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第217回国会 憲法審査会
令和7年4月16日(水) 第2回
1. 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査
(憲法に対する考え方について(参議院の緊急集会について))
【主な発言項目】
- 佐藤 正久 君(自民)
- 緊急集会の権能の範囲について、衆議院優越といった憲法が採用する統治構造との関係から限界があるとの意見があるが、緊急集会は国会の代行機関であり、その権能は原則として国会の全ての権能に及び、衆議院に先議権がある予算も含めて対応可能であるとの見解
- 緊急集会を万全に機能させるための課題への対応と、衆議院議員の任期特例等の対処法についても、議論を深めた上で、憲法に緊急事態対応の規定を置くことが必要との見解
- 緊急集会と任期特例の関係については、すみ分けの考え方からは離れて、任期特例により両院で対応すべき国難と言える具体的な場面を整理するための議論を深めていくべきとの見解
- 熊谷 裕人 君(立憲)
- 緊急集会は、大震災等の深刻な国家緊急事態をも想定した憲法制定時の立法事実、戦前の権力暴走の反省に基づく制度趣旨、平時への強力な復元力の仕組みなどを踏まえ、国民主権、国会中心主義、基本的人権の尊重、平和主義という憲法の基本原理に基づき、かつ、これらの諸原理を守り抜くための制度であり、良識の府参議院が世界に誇るべき制度であるとの見解
- 令和6年6月の参議院改革協議会選挙制度に関する専門委員会報告書において、二院制における参議院の機能、役割として、災害対応について緊急集会の機能の充実強化が明記されており、緊急集会の活用は参議院の在り方論の中核論点と言うべき位置付けであることから、緊急集会70日限定説などに依拠する任期延長改憲の議論は、参議院の自律への不当な干渉であるとの見解
- 憲法審査会において、緊急集会における法の支配、立憲主義に基づく議論を徹底すること、並びに、参議院改革協議会の議論に憲法論から貢献するためにも、緊急集会の機能強化とその必要な法整備、選挙制度との連携も含めた運用改善等の議論を精力的に行っていくことの提言
- 佐々木 さやか 君(公明)
- 参議院議員が全国民の代表であることから、緊急時において、緊急集会の制度により参議院が国会を代行する民主的正統性を有するのであって、参議院の性格を地域代表と考えることは、我が国の二院制の根本に関わることとして注意深く捉え議論する必要があるとの見解
- 衆議院議員の任期延長論は、憲法に規定の置かれる参議院の緊急集会の意義や役割について議論した上で、丁寧かつ慎重に議論することが必要だが、国民の参政権、選挙権の重要性に鑑みれば、緊急事態においても早急かつ円滑に選挙を実施できるような災害に強い選挙制度の実現が前提であるとの見解
- 議員任期延長について、諸外国とは制度の違いもあり、単純に比較することはできないこと及び令和5年の土井真一参考人からのレジリエンスの点で問題があるとの指摘について考えることが重要であるとの見解
- 松沢 成文 君(維新)
- 緊急集会の開催は、衆議院が解散されてから特別会が開かれるまでの最大70日間であり、大規模災害の発生、感染症のパンデミック、戦争拡大など中長期にわたる国家の緊急事態が発生し、選挙の適正な実施が70日を超えて困難であることが明白な場合は、緊急集会だけでは対処が極めて困難との見解
- 緊急集会で議員が発議できるのは内閣の示した案件に限られるが、長期にわたる緊急事態の場合、対応すべき課題は複雑多岐にわたり、当初想定した案件のみの議論だけでは対処できなくなることが容易に予想でき、緊急集会が国家の緊急事態において包括的に対応することは想定されておらず不可能との見解
- いかなる緊急事態にも国家の機能や二院制の大原則を維持し、恣意的な権力の統制を図り、選挙が実施不可能なことによる国会議員の不在を避けるために、緊急事態条項を設ける必要があり、議員任期の延長や緊急政令、緊急財政処分等について日本維新の会と国民民主党と衆議院の有志の会との三会派でまとめた条文案を憲法審査会の審議の俎上にのせてほしいとの要望
- 川合 孝典 君(民主)
- 緊急集会は、衆議院が存在しない場合あるいは衆議院が有効に機能しない場合に参議院一院で国会を代行するものであることから、その目的に適合する範囲において、緊急集会の権能に制約はないと見なすのが合理的であるが、緊急集会の正統性担保のため、衆議院発足までの間に有効性を限定することが望ましく、また、衆議院発足後は再審議を義務付けるなどの手続を定めることも必要との見解
- 緊急事態の発生が解散から選挙の告示日までの間ならば、選挙の中止及び前議員の身分復活、任期延長の可否が問われることになるが、選挙の中止及び前議員の身分復活がなしえない事態が生じた際に、緊急集会が意味を持つことになるとの見解
- 今後の緊急集会開催の判断を行う上で、緊急集会の二つの先例の開催理由が緊急集会を開催するに足るものであったか検証を行う必要があるとの見解
- 山添 拓 君(共産)
- 緊急時においても選挙権という基本権は可能な限り保障されるべきであり、部分的にでも選挙を実施できる限り、順次粛々と選挙を行うべきではあるが、それらは選挙制度の問題であって、憲法審査会で議論すべきテーマではないとの見解
- 議員任期延長は、衆議院と政権の居座りと、緊急事態の恒久化を招くことになりかねず、通常時の法制度を大きく揺るがすような法律が次々制定されるリスクもあり、民主政治の徹底による権利擁護が図られないばかりか、通常の制度に復帰する担保もないとの見解
- 緊急時に名を借りた権力の濫用は至る所に実例があり、その教訓が明らかであることを踏まえ、憲法に基づく民主政治を徹底し、権利を擁護する政治こそが国会に求められているとの見解
- 山本 太郎 君(れ新)
- 緊急集会は平時の制度であり緊急事態に備える改憲が必要との意見が繰り返し提示され続けているが、緊急事態のための制度であることが本審査会で明確に示されており、考えを改めるべきとの見解
- 自然災害しか想定されていない現憲法の緊急集会では国民を守る体制として極めて不十分であり、緊急事態条項の制定が早急に求められるとの主張があるが、緊急集会は予測すべからざる緊急の事態に対し暫定の措置をとり得る方途として規定したものであり、自然災害に限定していないとの見解
- 緊急集会を狙い撃ちした審査や憲法破壊につながる審査を繰り返すことは日本国にとって有害であり、現行憲法が守られているかチェックすることが憲法審査会の第一の役割であることから、それらをしっかり時間を掛け厳しく点検する必要があるとの見解
- 高良 鉄美 君(沖縄)
- 憲法において緊急という文字が使われているのは54条のみであり、この規定からすれば衆議院議員の任期延長の合理性は希薄であるとの見解
- 参議院の緊急集会は、チェック・アンド・バランスと国会中心主義をうまく組み込み、国民主権と主権者の代表である国会にこだわった規定であり、緊急時に役割を果たすことができる仕組みになっているとの見解
- 参議院の緊急集会は、立法や予算の審議等に関して基本的に衆議院と同様の性質を有し、解散がないという参議院の存在意義を強く示しているものであり、対する衆議院議員の任期延長は法の支配ではなく人の支配に属するものとする見解
- 中西 祐介 君(自民)
- 憲法54条2項「国の緊急の必要があるとき」には、災害時や非常事態も含まれ、緊急集会は平時の制度だから内閣総理大臣の指名や条約の締結の承認、本予算の議決は不可との見解は受け入れられず、また、緊急集会においては予算関連法案も含めて広く発議が可能であり、さらに、衆議院の同意がない場合の失効の範囲は将来に対するもので過去に遡及するものではないとの見解
- 災害時には被災県選出の国会議員と国との連携調整が重要になるが、合区対象県ではそれが難しく、合区制選挙は緊急事態に対応する緊急集会とも相入れない選挙制度であるとの見解
- 打越 さく良 君(立憲)
- 緊急集会は、その制定過程から、連合国軍最高司令官総司令部が想定していなかった制度であり憲法の日本化の象徴と言えるとの見解
- 長谷部参考人及び土井参考人から、任期延長論と比較衡量して、現行憲法の緊急集会が優れた仕組みであり、新たな制度を追加する必要は見出しにくい旨の見解が示されたことの紹介
- 藤木 眞也 君(自民)
- 近年の議論以前に国会において、54条1項と2項、3項が置かれる位置との形式的な関連性と緊急集会の開催期間を結び付ける形で、開催期間を70日以内と限定する議論があったかの確認
- 自然災害の頻発化、激甚化、あるいは我が国を取り巻く状況が激変する中において、緊急集会についても硬直的に考えず、一つ一つの文言を解釈した上で、それぞれの項の関連性を考えるべきとする見解
- 浅田 均 君(維新)
- 緊急集会で対応することが想定されない緊急事態に対応することができるよう、立法機能と行政監視機能等の維持と人権保障の徹底を規定する日本維新の会・国民民主党・衆議院の有志の会との三会派でまとめた緊急事態条項を憲法審査会で審議することの要請
- 緊急事態に関しては、パリ第一大学ドミニク・ルソー名誉教授が、憲法は市民の自由を保障するものとの観点に立てば、自由が侵害されるあらゆる状況を予想していなければならず、緊急事態の憲法への編入はアプリオリに容認される、なぜなら、憲法に編入する目的は緊急事態での統治が無制約にならないようにすることだからであると述べており、我々が緊急事態条項の憲法編入が必要と考えるゆえんであるとの見解
- 伊藤 孝江 君(公明)
- 憲法制定時において衆議院議員の任期満了時を参議院の緊急集会の対象から意図的に外したわけではなく、また、衆議院の不存在という点においては解散の場合との差異はないことから、衆議院議員の任期満了による総選挙の場合にも緊急集会を開くことができるとの見解
- 選挙困難事態における国会機能維持について、法律上、繰延べ投票を行う場合の投票期限に定めはなく、また、被災地以外の選出議員も全国民の代表であり、何より被災地の参議院議員は現に存在することから、民主的正統性を確保するには選挙を実施することが肝要であり、緊急集会と繰延べ投票で対応することをまずは基本とすべきとの見解
- 緊急集会が開催される状況に関して、参議院議員の全部ないし一部が議場に参集することが困難であることを想定して、オンラインによる出席、国会審議や採決に参加できる制度を創設することの検討が必要であり、また、参議院の緊急集会の流れに関連する論点の整理は、まず参議院として行うべきとの見解
- 小沢 雅仁 君(立憲)
- 緊急集会は二院制の本旨の外にある例外制度などではなく、二院制を補完しその趣旨を徹底して実行するための制度であるため、衆議院の優越事項を緊急集会の権能を制限する根拠とすることは本末転倒であり、また、全国民を代表する選挙された議員ではない任期延長議員に70日を過ぎた後の国会機能を担わせることは、二院制国会がよって立つ国民代表制の原理に反するとの見解
- 衆議院憲法審査会で主張されている憲法制定時の二院制と緊急集会の制度設計やその趣旨に反した意見は典型的な切取り解釈であり、二院制の一翼である参議院は、緊急集会の運用を通じて二院制の国会制度の趣旨そのものを徹底して実行するという崇高な使命を負っているとの見解
- 古庄 玄知 君(自民)
- 憲法54条2項に「衆議院が解散されたときは」と書かれており、衆議院議員の任期満了あるいは緊急事態が発生したときなどにまで緊急集会を拡張して開催することはできないとの見解
- 憲法54条2項の「国に緊急の必要があるとき」について、具体的な例を挙げて規定すべきであり、憲法に書くのが難しいのならば下位法で書くべきであるとの見解
- 国家緊急事態について、憲法54条2項を根拠に対処することはできず、新たに憲法上記載しなければならないとの見解
- 仁比 聡平 君(共産)
- 憲法には基本的人権保障と法の支配、国民主権と議会制民主主義が貫かれており、民主政治を徹底させ国民の権利を十分擁護するには、緊急時に政府の一存で行う措置は極力防止しなければならないとの憲法観により、緊急事態条項を廃し、緊急集会を定めているとの見解
- 自民党の主張する緊急事態条項は、人々の自由と権利を一内閣の政令をもって奪い立憲主義を破壊するものであり、政権の居座りそのものであって、断じて許されないとする見解
- 田中 昌史 君(自民)
- 災害の状況によっては、衆議院議員不在時に迅速に必要な案件を審議しなければならず、災害対応に万全を期すことができるよう、参議院の業務継続計画については緊急集会を意識し、また、政府が定めている業務継続計画以上に周到なものを用意しなければならないとの見解
- 緊急集会という緊急事態機能が物理的に失われることがないよう、オンライン審議を進めるための法制上の検討と院内を含むインターネット環境の整備を進めていかなければならず、課題を明確にして、参議院だからこそのオンライン化を進めていくべきとの見解
- 小西 洋之 君(立憲)
- 緊急集会の開催期限についての衆議院法制局の説明及び資料は、連関構造説なる独自説を説明し、長谷部恭男参考人の発言を連関構造説に基づく70日限定説だが緊急事態の法理によって無限定説に立つと位置付けるなど、事実と法理に反しているとの見解
- 緊急集会をめぐる改憲会派の見解は、衆参で分裂するだけではなく、改憲会派の中でも深刻な分裂、矛盾を来しており、緊急集会についての暴論に依拠する任期延長改憲の即刻の破棄を求めるとの見解
※上記発言項目は事務局において適宜抜粋し作成しております。発言の全体内容及び詳細については会議録を御参照ください。