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参議院本会議決議本文

第5回(特別)国会

昭和24年5月16日 
参議院本会議 

未亡人並びに戦没者遺族の福祉に関する決議

 夫を失つた婦人は所謂未亡人と呼ばれ、封建的因襲のままに社会的冷遇をうけ、か弱き女手にいたいけな子供や老人を背負い、社会混乱の渦中に漂流し、或はいばらの道に難行し、その生活苦を原因とする悲惨事件は、近時一層の深刻さを加えているが、これが福祉に関する施策は皆無に等しい。
 又一家の主柱を失い、人生の光明を失つた所謂戦没者遺族の多くは、精神的にも物質的にも、その窮状は看るに忍びざる状況にあることは、まことに重大なる社会問題である。
 戦没者の多くは、志願して戦争に出たものではなく、軍国主義時代の徴兵制度により、総動員されてその犠牲となつたものである。
 しかして最も平和を愛し最も戦争を呪うものがこの遺族であるのに、民主的平和国家の現実は、これを差別的に冷遇し、或は社会的虐遇のままに放置している実状にあることは、国政上遺憾である。
 よつて政府は改めてここに右の二大問題の事実を深く認識すると共に速かに左の各項に関する施策を樹立しその結果を次期国会において本院に報告すべきである。
        記
一、社会保障制度の確立を促進すると共に社会福祉施策の強化特に公共扶助の制度を拡充して生活保護の基準を引上げ、これが活用を計り、その適切、公平なる遂行をなすこと。
二、未亡人の擁する子女の育英に関しては現行制度を拡充して特別の施策をなすこと。
三、遺族年金又は弔慰金を支給すること。
四、生業扶助制度及び生業資金制度を拡充し、その適切な活用を図ること。
五、母子福祉事業特に授産事業、母子福祉施設等の拡充強化を図ること。
六、戦没者に対する葬儀その他の慰霊行事については一般文民同様の取扱とすること。
七、課税の減免、農地の解放、作物供出、職業の安定等の問題に関して、未亡人家庭の特殊事情を充分参酌して、適切なる施策を行うこと。
 右決議する。