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第211回国会 憲法審査会

令和5年5月17日(水) 第5回

1. 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査
 (憲法に対する考え方について(特に、参議院議員の選挙区の合区問題を中心として))

【主な発言項目】
  • 片山 さつき 君(自民)
    • 地方自治が果たす役割の大きさを考え、歴史的、政治的、経済的、社会的、文化的にも一体性のある広域の地方公共団体としての都道府県と、住民にとり最も身近で密着している基礎的な地方公共団体としての市町村を、憲法条文に位置付けるべきとの見解
    • 合区問題は、都道府県の存在の重みをしっかり認識して考えねばならず、参考人から合区選挙による民主主義衰退の懸念等が示されており、投票価値の平等は極めて大切な問題だが、それのみを追求の余り、都道府県という単位が我が国の民主主義に果たす役割を軽視してはならないとの見解
    • 政権選択の衆議院に対し、参議院を地方代表的な性格と多様な意見を反映させる性格に重きを置いた院と捉え、都道府県単位の選挙区と全国比例から成る現行制度を基本にした上で、抜本的には憲法改正による合区解消を考えるが、地方の府としての参議院の特徴に着目し、投票価値の平等ということからこぼれ落ちる利益を確保する観点で、都道府県との結び付きを参議院の役割として制度化してはどうかとの趣旨の憲法学者の意見を踏まえ、法律改正による合区解消についても議論を進めることはあり得るとの見解
  • 杉尾 秀哉 君(立憲)
    • 参考人は合区の解消策として憲法改正を挙げたものの、現実的な方策により早急に合区解消を図ることを優先すべきとの考えであり、法律による対処を認めているところ、参考人質疑の中で述べられた改憲論には様々な問題点があり、都道府県からの選出が必要との認識は、投票価値の平等という憲法14条に基づく人権を犠牲にすることを考えれば正当性の根拠が不十分と言わざるを得ず、参議院を地域代表制や地方の府とすべきとの主張も、憲法43条が規定した参議院が全国民の代表であることと矛盾すること等を考えれば、憲法改正による合区解消も別の憲法上の矛盾を生じさせ、究極の解決策とならないのは明らかとの見解
    • 合区の廃止は憲法改正によらずとも国会法及び公職選挙法の改正により解決する方策があること、二院制の下で参議院が国民のために果たすべき独自の役割や機能を構想し、それらの実現のためには都道府県選出の参議院議員が必要不可欠であること、具体的には、参議院として、人口減など構造的な地方問題の解決や災害対応機能の充実強化などを担うための新たな委員会設置などの国会改革が必要であることの指摘
    • このまま合区問題を放置すれば、次は飛び地や人口規模が異なる都道府県同士が合区になるケースが生じることも避けられず、今後、本審査会の合区問題の議論においては、一票の較差が大きい県の関係者や有識者のヒアリングなどを実施するとともに、参議院改革協議会の議論に資することが求められるとの見解
  • 佐々木 さやか 君(公明)
    • 先日の参考人質疑では、合区対象県の知事等から、一部の県のみが合区対象となることへの不公平感を強く感じている旨の意見があったが、公明党が提唱している全国を11のブロック単位とする個人名投票による大選挙区制は、投票価値の平等と地域代表的性格の調和の観点に立つもので、一つの解決策になるとの見解
    • 憲法43条で衆参両院が全国民の代表とされていること、両院の権能もほぼ同等となっていることから、一票の価値の平等が重要な憲法上の要請となっており、平成24年最高裁判決にあるように、都道府県を参議院議員の選挙区の単位としなければならない憲法上の要請はないことから、現行憲法下で参議院の選挙区を都道府県単位として合区を解消することは現状難しいとの指摘
    • 令和4年6月8日の本審査会において、上田健介参考人から、権限と組織は相関関係にあると考えられ、参議院を衆議院と異なる形で民意を反映させるため、投票価値の平等にこだわらない選挙制度を考えるのであれば、特に立法に関する決定権限を弱めるべきとの意見があり、都道府県代表ということを考える場合には、権限と組織の相関関係について注意深く議論すべきとの指摘
  • 東 徹 君(維新)
    • 合区問題は人口減少が大きな要因であるが、将来の人口推計を踏まえると、今の47都道府県が多いのは明らかであり、都道府県の合併や道州制を検討すべきとの見解
    • 参考人からは合区により投票率が下がったとの発言があったが、合区の対象となっている4県の投票率は他の都道府県を極端に下回っていることもなく、投票率を理由として合区解消を言うには余りにも時期尚早との見解
    • 合区は選挙制度をどうするかという話であり、憲法改正をしなければならないものではなく、参議院選挙で都道府県選挙区を維持し、毎回一人以上当選できるようにするのであれば、比例区の定数を大幅に減らし、それを都道府県選挙区の定数に回すことで、議員定数を増やさずとも一票の較差を抑えられるとの見解
  • 大塚 耕平 君(民主)
    • 参議院における法の下の平等とは、単純な一票の平等ではなく、自身の居住する都道府県から少なくとも一人は代表を選出できる権利であることを立法府の意思として明確にし、裁判所が単純な一票の較差で判決を下すことのないように求めるべきとの見解
    • 選挙における平等を一票の較差で判断している日本以外の国とその判断の内容
    • 憲法や法律に一票の較差で選挙における法の下の平等を判断すると明記されていない中で、司法が一票の較差で判断を下し続けている結果、合区のような事態が生じていることは三権分立の観点から問題ではないかとの指摘
  • 山添 拓 君(共産)
    • 憲法制定と参議院議員の選挙制度創設当初から、現在の選挙区である地方区選出議員に地域代表や都道府県代表としての要素は予定されていなかったと言うべきであり、1983年の最高裁判決が投票価値の平等を憲法上の原則と確認し、その要請を強めている下でこれを無視することは許されないとの見解
    • 4月26日の参考人質疑では、合区された2県の間で利害が異なることがあるとの意見が述べられたが、そもそも民意は多様で一つの県でも一つの意見ということはあり得ず、一方、小選挙区制では死票が多く、民意が反映されにくくなることが避けられないが、合区されれば一層深刻であり、地域の声が国政により届かなくなるのは言うまでもないため、投票価値の平等を実現するとともに、多様な民意が正確に議席に反映する制度とするために、比例代表を中心とする全国10ブロックの非拘束名簿方式の選挙制度とすることの提案
    • 2022年参議院選挙の較差訴訟判決において、合区解消のための憲法改正の議論を当該判決の憲法判断の根拠・理由として明記しているものはなく、この問題は、当審査会の議題ではなく参議院改革協議会などで各会派が意見を出し合い前に進めるべきとの見解
  • 山本 太郎 君(れ新)
    • 合区による弊害は事前に警鐘が鳴らされたとおりであり、合区を導入すれば当然地元から不満が噴出し、憲法改正が必要だという声が上がると分かった上で、憲法改正につなげる動きの一つとして合区を行ったのではないかとの指摘
    • 合区の弊害を想像せずに合区を導入したのであれば、その不見識について国民にわびるべきであり、謝罪なしに憲法改正での合区解消を主張するのは説得力が全くないとの見解
  • 山谷 えり子 君(自民)
    • かつては、選挙区について人々のつながり、地域的なまとまり具合を考慮することは許されると言っていた最高裁が、近年、これらの要請は憲法上の要請ではないという判断に傾いていった背景
    • 最高裁は、合区解消のために国会がどのような努力、対応をしたかによって判断するようにもなっているが、本来、憲法14条の平等論の議論であるはずなのに、立法不作為の違憲性の議論になっているとも捉えられる最高裁の判断の読み解き方
    • 議員と国民有権者との近接性は民主主義にとり重要との専門家の見解
  • 福島 みずほ 君(立憲)
    • 選挙制度が目まぐるしく変わること、日本の憲法が硬性憲法であることを踏まえ、合区を解消するかどうかは、100年、200年単位で考えるべき憲法ではなく、公職選挙法の改正で行うべき問題であるとの指摘
    • 歴史的な政治、経済、社会ユニットである都道府県から議員を選出するために、他県の国民の投票価値の平等という憲法14条を犠牲にすることの正当性が問題となり得ることを踏まえ、国会は、投票価値の平等は重要な憲法上の権利であるとの考えを根拠とし、どのような選挙制度を取れば実現に近づけるかについて知恵を結集すべきとの指摘
    • 地域代表制にすべき、参議院を地方の府にすべきという意見については、国会議員が全国民の代表であることと矛盾しかねず、参議院の権能を弱めることにもなりかねないとの指摘
  • 中西 祐介 君(自民)
    • 2025年参議院通常選挙までの合区解消を実現するため、現在行われている参議院改革協議会の下、院の改革も踏まえた超党派での法律改正による合区解消を目指すべきとの見解
    • 今後法律改正してもなお、以降の最高裁でより厳しい投票価値の是正を求める判断が下される可能性は否定できないことから、中長期的には憲法8章の充実の議論や、47条に人口を基本としつつも行政区画や地勢等を総合的に勘案すべきと提起する自民党改正案等の議論も本審査会で深めるべきとの見解
  • 猪瀬 直樹 君(維新)
    • ロシアがウクライナを侵略しているようなときに憲法9条問題や自衛隊の位置付けをテーマにしないことは時事的な当事者性に欠けており、人口減少で過疎化が進行することは不可避であって合区問題に前向きな解決策はなく、これを今、憲法審査会で議論することには意味を見出せないとの指摘
    • 対政府質疑では、質問通告をしないときちんとした答えが返ってこないが、国会議員同士が討議する場合には質問通告は要らないので、自由討議の場でテーマに柔軟性を持たせ、キャッチボールのように議論を展開できれば具体的な中身に深まっていくと思うとの指摘
  • 矢倉 克夫 君(公明)
    • 参議院では決算や行政監視に力を入れているが、地方代表の議院と位置付けると、従来と同様に中央政府の決算や行政監視に力を発揮できるかについて議論が出てきてしまうとの見解
    • 合区解消を目的に憲法に参議院の地域代表性を書き込むとなると、規定ぶりによっては、国会議員が選出母体である地方の指令の枠内でのみ代表権を持つにすぎないという形になってしまうとの議論が生じ、また、参議院の比例代表との整合性という問題もあり、立法府としては、二院制を採用した趣旨や参議院の独自性といった本質に立ち返った検討をしていくことが必要との見解
  • 打越 さく良 君(立憲)
    • 地域代表制を理由に投票価値の平等の要請を後退させるためには、弱い参議院を制度化し、権限を弱めた上で、立法や政府統制において適切な題材につき、地域、都道府県の立場、観点から審議、調査を行う組織、手続を導入することとされるが、参議院において対等、平等の院から権限縮小を行うことにコンセンサスは得られないと考える旨の見解
    • 現行の選挙制度はいまだ3回しか実施されておらず、合区の是非、さらには選出された議員の正統性についてなどの総括が求められるとの指摘
  • 小林 一大 君(自民)
    • 解散により民意を常時問われる衆議院とは異なる在り方が制度的に求められている参議院において合区制度が今後も続くことは、かえって民意が阻害されていくことにつながりかねないとの指摘
    • 国と地方のパイプ役としての代表をしっかりと確保していくことが今後も求められており、その意味で、国と地方との関係を強固にしていく国の形を国家の根本法規である憲法を改正し定めることが大切であることから、合区問題について本審査会での議論が深まることを望むとの見解
  • 石川 大我 君(立憲)
    • 合区を廃止するために憲法を改正して各都道府県当たり最低一名の定員を定めたとしても、なぜ都市部の有権者の投票価値の平等を犠牲にして地方の県単位の選挙区から一人を選出しなければならないのかという問題は永久に付きまとい、憲法の基本原理である基本的人権の尊重と国民主権、議会制民主主義の根幹に照らし、このような憲法改正の取組には深刻な憲法上の問題があるとの指摘
    • 我が会派は、二院制の下における参議院の在り方として、地方問題の解決や災害対処などの機能強化などの国会法の改革と公職選挙法の改正のセットで行う合区廃止案を提案しており、また、国会改革においては、都市部も含めた県単位の課題解決の取組の推進により、都市部も含めた地域住民の福利に資する検討が必要との指摘
  • 山本 太郎 君(れ新)
    • 投票価値の平等が民主主義の基本であり、都道府県単位の選挙区制を憲法に明記すれば、投票価値が改善される余地がなくなるので、合区により毀損されたものを正すため、短期的には議員定数増も含め、現行憲法下でできるあらゆる手段を講じるべきとの見解
    • 長期的には、都道府県にこだわらず、比例代表制やブロック制などを組み合わせるなどして、投票価値の平等と国会議員は国民の代表であることを担保することを目指すべきとの見解
  • 青山 繁晴 君(自民)
    • 憲法96条の憲法改正規定は、立法府の発議を前提として、国民投票で主権者の意見を直接問うものであり、必要があれば憲法が改正されることを期待しているものであって、本当の意味の護憲主義とは96条も生かすべきときに生かすことであるとの指摘
    • 憲法審査会で、立法府の議員同士が、自由に討議をして意見を闘わせることは非常に有意義との見解

※上記質疑項目は事務局において適宜抜粋し作成しております。質疑の全体内容及び詳細については会議録を御参照ください。