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第13回アジア・太平洋議員フォーラム(APPF)総会派遣報告

 第13回アジア・太平洋議員フォーラム(APPF)総会は、22か国及びオブザーバー国(ブルネイ)から120名の代表及び154名の同行者が参加して、平成17年1月9日(日)から13日(木)までの5日間、ベトナムのハノイ及びハロン市で開催された。
 本代表団は、衆議院から派遣された代表団、非公式参加の中曽根弘文参議院議員とともに日本国会代表団を結成し、互選により団長に亀井静香衆議院議員、副団長に松田岩夫参議院議員を選出した。なお、中曽根康弘APPF名誉会長・前衆議院議員、柿澤弘治前衆議院議員が日本代表団のメンバーとして参加した。
 日本代表団は、事前に8本の決議案を提出し、さらに本会議での積極的な発言や起草委員会での決議等の案文調整への参画等を通じ、会議の成功に大きく貢献した。また、会議期間中、グエン・ヴァン・アン・ベトナム国会議長(第13回APPF総会議長)、チャン・ドゥック・ルオン・ベトナム国家主席との会見、インドネシア代表団との二国間協議、北東アジア(日本、韓国、中国、ロシア及びモンゴル)代表による執行委員選出の協議等の活動も行った。
 本報告書は、日本代表団の会議での発言を中心に会議の概要を報告するものであり、詳細は別途印刷配付される「第13回アジア・太平洋議員フォーラム(APPF)総会概要」を参照願いたい。

(1)執行委員会

 執行委員会は、9日(日)午後8時40分から、ハノイのダイウ・ホテル内のアイリス・ルームで開催され、アン・ベトナム国会議長、日本(松田副団長、柳本卓治衆議院議員、柿澤前衆議院議員)、カナダ、チリ、中国、フィジー、ニュージーランド、インドネシア及びマレーシアの執行委員国8か国の代表とベトナムの代表が出席した。
 アン議長の開会挨拶、ヴー・マオ・ベトナム国会対外委員会委員長(第13回総会共同議長)の紹介、各国の自己紹介の後、参加国数、決議案の提出状況等について報告があった。
 各国が提出した決議案の調整は、起草委員会で行うこととし、ゴー・アイン・ズン・ベトナム国会対外委員会副委員長が委員長に任命され、全参加国から一、二名が出席することになった。
 開会式の冒頭で昨年末に発生したスマトラ島沖大地震及び津波災害の犠牲者に黙祷を捧げるとともに、本会議に先立ち本件について1時間以内の特別セッションを開催することになった。
 APPFへの北朝鮮招請問題の協議では、各国が招請に賛成の態度を示したが、日本代表団は、北朝鮮が拉致問題や核問題に対し不誠実な対応に終始する現状での招請に反対し、今後次期議長国と執行委員各国とで協議することになった。
 第14回総会主催国については、インドネシアの開催申し出が承認された。

(2)開会式

 参加者は10日(月)午前中にハロン市に移動し、午後3時から開会式が市内のクアンニン・コンベンション・センターで開催された。アン議長の開会の辞の後、中曽根名誉会長が挨拶し、文化や価値観の相違を超え、多元的な世界に生きつつも、新しい太平洋の平和と繁栄を求めるとの理念で一致し、努力し合う組織としてAPPFが存在しており、今後ともお役に立ちたいと述べた。引き続き、顧秀蓮・中国全国人民代表大会常務委員会副委員長及び地元クアンニン省のグエン・ヴァン・クイン同省人民評議会議長が挨拶を行った。

(3)地震・津波災害に関する特別セッション

 11日(火)午後8時40分から、ハロン・ドリーム・ホテル内タンロン・ルームにおいて、特別セッションが開会された。
 インドネシアからASEAN主催緊急首脳会議の報告とビデオの上映、タイから被害や復興状況の報告があり、両国は支援への謝意を表明した。
 柳本衆議院議員は、決議案の趣旨説明を行い、今次の災害による被害は第二次世界大戦後最大のものであり、被災国の復旧復興は国際社会、特にアジア太平洋地域の未来にとり重要な課題と強調した上で、国連の主導の下に復旧復興に各国が最大限の努力を続けること、APPFとして災害の問題に引き続き関与することの必要性を強調した。また、我が国の知見や技術を積極的に提供することを表明するとともに太平洋地域の津波予報のネットワークと同様の仕組みをインド洋地域でも構築することの必要性を訴えた。
 本件については緊急を要するため、別途共同決議案を提出したインドネシア、ベトナム両国と日本であらかじめ一本化した決議案文がこのセッションに上程され、修正の上採択された。

(4)本会議

 特別セッションに引き続き第1回本会議が開かれた。本会議は、13日(木)午後5時20分までの間に計5回開会された。

1 政治と安全保障問題

 イ 国際テロリズム
 松田副団長は、決議案の趣旨説明を行い、テロに対し、国際連合憲章に従いあらゆる手段を用いて闘う必要があり、テロ防止関連諸条約の有効性と重要性、国際金融システムへのテロリスト等の接近の阻止、テロリスト・ネットワークに対する資金の流れの遮断の必要性を確認した上で、すべての国がテロ対処能力の向上を図りその根絶を模索し続けることが重要であると強調した。さらに、テロをいかなる人種、文化及び宗教とも結び付けるべきではなく、またテロ対抗措置は、常に国際法及び国際正義を支配する普遍的な原則と一致しなければならないと訴えた。
 本決議案は、オーストラリア、ロシア及びベトナムの決議案と一本化し採択されることになった。

 ロ 朝鮮半島情勢
 西村真悟衆議院議員は、決議案の趣旨説明を行い、北朝鮮による日本人拉致問題は非人道的な許し難い行為であり、北朝鮮は日朝平壌宣言を含めた一連のコミットメントに基づき具体的な行動をとる必要があるとして、信頼のおける国際的な検証の下でのすべての核の完全な廃棄、配備済み弾道ミサイルの廃棄、ミサイルの開発、実験、輸出の停止等の具体的な措置、生物・化学兵器等大量破壊兵器の開発活動への国際社会の懸念を解消するための行動、北朝鮮の核開発問題の平和的解決に向けた六者会合プロセスの継続及び発展等を求めた。さらに、拉致被害者の遺骨として提供されたものが別人のものである等北朝鮮が拉致問題に不誠実な対応に終始しているのに対し、地域全体が団結し、拉致を断固許さない姿勢を示すことの必要性を強調した。
 本件については日本と韓国が決議案を提出しており、両国に米国、中国を加えて協議を行った。日本の強い主張の結果、拉致問題が「関係国の二国間関係に影響を及ぼす問題」との間接的表現ながら決議案の前文に組み込まれたほか、共同コミュニケに「拉致」の文言が明記され、拉致問題が付属文書として盛り込まれることになった。
 なお、日本代表団として拉致問題の重要性を訴えるため第11回及び第12回総会に引き続き関係資料を配付した。

 ハ 中東和平プロセス
 柳本衆議院議員は、決議案の趣旨説明を行い、アラファト議長の死去後、パレスチナ側が円滑に権限を移行し、暫定自治政府長官選挙を成功裡に実施し、新指導部に民主的正統性を付与する努力をしたこと、イスラエル側がパレスチナ側に協力的であることは極めて歓迎すべきとした上で、暴力の連鎖の停止や両者の和平努力の強力な推進とAPPF加盟国の協力の重要性を強調した。
 本決議案は、単独の決議案として修正の上採択されることになった。

2 経済及び貿易問題
 イ アジア太平洋経済協力(APEC)
 チリより、昨年11月の第12回APECサンティアゴ首脳会議についての報告があった。

 ロ グローバリゼーションと世界貿易機関(WTO)新ラウンド交渉促進のための協力
 枝野幸男衆議院議員は、決議案の趣旨説明を行い、相互依存の進展とグローバリゼーションの深化の中で、世界的な経済成長を維持するには公平で開かれたルールに基づく多角的貿易体制の発展が必要であり、本年12月の香港閣僚会議に向け更なる交渉の進展を望むとともに、途上国の懸念にも配慮しつつ、ドーハ開発アジェンダのすべての分野で実質的交渉を進めるべきであるとの考えを表明した。さらに、通貨・金融市場の安定を達成するため、既存の国際的な制度を補完する地域的な協力の重要性や、域内各国間のFTA交渉等を促進し、これらを基盤にWTOに整合的な形でアジア太平洋地域の経済統合を進める努力をすべきことや知的財産権や投資等のルールの水準引上げの重要性等を強調した。
 本決議案は、単独の決議案として修正の上採択されることになった。

3 関心の高い地域問題への取組におけるアジア太平洋協力
 イ 環境
 内藤参議院議員は、決議案の趣旨説明を行い、近年各地で頻発する地球温暖化の影響と考えられる気候変動及びその悪影響の防止には、先進国、途上国を問わず、すべての国が、差異はあれ共通の責任を負うべきであり、世界の二酸化炭素の半分以上が排出されるアジア太平洋地域での取組が重要であると強調した。その上で、2012年までの先進国の約束を定めた京都議定書の重要性を再確認し、本年2月の発効を歓迎するとともに、すべての国の参加・協力の下、今から「ポスト京都」も視野に対策強化に取り組むべきであるとして、各国の排出状況並びに能力に応じた地球温暖化対策の構築・強化、国家戦略の策定、企業、国民、NGO、行政等のパートナーシップの構築、環境教育等の推進を求めた。また、先進国のODA等の実施にアジア太平洋地域の沿岸部や島しょ諸国、山間部の気候変動への脆弱性に十分に配意すべきことや同地域における温室効果ガス排出量等の情報ネットワークの整備の必要性を訴えた。
 環境問題に関しては、ほかにオーストラリア、メキシコ、チリ、ベトナムが決議案を提出していたが、本決議案は単独の決議案として一部修正の上採択されることになった。

 ロ HIV/エイズ問題及び感染症(鳥インフルエンザ再発生の危険性)
 枝野衆議院議員は、決議案の趣旨説明を行い、新興感染症の多くは、十分な資金と努力によれば発生を防ぐことが可能であり、地域の各国が協力し、人命の損失を一人でも減らす努力を更に進めなければならないと強調した上で、SARSとHIV/エイズとともに鳥インフルエンザの重要性を強調し、東アジアでのHIV感染者が増加する中で、国連エイズ合同計画(UNAIDS)の報告に共同の認識を持つことや、昨年タイでの第15回国際エイズ会議の成果を踏まえた本年7月の第7回アジア太平洋地域エイズ国際会議への積極的な支援を訴えた。また、台湾のWHO準加盟に協力を求めた。
 本決議案については、ベトナム、フィリピンと案文を一本化し採択されることになった。

 ハ 持続可能な開発のための資源(人間の安全保障)
 松田副団長は、決議案の趣旨説明を行い、人間の安全保障は、人間の自由や可能性を高めること等を通じ、人間の生存、生活及び尊厳への脅威に対処する努力を強化するものであるとした上で、冷戦後の経済の自由化、情報通信技術の飛躍的発達、グローバリゼーションの急速な進展に伴い深刻化してきた国際テロ、組織犯罪、大量破壊兵器の拡散、感染症、難民、貧困等の国際社会、諸国及び個人を直接脅かす問題の克服のため、伝統的な国家安全保障を補完するものとして、これを推進することの意義を強調した。更に、具体的方策として、紛争地域での人道活動の強化及び人権・人道法の尊重、難民、避難民、経済移民等人の移動全般に関する国際的な制度的枠組みに関する検討作業への協力、すべての国、国際機関及びNGOによる紛争終結から復興開始までの間の治安維持や人道支援等の諸活動の効果的統合や包括的実施への協力、個人への知識の普及、自己を表現し実現する能力の向上や相互理解の促進を通じた他者に寛容な社会構築のための教育の強化、国連「人間の安全保障基金」の活動や日本政府による「草の根・人間の安全保障無償資金協力」への協力や各国自らのイニシアティブで行う同目的の措置の実施等を挙げAPPF加盟国の協力を求めた。
 本決議案に対し当初中国が消極的な姿勢を示したが、同国との個別協議の結果、案文の修正で合意し単独の決議案として採択されることになった。

4 APPFの今後の課題

 イ 第14回総会
 2006年1月にインドネシアで開催されることに決定した。

 ロ 北朝鮮の招請問題
 討議において、内藤参議院議員は、韓国からの北朝鮮招請の提案には十分配慮するが、北朝鮮が拉致問題への不誠実な姿勢を改めない限り仮に招き入れても実のある議論ができないとの日本の基本姿勢を説明し、理解を求めた。

 ハ 技術作業委員会報告
 グエン・ゴック・チャン技術作業委員会委員長・ベトナム国会議員の報告があり、同委員会に出席した内藤参議院議員は支持と期待を表明した。

5 決議案及び共同コミュニケの採択
 起草委員会は、11日(火)の午後4時30分から初の全体会議を開き、複数の提出国がある国際テロ、朝鮮半島情勢、経済・貿易、HIV/エイズ・感染症、環境について各1か国をコーディネーターとして提出国等で協議し、可能なものは一本化した上で、翌12日(水)の委員会で各案文を詳細に審議するという手順で作業を行い、同日深夜にすべての決議案と共同コミュニケ案の調整を終えた。日本代表団は、提出決議案について各担当議員が調整に当たるとともに、委員会には松田副団長、内藤参議院議員を中心に交代で出席した。なお、日本はHIV/エイズ・感染症に関する決議案のコーディネーターとなった。
 本会議では、ズン起草委員会委員長から委員会での精力的な作業について報告があった後、委員会から提起された21本の決議案と、共同コミュニケ案及び付属文書案がいずれも採択された。
 続いて、共同コミュニケの調印式が行われ、日本代表団からは松田副団長が署名した。

(5)閉会式

 次期総会主催国のインドネシア、各地域ブロックの代表として韓国、マレーシア、フィジー及びカナダが挨拶を行った後、アン・ベトナム国会議長が会議の総括を行い閉会を宣言した。

(6)終わりに

 以上が会議の概要であるが、今次総会は、昨年末にスマトラ島沖地震・津波災害が発生してから初のアジア太平洋地域の国会議員が集う国際会議となり、いち早く地域の議会人が共通認識を形成し、決議という形で国際社会にメッセージを送ることができたのは大きな成果であった。
 APPFは13回を重ね、アジア太平洋地域の議会人機構として揺るぎない地位を確立している。今回は会長職が持ち回りとなって初の会議であったが、今後とも積極的に参画し、地域の平和と繁栄のため、各国と協力していく必要があろう。
 今次総会において、グエン・ヴァン・アン・ベトナム国会議長を始め多くのベトナム関係者から賜った御厚情に対し、深く感謝の意を表するとともに、多大な御協力を頂いた在ベトナム大使館を始め関係者に心からお礼を申し上げる。