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参議院本会議決議本文

第12回(臨時)国会

昭和26年11月9日 
参議院本会議 

国会の審議権尊重に関する決議

 政府は今回米麦の管理統制の廃止を決定し、麦類については明年一月一日を期し、米については四月一日から実行せんとする意図のようである。
 麦類の管理統制の廃止については、現政府は第十回国会に食糧管理法の一部を改正する法律案を提出したのであるが、その成立を見ることができなかつたため、管理統制の廃止を中止し、従前に引続いて統制を行つて今日に至つているのであつて、民主政治の下においてはまさにかくあるべきである。
 そもそも、現在行われている米麦の管理統制は食糧管理法に基いて行われ、この法律は制定以来、数次の改正にもかかわらずなお重要な事項が大幅に命令に任せられており、いも類及び雑穀等の管理統制はこの委任命令によつて廃止せられたのであるが、事苟しくも米麦のような重要食糧の管理統制の改廃については、国会の審議権を尊重して法律の制定改廃の方法によつて実行すべきである。
 しかも今回政府が企図している米麦の統制廃止は、食糧事情が安定したとの見解を前提としているが、前提条件そのものに大いに議論が存するところであつて、これは政府がこの方針を発表するや世論のごうごうたるに徴しても明かである。かかる事実こそ、国会の愼重な審議を経てその判断に従つて事を決することを愈々必要とする所以である。
 かような事情にかんがみ、政府は米麦の管理統制の改廃を行わんとするときは、如何なる場合においても、必ず食糧管理法の改廃その他これに関連する法律案を国会に提出して審議を求め、その決するところに従つて措置することとなし、苟しくも独善に事を処し、新憲法下民主政治に背反することなきを期すべきである。
 右決議する。