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国際関係

外国議会との交流

ニュージーランド国会の招待による同国公式訪問及び
各国の政治経済事情等視察参議院議院運営委員長一行報告書

       団長 参議院議院
           運営委員長 溝手 顕正
           参議院議員 椎名 一保
           同       郡司  彰
           同       藤原 正司
           同       山本  保
       同行 委員部副部長
           議院運営課長事務取扱
                   中村  剛
           参事     大井田 淳

 本議員団は、ニュージーランド国会の招待による同国公式訪問及び各国の政治経済事情等視察のため、平成十八年六月二十八日から七月六日までの九日間、ニュージーランド、シンガポール共和国及びマレーシアの三か国を訪問した。
 日程は、次のとおりである。

 六月二十八日  東京発 シンガポール経由(機中泊)
   二十九日  ウェリントン着(一泊)
        デービッド・マッギー国会事務総長との会談
         マーガレット・ウィルソン国会議長との会談
         ニュージーランド国会議員との会談
    三十日  ウェリントン発 ロトルア着(一泊)
         ロトルア視察
 七月  一日  ロトルア発 オークランド着(一泊)
         オークランド視察
     二日  オークランド発 シンガポール着(一泊)
     三日  シンガポール発 クアラルンプール着(一泊)
         プトラジャヤ視察
     四日  クアラルンプール発 シンガポール着(一泊)
         マラッカ・シンガポール海峡及び          シンガポール港コンテナターミナル視察
     五日  ニュー・ウォーター・プラント視察          シンガポール発(機中泊)
     六日  東京着

始めに

 本議員団は、ニュージーランド国会の招待により同国を公式訪問し同国国会との交流を深めるとともに、シンガポール共和国及びマレーシアを訪問し、両国の政治経済事情等の視察を行った。
 近年、ニュージーランドはアジア・太平洋国家としての自覚を強め、積極的な対アジア外交を展開しており、APEC、ASEAN地域フォーラム等の地域協力機関を通じ、この地域での経済活動の推進及び安全保障に貢献している。また、ASEAN諸国の目覚ましい成長を背景に東アジアとの連携を強化しており、昨年十二月にマレーシアで開催された第一回東アジア首脳会議にも参加している。我が国とニュージーランドとは、アジア・太平洋地域において基本的価値観を共有する先進民主主義国家として、政治、経済、文化を含め幅広く良好な関係を築いており、議会間交流も活発で、二〇〇三年九月には、参議院議長の招待でハント国会議長一行が我が国を公式訪問している。
 また、我が国とASEAN諸国は、長い友好と信頼の歴史を有するパートナーであり、過去における援助国と被援助国の関係から、現在は対等の立場で東アジア全体の課題に対処する「戦略的パートナー」となってきている。
 貿易、投資、経済協力のいずれの面でも、我が国はASEANにとって現在も最大の域外貿易相手国、投資国、ODA供与国であり、我が国にとってもASEANは最も重要な貿易・投資パートナーの一つとなっている。
 中でも、シンガポールは我が国が初めて締結した経済連携協定の二〇〇二年十一月の発効以降、両国経済の低迷にもかかわらず、貿易額、投資額が増大するなど、それぞれの相手国の市場における存在感が増し、二国間の経済関係が一層強化されている。
 マレーシアは、第一回東アジア首脳会議を始めとする一連のASEAN関連首脳会議を議長国として成功させ、我が国との関係では、頻繁な要人往来、直接投資や貿易・技術協力等を通じた良好な経済関係、活発な文化・留学生交流に支えられ、緊密な友好関係を築いている。昨年三月にはサイド・シラジュディン国王が国賓として訪日され、同年十二月に小泉内閣総理大臣が第一回東アジア首脳会議等出席のためマレーシアを訪問した際に経済連携協定が署名された。同協定は本年七月に発効し、これにより両国経済の一段の活性化及び両国間関係のより一層の緊密化が期待されているところである。
 なお、本年六月には天皇皇后両陛下がシンガポール共和国及びマレーシアを御訪問された。
 このような状況下で三か国を訪問し、議会関係者との懇談や各地の視察を行うことは、我が国と三か国との相互理解・友好関係の発展にとって、極めて有意義であった。
 以下、ニュージーランド国会の招待による同国公式訪問及び各国の政治経済事情等視察について、その概要を報告する。

一、ニュージーランド

(一)議会制度
 ニュージーランド国会は一院制を採っており、任期は三年(解散あり)、選挙権及び被選挙権は十八歳以上である。定数は百二十議席(現在の選挙制度においては小選挙区の当選者を優先するため、議席は百二十を超えることがある)、小選挙区比例代表併用制により投票者は小選挙区票と政党票を投じ、政党得票率を議席総数に乗じて得た政党別議席配分が決定され、既に小選挙区で当選した候補者の数を減じ、残りの議席分を比例区名簿から選出する。小選挙区の数は人口分布により変動し、昨年の総選挙では、マオリ市民の議席を保障するために設けられているマオリ選挙区七を含めて六十九である。
 なお、ニュージーランドは一八九三年に世界で初めて婦人参政権を認めている。
 昨年九月に実施された総選挙では、労働党五十議席、国民党四十八議席、NZファースト党七議席、緑の党六議席、マオリ党四議席、統一未来党三議席、ACT党二議席、革新党一議席となり、労働党がNZファースト党、統一未来党及び緑の党の協力を得て革新党との連立政権を構成し、三期連続して政権を担当している。

(二)デービッド・マッギー事務総長との会談
 議員団は、六月二十九日、ニュージーランド国会を訪問し、デービッド・マッギー事務総長、ティム・バーネット労働党院内幹事、マーガレット・ウィルソン国会議長、リンゼイ・ティッシュ国民党院内幹事及びWTO担当大使等を務めたティム・グローサー議員(国民党)との会談を順次行った。
 マッギー事務総長からは、選挙制度及び議長を中心とする国会運営について説明があり、議員団から、一九九三年十一月の国民投票により、それまでの単純小選挙区制から現在の小選挙区比例代表併用制に改正された背景について質問したところ、同事務総長から、それまでの労働党及び国民党による二大政党制では国民の多様な意見が反映されないとの声があり、選挙制度の改正により、より広範な国民の意見を反映できるようになった旨の発言があった。さらに、議員団から、副議長及び各委員長の選出について質問したところ、同事務総長から、議長は第一党から選出され、副議長は、確立した制度ではないが、現在は野党第一党から選出されている。各委員長は各委員会の投票により選出されるが、与党がすべてを占めることはない旨の発言があった。

(三)ティム・バーネット労働党院内幹事との会談
 引き続き議員団は、バーネット労働党院内幹事との会談を行った。同院内幹事から、院内幹事の役割は国会対策や他政党との関係構築及び党活動の宣伝等広範囲である旨の発言があった後、議員団から、国会議員及び政党に対する国費支給等について質問したところ、同院内幹事から、国会議員には報酬等が支給されており、その金額は超党派の委員会で決定される。政党には政党助成的な国費は支給されておらず、労働党所属議員は報酬の一部を党に拠出している。また、国内線の航空機を無制限で利用できる等の議員特権については、批判があるのも事実である旨の発言があった。

(四)マーガレット・ウィルソン国会議長との会談
 引き続き議員団は、マーガレット・ウィルソン国会議長との会談を行った。同議長から、ニュージーランド国会の基本的制度の説明があった後、議長は政党間の政治的利害の調整と実際の会議運営の詳細に常に関与しており、大変な仕事である旨の発言があり、議員団から、日本では、議院運営委員会がその大宗を担っているとの発言があった。さらに、同議長から、参議院の役割について質問があり、議員団から、衆議院の優越性及び選挙制度の類似性等について説明を行った。
次いで、溝手団長から、ウィルソン議長によりお招きを頂き、感謝申し上げる。今後、両国間の緊密度が増すにつれて、議会人同士が直接対話し、人的交流を通じて相互交流を深めていくことは、重要な意味を持つものと考える。都合の良い時期に、我が国を公式訪問されるよう招待申し上げる旨発言したところ、同議長から、招待に感謝申し上げる。是非検討させていただく旨の発言があった。

(五)リンゼイ・ティッシュ国民党院内幹事及びティム・グローサー議員との会談
 引き続き議員団は、リンゼイ・ティッシュ国民党院内幹事及びティム・グローサー議員との会談を行った。ティッシュ院内幹事から、IPU(列国議会同盟)等を通じて貴国の国会議員とは交流がある。先日、国会は政府提出法案(すべての犬に識別情報を織り込んだマイクロチップを埋め込むこと等を内容とする法案)を否決しており、これは国民党にとって大きな成果である。野党は政府を追及することが重要である旨の発言があり、さらに、グローサー議員から、ニュージーランドと日本の関係は良好であるが、捕鯨及びミナミマグロ漁獲枠問題がある旨の発言があった。議員団から、政権交代に向けた方策及びWTO農業交渉の見通しについて質問したところ、ティッシュ院内幹事から、国民党の人材は豊富であり、何を国民に訴えていくか、また、党全体のチームワークこそが政権交代に向けた策である旨、グローサー議員から、WTO農業交渉について、米国、日本等は従来の政策にこだわらず、決断すべき時である旨、それぞれ発言があった。
 一連の会談は、終始友好裏に進行し、ニュージーランド国会と参議院の関係を一層深めるものとなった。

二、シンガポール共和国

(一)マラッカ・シンガポール海峡及びシンガポール港視察
 マラッカ・シンガポール海峡は、世界の貿易量の三分の一、原油輸送量の二分の一が通過し、我が国の原油輸入量の九十パーセント、輸入貨物の約五十パーセント、輸出貨物の十八パーセントが通過しており、我が国は、同海峡における安全航行のために、一九六九年以降、民間団体を通じて航路標識の整備等に約百三十億円の支援を実施している。なお、同海峡では海賊事件が多発しており、日本の提唱によりアジア海賊対策地域協力協定が策定されている(本年七月現在、未発効。)。
シンガポール港コンテナターミナルは、東南アジア地域でのハブ港として、地理的条件に加え、効率的な荷役施設、入出港手続の簡略化、港湾サポート機能の充実等、二十四時間フルタイムで充実したサービスを提供し、二〇〇五年には香港を抜き世界一のコンテナ取扱量となっている。議員団は、同海峡及びコンテナターミナルを視察し、施設の概要等について説明を聴取した。

(二)ニュー・ウォーター・プラント視察
 シンガポールではひっ迫した水需要に対応するため、水供給の多様化を進めており、ニュー・ウォーター・プラントにおいて下水に四段階の浄化処理を施し、飲用可能な水準まで高度処理した再利用水を生産しており、一日の生産量は使用量の六~七パーセントに当たる約二千万ガロンに上る。再利用水はニュー・ウォーターと名付けられ、基本的には工業用水として使用されるが、飲料用水にも約一パーセント混合されている。議員団は、ニュー・ウォーター・プラントを訪問し、説明を聴取するとともに施設を視察した。ニュー・ウォーター・プラント側からは、ニュー・ウォーターはWHO(世界保健機関)等の飲料水水質基準を満たしているが、上水利用に対する国民の心理的抵抗感を取り除くため、貯水池に戻して混合している旨の説明があった。

三、マレーシア・プトラジャヤ視察

 マレーシアでは、首都クアラルンプールで慢性的な交通渋滞が深刻になっていることに加え、市内に政府機関が点在していることによる行政機能の非効率等が問題となっていたため、一九九三年に、首相官邸及び政府機関等の首都機能をクアラルンプール郊外のプトラジャヤへ移転することを決定し、一九九五年に建設が開始され、一九九九年には首相官邸が、昨年までには残りの主立った政府機関が移転し、二〇一〇年にはすべての開発が完了する予定となっている。議員団は、現地を訪問し、都市整備の状況等について説明を聴取した。

四、その他の日程

議員団は、ニュージーランド及びシンガポール共和国において、日本企業の現地駐在員との意見交換を行った。

終わりに

 今回の訪問においては、齋藤正樹駐ニュージーランド大使、小島高明駐シンガポール共和国大使、今井正駐マレーシア大使を始め、各地において在外公館員等多くの方々にお世話になった。この場を借りて、関係各位に厚くお礼を申し上げるものである。