる精神である。いまやわが国は講和条約を転機として自主独立の日を迎えんとしている。尚条約の前文にも、日本国の安定と福祉の向上は誓約せるところである。従つてこのことは、ひとり国民のためのみでなく、日本が、国際社会の一員として民主々義的信頼を得るためにも必要な条件である。
 かかる意味において向後の日本においては社会保障制度の推進が一層重視されねばならない。客年十月社会保障制度審議会は政府に対し社会保障制度に関する勧告を行い、さらに去る十月その重点的な推進について第二次勧告を行つた。
 政府は速やかにこれら勧告の趣意を尊重し社会保障制度の推進をはかるべきである。
 特に、直面する国民生活の実情に鑑みるとき、国民医療の確保をはかることが社会保障制度としての最大緊急事である。何となれば現在国民は個々の力をもつてしては医療費の負担に耐え得ないのであつて、これが即ち貧困の最大原因をなしているからである。しかるに、これをまもるための健康保険、国民健康保険等の医療保険制度は財政的危機におそわれ、将に崩壊の寸前にある。かかる現状に照らし、医療保険の健全性を維持し、かつ、その普及充実をはかるために強力な施策を講ずることは刻下最大の急務である。これがためには政府は万難を排し尠くとも医療保険の給付費に対しては速やかに国庫負担の措置を講ずべきである。
 右決議する。