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第25回ASEAN議員機構(AIPO)総会派遣報告

 第25回AIPO総会は、平成16年9月12日から17日まで、カンボジア・プノンペンのインターコンチネンタルホテルにおいて、加盟国の8代表団、特別オブザーバー国の2代表団、我が国を含むオブザーバー国の9代表団、特別ゲスト(東チモール)の国会議員等約275名が出席して開催された。
 本報告においては、参加参議院議員の活動を中心に会議等の概要を報告する。

1.会議の概要

 本代表団は、総会期間中に開催された会議のうち、開会式、全体会議、AIPOと日本との対話及び閉会式に出席した。

(1)開会式
 開会式は、9月13日午前9時15分から10時45分まで市内チャックトムック会議場において挙行された。式においては、チア・シム・カンボジア国王代行(上院議長)より歓迎のあいさつがあり、ノロドム・ラナリット・カンボジア国民議会議長・AIPO議長の開会演説、フン・セン・カンボジア首相の歓迎演説が行われた。

(2)第1回全体会議
 第1回全体会議は、9月13日午前11時から、昼食休憩を挟み午後5時30分まで開催された。冒頭カンボジア以外の加盟国代表団団長を今次総会の副議長に指名し、続いて各国代表団団長が演説を行った。
 山東団長は、本代表団団長として以下の趣旨を英語で演説した。
 まずはじめに、私どもをお招き下さったノロドム・ラナリット議長閣下をはじめ、カンボジア議会その他関係者の皆様方に、心から感謝申し上げ、この地でAIPO総会が盛大に行われることをお祝い申し上げる。
 ASEANは、多様性を維持しつつ、様々な問題に対する協調的取組みを通じ、政治、経済、社会等あらゆる面で着実に成功を収めてこられた。このことは、我が国を含むアジア太平洋地域全体の安定と繁栄に密接に関連するものである。
 昨年12月には、東京で日本ASEAN特別首脳会議が開催された。ASEANの全首脳が域外で初めて一堂に会したこの歴史的な首脳会議で、小泉総理とASEANの首脳との率直な意見交換が行われ、その結果、(1)政治・安保パートナーシップの強化、(2)法の支配、人権擁護、民主的環境、アジアの伝統・価値の尊重等の共通の原則・価値の確認、(3)東アジアコミュニティーの創設に向けた協力等を宣言する「日本ASEAN東京宣言」と、人材育成・交流、メコン地域開発等の統合強化への支援を内容とする「行動計画」等の大きな成果が得られ、二国間経済連携協定等「経済連携」の面でも大きな進展があった。また、その際、我が国は東南アジア友好協力条約(TAC)締結の意図を正式に表明し、本年7月に加入を果たした。
 我が国は、長いASEANと日本の友好関係の歴史を基礎に、率直なパートナーとして、地域及びグローバルな諸課題について、共に考え、計画し、取り組んでいく。
 欧州では、本年5月にEUが拡大し、米大陸においても、米州自由貿易地域(FTAA)の創設に向けた努力が続けられている。これらの動きと同様に注目を集めているのは、東アジアの動向である。この地域を平和と信頼と繁栄を共有する開かれたコミュニティーにするための道のりは容易ではないだろう。しかし、我々が、想像力とビジョンと情熱を持ち続ければ実現は可能であると信じる。列席の方々、21世紀の東アジアを創造するため、共に力を尽くすべきである。
 各国代表団団長の演説が終了した後、会議日程、議題、委員会の構成等が決定された。

(3)AIPOと日本との対話
 AIPOと日本との対話は、14日午後1時30分から4時まで開催された。AIPOからは、委員長を務めたライ・ソン議員(カンボジア)以下、カンボジア2名、インドネシア1名、ラオス1名、マレーシア2名、シンガポール1名、タイ6名、ベトナム2名、ブルネイ1名、ミャンマー1名の計18名が代表として出席した。
 委員長のあいさつの後、議題に沿って議論を行った。その主な内容は以下のとおりである。

〈地域安全保障問題〉
 はじめに、山東団長が概ね次のとおり発言した。
 アジア太平洋地域は、政治、経済、民族、文化、宗教等多くの点で多様性に富むことから、欧州におけるNATOのような多国間の集団安全保障機構ではなく、二国間の安全保障取極の積み重ねを機軸として地域の安定が維持されてきた。冷戦後も朝鮮半島等不安定要素があるが、基本的にはASEAN地域フォーラム(ARF)等を通じ対話が進展してきていると認識している。
 これに対し、AIPOの多くの国々の代表から、地域の安全に対する日本のコミットメントに感謝する発言があった。
 また、テロ問題に関し、インドネシアから、数日前にジャカルタのオーストラリア大使館前で爆弾テロが発生したが、インドネシアはテロ対策の技術・能力の構築に努めており、支援をお願いするとの発言が、また、タイ代表から、テロ対策の協力体制の整備が必要であり、国会議員も取組みを強化する必要があるとの発言があった。
 マレーシア代表から、日本の安全保障上の課題、朝鮮半島問題についての立場、海賊問題、防衛費の動向について質問があり、山東団長は概ね次のとおり発言した。
 我が国と北朝鮮との重要な問題として、日本人拉致問題がある。一部進展もあったが、解決にはなお程遠い状況である。また、北朝鮮の核問題は、我が国にとって常に脅威である。北朝鮮は、これまでも国際社会に対し誠意ある姿勢を示してきておらず、今後状況次第では経済制裁も必要であり、我が国国会としていくつかの法整備を行った。我が国は、これからも六者協議に参加する韓国、中国、米国、ロシアとともに、北朝鮮の誠実な対応を求め、アジアの国々の支持の下、本当に安全な体制の構築に努力していく。また、テロ問題については、活動家の潜伏状況等情報の共有に各国が取り組むことが重要である。
 続いて、山本議員が概ね次のとおり発言した。
 インドネシアでのテロ事件に対しお悔やみを申し上げる。対テロ包囲網の構築のため、我が国もできるだけの協力をしたい。9・11米国同時多発テロ事件以降、世界にとって国家同士の戦争の脅威よりもむしろテロが差し迫った脅威になった。朝鮮半島問題については、米軍の世界的な再配備の問題もあるが、この地域に十分な抑止力が確保されることを望んでいる。我が国の安全保障は、アジアの安全保障と密接に関係している。具体的な協議の場としてのARFをはじめ、様々なチャンネルを活用し歩調を合わせていきたい。また、我が国の防衛費に関しては、全体の額ということではなく、内容面での見直しが行われている。海賊問題については、我が国は、貿易立国として、シーレーンを守ることの重要性を認識しており、人材育成等ASEAN諸国と協力していきたい。

〈地域経済及び貿易問題〉
 山本議員は、様々な形で構造改革を進めつつ、アジアとの間で、自由貿易協定(FTA)を基本に、より幅広く経済的な関係強化を図る経済連携を積極的に進めていきたいと発言した。
 続いて、山東団長は、我が国政府試算によれば、日本・ASEANのFTAによる経済効果は、日本のGDPに対し1.1兆円から2兆円、ASEANのGDPに対し4.3兆円から8.1兆円であると説明した。
 これに対し、インドネシア代表から、双方にメリットがあることを具体的な数字で示されているので真剣に実現を考えるべきであるとの発言があったほか、タイ代表からは、我々はより良いパートナーとなる段階にきている、経済連携は非常に良い構想であるが、ASEAN全体ではなく、むしろASEAN加盟各国と日本との二国間協議を重点的に進めるほうが現実的ではないかとの意見が述べられた。また、シンガポール代表からは、日本との二国間経済連携ですばらしい成果があがっており、一層の強化を望むとの要望とともに、最近の中国やインドの経済的台頭をどう捉えているかとの質問があった。
 その他、AIPO各国代表から、我が国からのASEAN諸国への投資拡大の要請があった。また、我が国の経済援助について、ラオス代表からメコン地域開発への支援に対する感謝の表明があったほか、地域格差是正のため、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムに対する一層の支援を要請する発言もあった。
 これらに対し、山東団長は概ね次のとおり発言した。
 一部の国ということではなく、世界の国々それぞれが豊かになり、それによって、皆が生きる力を与えられるということが重要である。そのためにアジアの一員として皆が知恵を出し合い、協力することが重要である。中国等の経済発展もその中で捉えている。
 投資の拡大については、人権擁護、政治的安定、安全の確保等信頼性を高め、投資家が安心して投資できる国として一層の環境整備をお願いする。
 我が国の経済については、明るい兆しが見えてきたとはいえ、その効果は全体にまで及んでおらず、例えば地方の建設業など依然非常に厳しい状況である。
 我が国国民の考え方としてASEANの発展を願い、これまでも重点的に援助を行ってきた。これからは、各国とも話し合い、内容を吟味し、従来にも増して本当に価値ある支援をしていきたいと考えている。

〈持続可能な成長に不可欠な資源としての環境〉
 マレーシア代表から温暖化問題への日本の取組みと洪水対策について質問があり、山本議員は概ね次のとおり発言した。
 温室効果ガス削減については、京都議定書に沿って対策に取り組んでいる。洪水対策については、インフラの整備、ハザードマップの作成等に取り組んできたが、7月の梅雨前線豪雨や相次ぐ台風の上陸等、特に今年に入り我が国は大きな被害に見舞われている。最近の事例から、洪水を想定した計画が不十分であること及び高齢化の中で単身高齢者等災害弱者の犠牲の増加をいかに抑えるかということのソフト面での2つの重大な課題が明らかになり、現在対策を練っているところである。
 また、インドネシア代表から我が国の環境汚染状況、取組み等について質問があり、山東団長は概ね次のとおり発言した。
 我が国はかつて深刻な公害を経験したが、企業、国が協力し、工場による汚染はほぼ解決した。現在、人口集中に伴う東京圏の廃棄物、自動車の排気ガス等が重要課題となっており、リサイクルやトラックの排気ガス規制等の対策をとっている。

〈情報技術(IT)協力〉
 マレーシア代表から我が国のIT戦略について質問があり、山東団長は概ね次のとおり発言した。
 我が国は、2005年までに「世界最先端のIT国家」になることを目指したe‐JAPAN戦略を進め、三千万世帯に高速インターネット常時接続可能な環境を整える等のインフラ整備目標は予定より早く達成した。今後更なる高度化や有効利用促進を図っていく。さらに、2010年までにアジア各国間を直接つなぐ十分な帯域のネットワーク、地域間の情報流通量均衡化の実現、アジアが技術で世界をリードすること等を目標とした「アジア・ブロードバンド計画」でASEAN諸国との協力に取り組んでいく。

〈意思決定過程への女性の参加に関する意見交換〉
 ベトナム代表から日本の現状に関する質問があり、山東団長は、概ね以下のとおり発言した。
 我が国の国会議員に占める女性の割合は、参議院で13.6%、衆議院で7.1%と非常に低い。政府においても、女性の幹部登用を進めるべく、採用率30パーセントの目標を立て努力しているが、十分には進展していない。しかし、弁護士や医師等の専門的職業では女性が増え、選挙に立候補する女性の数も増えてきている。女性が元気良く、また発言の場が広がる社会の実現に努力していく。目標を持って仕事したいという女性が増え、国民の結婚観に変化が生じたこともあり、一方で我が国は、深刻な少子化問題に直面し、出生率は1.29まで低下した。北欧では仕事と家庭の両立への先駆的な取組みが行われていると承知しており、我が国も、企業の勤務形態等にも踏み込んだ思い切った対策が必要な段階にきていると思う。晩婚化には若い男性が忙し過ぎることも一因しており、男性も含めた取組みが必要である。

(4)第2回全体会議
 第2回全体会議は、16日午後2時から午後4時30分まで開催された。各委員会から報告書及び決議案が提出され、いずれも採択された。また、次回総会を2005年9月4日から9日までラオスのビエンチャンにおいて開催することが合意された。最後に、共同コミュニケ(共同コミュニケの全文は別添参照)が採択され、加盟国及び特別オブザーバー国代表団団長による署名が行われた。

(5)閉会式
 第2回全体会議に引き続き、午後4時45分から5時30分まで閉会式が挙行された。ノロドム・ラナリットAIPO議長による閉会演説の後、AIPO議長職及び事務総長職の引継ぎが行われ、新議長のサマーン・ヴィニャケート・ラオス国民議会議長の受諾演説が行われた。

2.表敬訪問等

 山東団長は、本代表団団長として、総会期間中、フン・セン首相、チア・シム・カンボジア国王代行(上院議長)への表敬訪問を行い、ノロドム・ラナリット・カンボジア国民議会議長・AIPO議長主催団長朝食会にも出席した。

3.終わりに

 本代表団は、9月12日、会議に先立ち、国連ボランティアメンバーとして、また文民警察官として、それぞれ国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)の任務遂行中に命を落とされた中田厚仁氏、高田晴行警視の慰霊碑に参拝し献花を行った。また、会議の合間等を活用し、カンボジア上院議員、教育・青少年・スポーツ大臣、女性省長官等との意見交換や、カンボジア地雷除去活動センター(CMAC)、国立母子保健センター、障害者支援センター等の視察を行い、JICA関係者その他在留邦人の方々からも説明を受けた。こうした活動を通し、内戦の傷跡、貧困、人身売買、教育等カンボジアの直面する諸問題と同国の取組みについて理解を深めるとともに、我が国の支援の果たす役割の重要性を強く感じた。
 また、総会終了後、9月17日から19日までベトナムを訪問した。ホーチミンにおいて、人民委員会副委員長訪問、マブチモーターベトナム工場及びホーチミン市ストリートチルドレン友の会の施設視察を行い、また、ハノイにおいて、ホーチミン廟への献花、ODAプロジェクトの視察、ベトナム国会議員との交流等を行った。

【別添】

共同コミュニケ
(2004年9月16日採択)

1.2003年9月7日から12日までジャカルタで開催された第24回ASEAN議員機構(AIPO)総会の決定に基づき、かつAIPOの規約に従って、第25回AIPO総会が2004年9月12日から17日までプノンペンにおいて開催された。第25回総会は、加盟国8か国(カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ及びベトナム)、特別オブザーバー国2か国(ブルネイ及びミャンマー)、オブザーバー国9か国(オーストラリア、カナダ、中国、日本、韓国、ニュージーランド、パプアニューギニア、ロシア及び欧州議会)の参加を得た。
2.第25回AIPO総会の開会式に先立って、AIPO女性議員会議(WAIPO)が2004年9月12日に行われた。
3.サムデック・クロム・プレア・ノロドム・ラナリット・カンボジア王国国民議会議長・AIPO議長が、第25回AIPO総会の議長を務めた。
4.すべての第25回総会参加者は、チアム・イアップAIPOカンボジア代表団長夫妻が主催するレセプションに謹んで招待された。
5.また、AIPO参加各代表夫妻は、サムデック・フン・セン・カンボジア王国首相が2004年9月13日に主催した夕食会に出席した。

開会式

サムデック・チア・シム・カンボジア国王代行による歓迎演説

6.サムデック・チア・シム国王代行は、平和・協力・地域開発・グローバル開発を大義として活動するAIPOに心からの謝意を表明した。かかる取組みは、平和・安全・自由の環境整備に貢献し、民主的プロセスを育む気運を醸成した。
7.同国王代行は、議会は民主的プロセスにおいて市民に対して説明責任を負っており、その市民の関心事を代弁するという必須の役割を果たしていると述べた。議会がこの役割を果たすことが、結果としてすべての住民の安定・平和・繁栄の拡大につながる。
8.同国王代行は、国境を越える犯罪、女性及び児童の人身売買並びにテロリズムという世界的脅威に対処する責任が議会にあると述べた。同国王代行は、当該テーマについて本総会で行われる討議が、地域全体の住民の利益となる形での当該問題の部分的解消につながる一歩となることを期待した。同国王代行は、AIPOが平和、協力及び地域開発・グローバル開発の支持を表明する機関として信頼を得てきているとして、AIPOの過去25年にわたる成果を祝福した。

サムデック・クロム・プレア・ノロドム・ラナリットAIPO議長・カンボジア王国国民議会議長の開会演説

9.サムデック・クロム・プレア・ノロドム・ラナリット殿下は、その開会演説においてAIPO加盟国・特別オブザーバー・オブザーバー国を歓迎し、ジャカルタにおいて第24回総会を開催したインドネシア国会に感謝の意を表明した。さらに、殿下は、総会への三度目の参加となるASEAN事務局、また初めての参加となったIPU(列国議会同盟)に対し歓迎の意を表明した。同議長はASEAN加盟国政府首脳とAIPOの間に存在する重要な関係に触れ、総会演説でAIPOへの支援を表明したサムデック・フン・セン・カンボジア首相に対して深謝した。
10.同議長は、前回の総会以来、二つの調査委員会の会合が開かれ、重要なAIPO公式訪問が1回実施されたと報告した。ASEAN大学設立に関するAIPO調査委員会が2004年1月にラオスのビエンチャンにおいて開催され、麻薬の脅威と闘うためのAIPO事実調査委員会第3回会合が2004年5月にプノンペンで開催された。さらに、中華人民共和国全国人民代表大会常任委員会からの招待を受けて、2004年6月20日から25日まで第5回AIPO中国訪問が実施された。
11.同議長は、政治・経済・社会・組織問題及び今後予定される重要な対話についてとくに言及した。同議長は、第25回AIPO総会がAIPOと他の議会組織及び政府間組織との関係を強化する絶好の機会であると述べた。
12.同議長は、AIPOが第37回ASEAN外相会議の成果、とりわけ外部パートナーとの関係構築決定を支持していると述べた。同議長は、中国、日本及び韓国とのバランスの取れた関係を更に発展させ、維持するための長期的戦略の策定、並びに東アジア首脳会議の近い将来における開催を強く要求した。さらに殿下は、ASEAN地域における運輸・通信・エネルギー基盤の域内ネットワーク構築の取組みを奨励した。同議長は、グローバリゼーションの利点は大いにあるものの、グローバリゼーションが社会内部及び国家間に緊張を生み出していることを踏まえ、ASEANに対して、高競争力経済国と低競争力経済国の間に存在する社会経済的格差の是正に向けて行動を起こすよう促した。
13.締めくくりとして同議長は、AIPOの特質である協力、誠意、相互理解及び融和を賞賛し、参加者に対し、是非総会を成功させるよう求めた。

サムデック・フン・セン・カンボジア王国政府首相の歓迎演説

14.サムデック・フン・セン・カンボジア王国首相は、歓迎演説において、プノンペンでの第25回AIPO総会に参加した全代表・来賓に対し謹んで歓迎の意を表明した。同首相は、1977年に設立されたAIPOが今後も地域協力のイメージを高める上で大いに貢献することを確信していると述べた。AIPOによる貢献は、政治・安全保障・経済・社会問題や科学・技術情報交換等、他の面でも死活的に重要なものとなろう。これはグローバル化時代を迎えたASEAN地域にとって不可欠である。
15.同首相は、カンボジア王国政府がASEAN加盟による同国のASEAN地域への統合にいかに重点を置いているかを強調した。同首相は、カンボジアから見たASEANの大きな強みとして、ASEANが安全・平和・安定性のある地域環境を作り出していること、ASEANが協調の地域であり、共同体精神の醸成に決定的な役割を担っていること、ASEANが強力な経済成長センターであること、さらにASEANが地域・グローバル外交の舞台となっていることの4点を指摘した。
16.同首相は、第2ASEAN協和宣言の声明文にも明記されているように、ASEAN諸国のASEAN共同体への統合の成否は、それにふさわしい経済的環境の整備、ASEAN諸国の貿易・観光業上の競争力の向上、ASEAN諸国間の開発格差の是正等の取組みにかかっていると説明した。ラオスのビエンチャンで開催される次回ASEAN首脳会議において、第2ASEAN協和宣言履行の具体的プランに焦点を当てた「ビエンチャン行動計画」についてASEAN首脳が討議することが期待されている。
17.同首相は、カンボジア新政府の最優先課題は貧困削減であり、その達成に向けて経済改革アジェンダ「成長・雇用・公平・効率のための四正面戦略」が始動したことを指摘した。同首相はまた、AIPO総会は貧困削減への取組みにも寄与すると述べた。同首相は、テロ、紛争防止、感染性疾患対策協力等、地域が直面するその他の課題についても言及した。同首相は、ASEAN加盟国政府はASEAN加盟国議会との緊密な協力・支援なしには当該課題にタイムリーに対処することはできないと述べた。

AIPO加盟国及び特別オブザーバー国の国家元首及び政府首脳からの書面によるメッセージ

18.総会は、下記の国家元首及び政府首脳からの書面によるメッセージを歓迎し、感謝した。

  • 1.メガワティ・スカルノプトゥリ・インドネシア共和国大統領
  • 2.カムタイ・シーパンドーン・ラオス人民民主共和国大統領
  • 3.ダトゥック・スリ・アブドゥラ・アマッド・バダウィ・マレーシア首相
  • 4.グロリア・マカパガル・アロヨ・フィリピン共和国大統領
  • 5.S・R・ナザン・シンガポール共和国大統領
  • 6.タクシン・シナワット・タイ王国首相
  • 7.チャン・ドゥック・ルオン・ベトナム社会主義共和国国家元首
  • 8.ハサナル・ボルキア・ブルネイ・ダルサラーム国国王
  • 9.タン・シュエ・ミャンマー連邦国家平和開発評議会議長

代表団

19.各代表団の団長は、下記のとおりである。

  • a.サムデック・ヘン・サムリン・カンボジア王国国民議会第一副議長
  • b.A・ムハイミン・イスカンダル・インドネシア共和国国会副議長
  • c.サマーン・ヴィニャケート・ラオス人民民主共和国国民会議議長
  • d.タン・スリ・ダトゥク・セリ・アブドゥル・ハミド・パワンテー博士マレーシア上院議長
  • e.ホセ・デ・ヴェネシア・フィリピン共和国下院議長
  • f.アブドゥラ・タルムジ・シンガポール共和国国会議長
  • g.ウタイ・ピムチャイチョン・タイ王国国民議会議長
  • h.グエン・ヴァン・アン・ベトナム社会主義共和国国民議会議長


20.また、特別オブザーバー国として代表団が参加したのは、ペンギラン・ジャヤ・インデラ・ペンギラン・ハジ・モクタル・プテー氏を団長とするブルネイ・ダルサラーム国及びウ・アウン・トー氏を団長とするミャンマー連邦であり、オブザーバー国として代表団が参加したのは、リザ・フィリペット女史を団長とするオーストラリア、ブライオン・ウィルファート議員を団長とするカナダ、ワン・インファン議員を代表とする中華人民共和国、ハルトムート・ナサウアー議員を団長とする欧州議会、山東昭子議員を団長とする日本、チュン・ユインヨン議員を団長とする韓国、リチャード・ワース議員を団長とするニュージーランド、エキス・ロペヌ議員を団長とするパプアニューギニア、ユーリ・ゲルマノヴィッチ・メドヴェディエフ議員を団長とするロシア連邦である。また、ヤコブ・フェルナンデス氏を団長とする東チモールの特別ゲスト代表団も参加し、さらにウィルフレド・V・ヴィラコルタASEAN事務次長及びアンダース・B・ジョンソンIPU事務総長も来賓として出席した。

総会副議長

21.総会において、AIPO加盟各国の団長が副議長に選出された。

代表団団長の発言

22.総会の第1回全体会議において、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム、ブルネイ及びミャンマーの各代表団長が発言した。

カンボジア
23.サムデック・ヘン・サムリン団長は、IPU事務総長及びASEAN事務次長に対しAIPO、ASEAN及びIPUの関係の緊密化を推進したことに感謝の意を表明した。
24.同団長は、カンボジア代表団は委員会会合における討議に向けていくつかの議題を準備してきたと述べた。当該議題には、ASEAN安全保障共同体、技術・情報の協調的交流による農業生産性の改善、最悪の形態の児童労働の撲滅、HIV/エイズの蔓延抑制、医療へのアクセスの拡充が含まれていた。また同氏は、AIPOが強化され、ブルネイが自国議会を設立することを期待すると表明した。
25.同団長は、エネルギー安全保障問題が重大な関心事であるとし、カンボジアはG8諸国及びOPECに対し、原油を増産し持続可能な原油価格を確保するための措置を講じるよう要求すると述べた。

インドネシア
26.ムハイミン・イスカンダル・インドネシア代表団長は、ASEANが年齢を重ねるに従い、対外志向的パラダイム導入への新たな要請が出てきたと述べた。したがって、ASEANという地域機構は、これまでのような官僚主義的な体質から脱却し、域内の全人民にとって身近で十分な成果をもたらす存在になるべきである。そのため、AIPOは、ASEANの実績・地位を高めるためのあらゆる取組みを支援せねばならない。同団長は、ASEANを域内の住民により多くの実りをもたらす身近な組織にしていくために、ASEAN共同体の設立に併せて、新たな制度的枠組みを導入する必要があると述べた。
27.さらに同団長は、東南アジアにおいて台頭している安全保障上の脅威・課題に対応するため、AIPOはASEANを独立した地域組織として強化する必要があると述べた。このような取組みの狙いは、東南アジアにおける地域的安全保障ブロックの形成とは別に、加盟国に対し域内の安全保障上の脅威・課題に自信を持って立ち向かうことを動機づけることである。これによってAIPO及びASEAN加盟国は、域内への外国の介入・軍事的プレゼンスを防止することができる。したがって、ASEAN安全保障共同体の設立は全AIPO加盟国によって支持されるべきである。
28.さらに注目すべき発言として、同団長はAIPO及びASEANに対し、交渉能力の強化に向けて公正な世界経済システムの構築を支持するよう強く要求した。一方、木材・砂糖・米取引や女性・児童の人身売買等、不法な事例が急増しており、AIPO加盟国相互間の良好な関係に悪影響を及ぼしかねないだけに、直ちに対処されなければならない。

ラオス人民民主共和国
29.サマーン・ヴィニャケート・ラオス代表団長は、インドネシアのジャカルタにおいて開催された第37回ASEAN外相会議(AMM)の成果を高く評価すると述べた。同団長は、同会議が完全統合されたASEAN及び最終的にはASEAN共同体の創造に向けた取組みに重点が置かれたと述べた。同団長はその他の成果として、ビエンチャン行動計画(VAP)拡大による「ASEANビジョン2020」履行の決定、及び2020年までのASEAN共同体設立の決定を指摘した。同団長は、これらの取組みが域内の連帯・調和・相互理解の促進・拡充に役立つだろうと述べた。
30.同団長は、第25回AIPO総会審議対象として用意された各種議題は、現実の状況及び新時代のニーズに対応したものであり、ASEANの基本原則にも合致しているとの見解を表明した。同団長は、当該議題には、個々の国における政治的安定・経済成長・社会的発展の問題が含まれると述べた。
31.同団長は、ラオスが2004年後半に第10回ASEAN首脳会議を主催すること、また、2005年9月4日から9日まで第26回AIPO総会を開催することを伝えた。同団長はラオス代表団を代表して、これらの会合が輝かしい成功を収められるよう、各国元首・政府首脳・ASEAN加盟国議会議長が手厚く協力・支援してくれていることに対し、謝意を表明した。

マレーシア
32.タン・スリ・ダトゥク・セリ・アブドゥル・ハミド・パワンテー博士マレーシア代表団長は、カンボジアの歓待に対して丁重に感謝の辞を述べた。同団長は、インドネシア代表団に対し、9月9日のジャカルタ爆弾テロによる人命の損失と破壊に関して同情・痛憤・当惑の意を表明した。
33.同団長は、国民を代表する立法者として我々ASEAN議員が、バリ合意Ⅱ、及びASEANの枠組み内の各種イニシアティブ・機関に支えられたASEANの目標・希求に大いに寄与するマンデート及び感性を有していることを強調した。
34.同団長は、AIPOが住民に影響を及ぼす考え方を討議するASEANフォーラムとして機能していると主張した。それはASEANの精神性とは異質な主義主張やASEAN規範排斥思想を普及せんとする者を排除することになるかもしれない。同団長は、グローバリゼーションの到来や欧州連合成立などの出来事が、AIPOにとってASEAN政治連合体の容認可能性を現実的に評価する契機となったと強調した。

フィリピン
35.ホセ・デ・ヴェネシア・フィリピン代表団長は、ASEAN議会設立に関するフィリピン代表団の提案について説明した。同団長は、AIPOを、統一された東南アジア共同体の立法府としてのASEAN議会に改編する構想が、1980年ジャカルタでの第3回AIPO総会当時、すでに議題に上がっていたとはいえ、AIPOは優柔不断の障壁を未だ克服できないでいると強調した。同団長は、加盟国間の経済的相互依存関係を管理・監督するという実際的なニーズをこれ以上無視し続けることはできないと述べた。また、同団長は、ASEAN大学を設立するというタイ代表団の提案を支持すると表明した。
36.同団長は、フィリピンの二番目の提案であるASEAN貧困対策基金の設立に言及して、東南アジア開発は誰も置き去りにせず進められるべきだとの信念に基づいて当該基金が構想されていると述べた。同団長は、基金は慈善事業ではなく、またASEAN地域の困窮者に施しを行う代わりに、域内都市・農村のスラム街に住む起業家精神のある貧困層への融資の一助を担うことになると強調した。
37.さらに同団長は、低所得起業家向け金融サービスが、域内の貧困を削減し、広域的開発を誘発する唯一かつ最も実効的な手段かもしれないと述べた。最後に同団長は、AIPOが周辺世界の出来事の奔流に呑まれて、その存在意義を消失するのを避けるために前進すべき時が来ていると指摘した。

シンガポール
38.アブドゥラ・タルムジ・シンガポール代表団長は、ASEAN加盟各国はここ数年の試練・難局から徐々に脱しつつあるものの、それで事足りるとすべきではないと警告した。同団長は、世界的生産拠点としてのASEANの魅力を大幅に伸ばすための域内経済統合の深化・加速を奨励した。さらに同団長は、まさに欧州経済共同体と同様、経済統合はASEANの交渉能力・地政学的影響力の拡大につながると述べた。
39.同団長は総会に対し、ASEANがイスラム教徒・非イスラム教徒、民間人・戦闘員を無差別テロ攻撃するグローバルな敵と戦っていることを指摘した。同団長は、冷戦がベルリンの壁崩壊まで世界情勢を規定したように、テロとの闘いが21世紀の世界を形づくることになると述べた。
40.同団長は、ASEANの対外志向的戦略がASEANの安全保障・福利に貢献したと述べた。同団長は、ASEANは対話パートナーから計り知れない技術・開発援助を受けることができたと指摘した。同団長は、ASEM、ARF、ASEAN+3等、ASEAN主導の会合ネットワークが、ASEANの国際的地位を増強したと述べた。同団長は、ASEANは不断のテロの脅威等、国境を越える問題に取り組み、ARF等のメカニズムを通じた域内の潜在的な紛争発生地の緊張緩和に向けて平和的な解決策を模索・発見するために、今後も多国間協力を通じて各国・各地域と提携していくだろうと述べた。

タイ
41.ウタイ・ピムチャイチョン・タイ代表団長は、AIPO加盟国議会、AIPO特別オブザーバー・オブザーバー諸国にとって、総会は極めて重要なイベントであると述べた。同団長は、ASEANの平和・安定・繁栄がAIPOの最終目標であり、AIPOは当該目標を達成するためにその資源をプールし、ASEAN内外のAIPOパートナーとともに当該目標を一層推進すべきであると強調した。同団長は、特にエネルギー分野におけるASEAN協力によって、域内のエネルギー需要に応え、原油価格高騰に由来する問題を緩和することを要求した。
42.同団長は、2004年1月にラオスのビエンチャンで開催されたASEAN大学設立に関するAIPO調査委員会の取組みを賞賛した。同団長は、ASEAN大学は、ASEAN共同体成立の鍵を握っており、域内の人々の可能性を広げ、域内開発に貢献し、ASEAN諸国における教育水準を向上させ、将来のASEAN首脳を育成するとともに、ASEANの域内連帯に対する自覚を高めることになることを確信していると述べた。同団長は、参加各国代表団に対しこのAIPO計画を真剣に検討するよう求めた。
43.同団長は、タイが2004年に三つの国際会合を開催したことを伝えた。まず2004年5月にバンコクで情報・技術議会間機構第2回総会(IPATTⅡ)が開催された。同会合では、議会向けの情報技術関連立法政策・予算指針が提示された。二つ目の国際イベントは、国連との共催で行われたエイズ国際会議だった。同団長は各国政府・議会・国際機関に対し、万人のための効果的エイズ予防・治療政策・立法措置を推進するよう要求した。三つ目の国際イベントは、南アジアと東南アジアとの国際協力に焦点を当てた第1回BIMSTEC(バングラデシュ・インド・スリランカ・タイ経済協力)首脳会議だった。同団長は、AIPOが将来BIMSTEC加盟国議会と直接的な接触を持てるようになることを切望した。同団長は、上記国際会合は国際的・地域的提携拡大の重要な兆候であると述べた。同団長は、AIPOがASEAN加盟国間及び多様な地域間の意見交換並びに提携を推進すべきだと強調した。

ベトナム
44.グエン・ヴァン・アン・ベトナム代表団長は、総会参加者に対し熱烈な挨拶を贈り、友邦であるカンボジアに対し2003年の総選挙を経て新たな議会・政府が成立したことに祝意を表した。
45.同団長は、世界の政治情勢が一層複雑化し、グローバルな競争が激化し、原油等の価格が変動するなかで、東南アジア諸国がかなりの成長を見せ、全体として安定を保ってきたと指摘した。同団長は、ASEANが東アジア統合プロセスの最大の原動力となっていると述べ、安全保障・経済・文化の三本柱に基づくASEAN共同体の構築に向けてAIPOが実施すべき主要施策に言及した。同団長は、テロ及び国境を越える犯罪という執拗な世界的課題に触れ、インドネシア、そして特にロシアにおける最近のテロ行為を非難した。
46.同団長は、AIPOには域内統合において効果的な役割を果たす義務があることを強調した。同団長は、AIPOはグローバルな問題の解決に向けての国際平和・安全・協力の促進に貢献できること、AIPOは戦争・紛争の防止、テロ・パワーポリティックス・強制に対する対抗を支援できること、AIPOは多様性の中でまとまりを持った共同体を生み出すためにASEAN加盟国間の相互理解を高めることができることを強調した。同団長は、AIPOが国際法・国連憲章に基づいて国際関係を構築し、国連等の多国間機関を支えるよう力を注がなければならないと強調した。
47.同団長は、AIPO加盟国議会は、HIV/エイズ・鳥インフルエンザ・SARS等、ASEANの持続可能な開発の脅威となっている疾病に対する対策の支援に必要な法的枠組みを整備することができると指摘した。最後に同団長は、ベトナムはAIPOを最重要フォーラムと見なし、議会間協力に最も重点を置いていると述べた。

ブルネイ
48.ペンギラン・ジャヤ・インデラ・ペンギラン・ハジ・モクタル・プテー・ブルネイ代表団長は、1990年代末期の金融危機以来ASEAN地域には前向きな展開が見られたものの、未だ解決すべき課題も多いと述べた。同団長は、テロはASEANが対処すべき問題であるが、その他にも、鳥インフルエンザや、企業マインド及び一般の人々の信頼感に打撃を与え続けているアフガニスタン・イラク・パレスチナにおける武力紛争等の課題が存在すると述べた。
49.同団長は総会出席者に対し、ASEAN諸国首脳が、経済運営・地域統合の重要性を強調した上で物品、サービス、投資及び資本、熟練労働者が自由に移動・流通する単一市場・生産地帯の創設を目指すASEAN経済共同体設立決議を採択したことを指摘した。
50.同団長は、ASEANが、対話パートナー及び他の国際機関と同様、国境を越える犯罪との闘いにおける国際的法執行協力の重要性を十分認識していること、そして当該協力が、平和・安定促進への更なる貢献を果たす上で、重要な基礎となっていることを指摘した。同団長は、ASEAN加盟国法執行機関の間で能力強化・交流を増進することになる二国間及び多国間レベルの取組みを歓迎した。同団長は、ブルネイが月末に首都バンダルスリベガワンにおいて国境を越える犯罪に関する関係各国政府高官会議を主催することを総会に伝えた。

ミャンマー連邦
51.ウ・アウン・トー・ミャンマー代表団長は、ミャンマーでは平和で近代的な、発展した民主国家になるための7段階からなるロードマップが作成されており、その最も重要な一歩として国民会議が再招集され、同会議において代議員たちが中央・州・地域間の立法権の分有について討議したと述べた。同団長は、政府はその一方で近代的で発展した、規律ある新民主国家を創出するための確固たる政治的・経済的・社会的基盤を整備しつつあると述べた。
52.同団長は、ミャンマーは麻薬撲滅やインフラ整備特別プロジェクト等、複数のプロジェクトを実施することにより経済基盤の強化に努めていると述べた。同団長は、農村部を含め国内全域で学習機会を提供するために高等教育機関数を増やすことにより、ミャンマーの人材が育成されつつあると述べた。
53.また同団長は、ミャンマーは地球家族の一員としての国際的・地域的義務を全うすることにより、全世界の国々との協力を拡充していること、ミャンマーはASEANに加盟して以来、安全保障・経済・開発分野に積極的に参画していること、さらにはカンボジア・ラオス・ミャンマー・タイ・ベトナム相互間経済協力戦略実施及び拡大メコン圏協力プログラムにも関与していることを指摘した。
54.同団長は、民主化に向けたロードマップの実施に理解と支援を寄せているミャンマーのASEAN友邦に謝意を表した。

委員会会合

政治問題
2004年6月第37回ASEAN外相会議に関する報告(インドネシア代表団提出)
55.総会は、「ASEANの完全統合実現に向けて―繁栄し、思いやりのある、平和に満ちた共同体」を最大のテーマとした第37回ASEAN外相会議(2004年6月)に関するインドネシア代表団提出報告に謝意をもって留意した。第37回ASEAN外相会議に関する報告の主要項目は、ASEANの地域的枠組み、ASEANと対話パートナーの関係、ASEAN地域フォーラム、さらには政治・安全保障協力、機能面の協力、対外関係、国際・地域問題、制度的問題だった。

第3回アジア欧州議員会議(ASEPⅢ)に関する報告(ベトナム代表団提出)
56.総会は、ASEPⅢの開催を契機にアジア欧州議員協力が安定した枠組みの下に発展することを確信した。総会は、上記報告を承認し、続いて、加盟国が新たに13か国加わった拡大ASEMへの支持を表明し、ASEMⅤ開催国ベトナムが果たしている効果的な役割に対する総会の謝意を記録した。

ASEAN安全保障共同体
57.総会は、ASEAN安全保障共同体行動計画がASEAN共同体の樹立に大いに貢献することになることを確信し、ASEAN安全保障共同体行動計画の履行がASEANの集団的・個別的利益をさらに増進し、結果としてASEANを平和・安定・安全・繁栄の地域にすると確信した。
58.総会は、ASEAN加盟国に対し、ASEAN地域の平和・安定・安全を一層推進するため、ASEAN安全保障共同体行動計画がASEAN首脳により採択され次第、一刻も早く同計画を履行するよう要求した。また、参加各国代表は、政府・市民社会を含むあらゆるレベルの多様な分野の利害関係者に対し、ASEAN安全保障共同体行動計画の最もタイムリーかつ実効的な履行に貢献するよう奨励した。

エネルギー安全保障
59.総会は、行動規範に関する声明(DOC)の趣旨を踏まえた南シナ海問題の解決を含むエネルギー安全保障の重要性の高まり、及び2004年初からの世界的な原油価格の急激な高騰により国内・地域・世界経済、とりわけ後発発展途上国にマイナスの経済的・社会的影響が及んでいる潜在的エネルギー危機を認識するとともに、ASEAN域内におけるエネルギー輸送ルートの安全性確保の必要性を強調した。
60.総会は、G8その他の地域・国際機関に対し、エネルギー安全保障を真剣に考慮し、世界的な原油価格高騰に対する適切な対策を講じるよう要求した。総会は、ASEANが将来の石油ショックを防止し域外の石油への依存度を抑制できるようにするために、ASEAN独自のエネルギー備蓄を確保するとともに、植物から生産される燃料エネルギー源であるバイオエネルギー生産技術を開発することを提案した。

経済問題
技術移転による新規加盟国の農業生産の増強
61.総会は、先進ASEAN加盟国に対し、科学協力、人材育成、農業生産に関する知識・近代的技術へのアクセス・交流改善を通じて新規加盟国の農業部門生産性拡大を支援するよう奨励した。また総会は、すべての加盟国に対し、農業技術の研究開発を行うための国家予算を計上又は増加させることを奨励した。

経済成長を促すための文化ツーリズム及びエコツーリズムの推進
62.総会は、加盟国に対し、ASEANを世界的なスタンダード・施設・アトラクションを有する単一の観光目的地として開発・推進することによって、第2ASEAN協和宣言に基づき2010年までに観光面での統合を進めるよう強く要求した。
63.総会は、ASEAN域内における文化ツーリズム及びエコツーリズムを推進する手段を調査するための臨時委員会を設置し、当該推進に向けての資金を提供することを決議した。

社会問題
ASEAN大学
64.総会は、ASEAN大学設立を検討する第一歩としてASEAN大学ネットワークの成果と潜在能力に関する徹底的な評価を実施するため、2004年1月にラオスのビエンチャンにおいて開催されたASEAN大学設立に関するAIPO調査委員会会合で採択された報告をASEAN首脳会議に提出するとともに、今後の進展に関してAIPOに逐次報告するよう勧告した。

麻薬の脅威と闘うためのAIPO事実調査委員会
65.総会は、ASEAN加盟国に対し、とりわけ全ASEAN加盟国による犯罪人引渡条約の締結、麻薬犯罪者に対する一貫した厳しい罰則の設定、犯罪防止・治療・更生に関する最良の慣行・方法の共有を奨励することによって、麻薬取引、女性及び児童の人身売買、マネーロンダリングその他の犯罪を含む国境を越える犯罪と闘うための域内の法制・法執行面の協力体制を強化するよう強く要求した。
66.総会は、ASODに対し、AIFOCOM代表をASOD会議にオブザーバーとして招請することによって今後も双方の協力関係を円滑にする上で積極的な役割を演じること、また麻薬の災禍と闘うために域内議会、政府、関連NGO相互間の共同の取組みを確立することを要求した。

農村部と都市部の住民間に存在する経済格差の是正
67.総会は、ASEAN加盟各国に対し、農村部から都市部への人口移動の影響を斟酌し、農村住民のための宿泊施設、教育・医療等の基本的インフラ・サービスへのアクセス、十分な雇用・収入などに特に配慮した、強力な都市管理運営システムを構築するよう強く要求した。
68.総会は、国際機関に対し、農村部住民が生産性を高め収入を増やすべく中小企業を起こすのを支援するために、農村部住民に先端科学技術を移転するよう強く要求した。

最悪の形態の児童労働の防止と撲滅
69.総会は、ASEAN加盟各国に対し、児童の権利・労働権の保護を目的とした国内法制度の強化・執行を通じて、児童を危険や性的搾取を伴う仕事から救出するために即時かつ包括的な協調行動をとるとともに、国際的な児童労働基準を採用し、児童の福利・モラルの向上及び児童の将来の可能性拡大のための基本的教育・経済・社会資源へのアクセスを提供するよう強く要求した。
70.総会は、加盟国に対し、児童を最悪の形態の労働に従事させている可能性の極めて高い産業に関する情報を共有し、また搾取された児童を人道ビザにより速やかに家族・故国に帰還させるよう努めるよう提案した。

HIV/エイズ蔓延の抑制と医療へのアクセスの拡大
71.総会は、すべてのASEAN加盟国政府に対し、非定住共同体・移民労働者・性的労働者・児童を含む貧困層及び社会的弱者グループがHIV/エイズ予防システム・治療計画についての情報に十分アクセスできるよう、国内HIV/エイズ計画を見直すよう強く要求した。
72.また総会は、ASEAN加盟国政府に対し、ASEAN各国内の全HIV陽性者が抗レトロウィルス治療薬を利用できるようにした共通の最低治療基準を定めたプロトコルを策定するよう勧告した。

ASEAN貧困対策基金設立
73.総会は、ASEAN首脳会議に対し、第24回総会において最終決議として承認されたASEAN貧困対策基金設立に関する調査委員会報告を検討するよう強く要求した。

組織問題
2003~2004年会計年度事務総長報告
74.総会は、2003~2004年会計年度ASEAN議員機構(AIPO)事務総長報告を承認した。

2003年7月1日~2003年9月30日、2002年10月1日~2003年9月30日(2002~2003年度)、2003年10月1日~2004年9月30日の各期間のAIPO事務局財政報告
75.総会は、AIPO事務局の(a)2003年7月1日~2003年9月30日、(b)2002年10月1日~2003年9月30日(2002~2003年会計年度)、(c)2003年10月1日~2004年6月30日の各期間の監査済み年次財政報告、2004年7月1日から9月30日までの未監査財政報告及び2004年6月30日時点の貸借対照表を承認した。
76.総会は、AIPOの利益を図るため、今後開催国がより金利の有利な、信頼できる銀行に預金することを検討するよう勧告した。

2004~2005年度(2004年10月1日~2005年9月30日)AIPO事務局予算案
77.総会は、2004年10月1日~2005年9月30日の期間の上記AIPO事務局予算案に計上された見積り支出額12万1,738.45米ドルを承認した。また総会は、AIPO預金口座からAIPO議長が指定する適当な銀行の定期預金口座に10万米ドルを振り替えることを承認した。さらに総会は、AIPO事務局に対し、AIPO加盟国がAIPOの支出をより良く監視できるようにするため、透明で、より明確かつ詳細な年次財政報告が作成される必要があることを指摘した。

第5回AIPO代表団中国訪問(2004年)に関する決議
78.総会は、2004年6月20日から6月25日に実施された第5回AIPO代表団中華人民共和国公式訪問が成功を収めたことに留意し、第5回AIPO代表団中国訪問(2004年)に関する決議案を承認した。

AIPO運営剰余資金を麻薬の脅威と闘うためのAIPO事実調査委員会(AIFOCOM)第4回会合開催経費の一部に充当する要請に関する決議
79.総会は、AIPO運営剰余資金を麻薬の脅威と闘うためのAIFOCOM第4回会合開催経費の一部に充当してほしいというラオスの要請に関する決議案を承認した。

ASEAN議会設立可能性
80.総会は、調査委員会によって練り上げられ、次回AIPO総会に提出される予定の明確なマンデートを持ち、全AIPO加盟国及び特別オブザーバー諸国の代表によって構成されるASEAN議会の設立可能性に関する調査委員会の設置を決議した。
81.総会は、ASEAN議会設立の可能性を検討する第1回調査委員会会合を次回総会に先立って開催するというタイの申し入れを歓迎する。同会合では、当該調査委員会の任務が策定され、同会合の成果は次回総会に提出されるものとする。

2004年のブルネイ政府のAIPOへの1万米ドルの寄付に対する謝意表明
82.総会は、2004年のブルネイ政府のAIPOへの1万米ドルの寄付に対して感謝の意を表明した。

AIPO議長サムデック・クロム・プレア・ノロドム・ラナリット殿下の貢献に対する謝意
83.総会は、サムデック・クロム・プレア・ノロドム・ラナリット殿下のAIPO議長としての任期が第25回AIPO総会の閉会時に終了することに留意した。総会は、殿下の貢献に対し心から感謝の意を表明した。

AIPOチャン・ヴェン事務総長の貢献に対する謝意
84.総会は、チャン・ヴェン氏のAIPO事務総長としての任期が第25回AIPO総会の閉会時に終了することに留意した。総会は、同議員の貢献に対し心から感謝の意を表明した。

第26回AIPO総会の開催期日及び開催地
85.総会は、第26回AIPO総会を2005年9月4日から9日まで、ラオスのビエンチャンで開催することを決議した。

AIPO女性議員会議(WAIPO)
男女平等に関する基調講演者との対話 カンボジアにおける成果と課題
86.イン・カンタ・パヴィ・カンボジア王国政府女性問題担当大臣は、AIPO女性議員会議での基調講演において、同国首相がカンボジア女性の役割・社会的地位の向上に努める女性問題担当省の指針となる5か年計画「成長・雇用・公平・効率のための四正面戦略」を発表したと述べた。同戦略は、女性が「カンボジアの経済・社会の柱」であると認め、同国政府は女性の役割・社会的地位の向上に高い優先順位を与えていると明示している。
87.また、同大臣は、女性問題担当省が現在、国内政策・プログラムの策定におけるジェンダー主流化、及びあらゆる形態の暴力・人身売買からの女性・女子の法的保護により一層重点を置いており、リプロダクティブ・ヘルス等の女性の保健問題対策、HIV/エイズとの闘い、及び女性・児童の健康を改善するための栄養摂取の向上が同省の主要目標となっていると述べた。
88.同大臣は、対女性暴力・人身売買が域内で拡大していると指摘した。女性問題担当省は、防止計画の実施等、関連活動を盛り込んだ家庭内暴力対策法案を策定した。また、女性問題担当省は、域内人身売買防止を主眼とした国際的なプログラム、及び域内各国との了解覚書の策定・履行にも参画している。

生活改善及び男女平等推進による女性の経済的安全保障の強化
89.総会は、域内の継続的成長及び経済的安全保障は、女性の生活改善を目指した域内・各国政府調整行動をとり、男女平等を促進するか否かにかかっているとする点で意見が一致した。総会は、加盟各国に対し、男女が医療、教育、経済的資源・サービス、法的権利・保護を平等に受ける権利を保持し確保するための国内法規を制定・執行し、関連国際条約に加入又は批准するよう奨励した。

90.総会は、中小企業を起業した女性と、当該女性とは異なる国において同様の事業を経営する際に要求される責務全般に関して指導・訓練を求める女性とを結びつけるプログラムである女性起業家交流ユニットをASEAN大学ネットワーク内に設立することを提案した。

ASEAN域内の女性及び児童の人身売買との闘いにおける議会の役割
91.総会は、上記の国境を越える問題との闘いにおける議会の役割について合意した。人身売買に対する闘いは地域レベルで取り組まねばならないことは明白である。したがって総会は、加盟国国会議員に対し、女性・未成年の人身売買防止を目指すコミットメントを強化するよう呼び掛けた。加盟国国会議員は監視役を務め、調査を実施し、国内・地域レベルで必要な法制改革に着手すべきである。
92.総会は、各国議会に対し、女性・未成年者の人身売買との闘いを監視し、次回AIPO総会で自らの活動状況を報告するASEAN女性ワーキング・グループの設置を検討するよう要求した。
93.総会は、各委員会の審議・報告・意見書に対し感謝の意を表明した。すべての委員会調査報告書が公式文書として認められた。

オブザーバー国との対話

94.AIPO対話委員会は、オブザーバー国9か国(オーストラリア、カナダ、中国、欧州議会、日本、韓国、ニュージーランド、パプアニューギニア及びロシア)と個別に討議を行った。5項目の議題が討議された。

  • (ア)地域安全保障問題
  • (イ)地域経済・貿易問題
  • (ウ)持続可能な開発の必須資源としての自然環境
  • (エ)情報・技術協力
  • (オ)意思決定過程への女性の参加に関する意見交換

第26回AIPO総会

95.総会は、2005年9月4日から9月9日までラオスのビエンチャンで第26回AIPO総会を開催するというラオス人民民主共和国国民議会の丁重な申し入れを受け入れた。

開催国への謝意

96.総会に参加した代表団は、カンボジア王国議会、カンボジア政府及びカンボジア国民に対し、第25回AIPO総会に際しての温かい歓待及び周到な準備について心からの謝意を表明した。

ASEAN精神

97.第25回AIPO総会は、コンセンサスの理念に従って、友好、親交及び協力という伝統的なASEAN精神の下に開催された。