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第211回国会 憲法審査会

令和5年5月10日(水) 第4回

1. 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査
 (憲法に対する考え方について(参議院の緊急集会について))

【主な発言項目】
  • 堀井 巌 君(自民)
    • 憲法54条2項に明示されている衆議院の解散には、衆議院議員の不存在という状況を踏まえた類推解釈から、衆議院の任期満了後で総選挙が行われる前が含まれるとの見解
    • 両院同時活動の例外である緊急集会の期間が70日間を大きく超えることは憲法の想定外との見解
    • 行政監視に重きを置いてきた参議院の役割から、緊急集会による緊急政令等への一定の関与が考えられるとの指摘
    • 緊急集会の議論と併せて、国会議員の不存在や国会の召集不可能時への対応、緊急政令等の制度に係る憲法改正の議論と同時に、緊急政令等への民主的統制として緊急集会を活用することについても参議院が率先して議論すべきとの指摘
  • 杉尾 秀哉 君(立憲)
    • 緊急集会は、明治憲法下での緊急勅令や緊急財産処分を認めず、国会中心主義の立場から、緊急時においても国会が対応しようとする制度であることは明らかとの見解
    • 緊急事態における衆議院議員の任期延長は、議院内閣制の日本の場合には内閣総理大臣の延命を意味し、権力持続化の危険性を十分に認識する必要があるとの見解
    • 二院制の枠内で設けられた緊急集会について二院制の例外との主張があるが、緊急集会は緊急事態に際しても国会中心主義や国民主権を貫くために設けられた制度であり、例外だから問題というのであれば、議員の任期延長は国民主権の例外であることや、緊急政令を可能にする緊急事態条項が立憲主義など近代法の基本原理の例外であることこそ問題にすべきとの指摘
    • 在外邦人選挙権制限違憲訴訟最高裁判決が、国が国民の選挙権の行使を可能にするための所要の措置をとらない不作為により選挙権を行使できない場合も憲法違反と指摘したことを踏まえれば、大災害等であっても選挙を実施可能とするための投票環境の整備等の議論を行わず、任期延長の改憲という選挙権制約の議論を先行させることは、国会議員の存在自体の正統性の根拠を失わせることにもつながりかねないとの指摘
  • 西田 実仁 君(公明)
    • 災害等の緊急事態には、権限が集中する政府の活動を国会で適切に監視するため、できる限り選挙を通じて議員の民主的正当性を確保する必要性が高く、選挙によらない議員の任期延長は国民から選挙の機会を奪うとの見解
    • 衆議院解散後の緊急事態に元衆議院議員の身分復活を認めることについては、内閣と衆議院との間に解消し難い対立関係がある場合に果たして機能するのか等、慎重な検討が必要であるとの見解
    • いかなる緊急の事態でも緊急集会プラス繰延べ投票で対応し得るという考え方を基本とし、極めて例外的に衆議院議員の任期延長や身分復活を認める場合でも、その権能の範囲や期間の上限についても民主的正当性の観点から限定的なものとし、身分復活には緊急集会での議決を伴わせるべきとの見解
  • 音喜多 駿 君(維新)
    • 緊急集会は、長期にわたる場合を想定していない、総理が提示した個別具体的案件しか議論できない、という2点の限界があるため、緊急事態条項が必要であるとの見解
    • いかなる緊急事態にあっても、国会機能や二院制の原則を維持し、権力の統制を果たすことは極めて重要で、選挙が実施できないことにより国会議員が不在となる事態を避けるためにこそ、憲法改正、緊急事態条項の制定が必要であり、これは緊急集会の存在意義や権能を軽視するものではないとの見解
    • 緊急集会では補い切れない長期にわたる緊急事態は想定しておくべきであり、その際の行政、権力の暴走を止めるためにも、緊急事態条項、議員任期延長の創設につき早急に前に進め、緊急集会の権能や議論についても早急に取りまとめを行うべきとの見解
  • 舟山 康江 君(民主)
    • 70日を超えて緊急集会を開くことの妥当性
    • 緊急集会における長期にわたる予算の議決が許容されるか否か
    • 権力濫用を防ぎ民主的な統制を強めるためにこそ、緊急事態条項による議員任期延長と緊急集会のすみ分け等も含めた議論を行い、憲法改正をすべきとの指摘
  • 山添 拓 君(共産)
    • 明治憲法の非常大権や戒厳令は戦時や国家事変を対象としていたが、日本国憲法は戦争を放棄し軍隊を持たないとする9条を掲げたため、緊急事態条項をあえて定めず、権力分立による権利保障を貫く在り方を追求した結果、国際的にもユニークな緊急集会という規定に結実したとの指摘
    • 明治憲法下で唯一衆議院議員任期が延長された例は、1941年の対米開戦に向かう情勢下でのものであり、日本国憲法が議員任期の延長を定めず、衆議院の総選挙の間は緊急集会により対応することとしたのは、侵略戦争を一層深刻化し、内外でおびただしい犠牲を招いた痛苦の歴史を踏まえたものにほかならないとの指摘
    • コロナ危機やロシアのウクライナ侵略に乗じて緊急時対応のために改憲が必要とあおる議論が重ねられているが、こうした危機を経てなお改憲は政治の優先課題とはなっておらず、今求められているのは憲法を徹底的に生かす政治であり、乱暴かつ前のめりに改憲論議を重ねることではないとの見解
  • 山本 太郎 君(れ新)
    • 緊急集会について、衆議院議員任期満了時に招集できるのか、70日間以上の開催が可能かなどの指摘があるが、これは解釈と運用ルールで解決でき、そのために憲法改正が必要との論立てには無理があるとの見解
    • 緊急集会の開催要件や期間を広く取る憲法解釈と集団的自衛権の合憲解釈のどちらにより憲法解釈上の無理があるかは言うまでもないとの指摘
  • 山田 宏 君(自民)
    • 衆議院解散後70日を超えた場合の緊急集会についての通説
    • 緊急の危機の場合に衆議院と参議院が開けないとき、政府が国会に代わり当分の間、緊急財政処分、緊急政令を行うのは当たり前のことであり、人命を救うことが先で、憲法はそれに合わせることが原則であるとの見解
  • 辻󠄀元 清美 君(立憲)
    • 緊急時に政令対応が必要な事項があるならば、平時から必要な対応を検討し、法律改正をしておくことこそが立法府の責務であり、憲法改正の必要はないとの指摘
    • 東日本大震災当時に自治体の長より、緊急事態においては中央政府ではなく、知事の権限を強めてほしいとの意見があったこと等を踏まえた危機対応の議論を行うべきとの指摘
  • 安江 伸夫 君(公明)
    • 緊急集会が70日を超えて長期間開会されることが明示的には予定されていないことは大きな憲法的課題であり、少なくとも70日を超えてからは緊急集会の憲法上の許容性は経時的に後退すると考えざるを得ず、この点について現行憲法の想定していない限界事例と捉え、対応を検討する余地があるとの指摘
    • 議員任期延長等の論議の際に留意すべき点として、選挙を通じた民主的正統性がより保持された参議院の意義を明確にしていく観点から、衆議院議員の任期延長等の国会承認には衆議院の優越等は認められないと考えること、身分を失っている議員の身分復活をまずは民主的正統性が担保されている緊急集会において決するとすること、任期延長等を経た議員で構成される院の措置はそれを補完するための作用として選挙を経た議員で構成し直した院による同意を必要とすることの問題提起
  • 浅田 均 君(維新)
    • 憲法改正を最終的に決定するのは国民投票なので、改憲項目について国民レベルでの議論が必要であり、国民が議論の前提としての現行憲法についての問題点や改正提案の内容と理由を知らなければ議論は前に進まず、合区解消と緊急集会の議論について、期限を切って一定の結論を得ないことには次のテーマに移れないとの指摘
    • 緊急集会だけでは十分ではないので、緊急事態条項の創設が必要であり、憲法9条の中身について「国の交戦権」の意味を明確にするための議論等が必要との見解
  • 古庄 玄知 君(自民)
    • 権力者が自己に有利に類推するおそれがあること、一定の国民の権利を制限する場面で類推解釈することは妥当ではないこと、緊急集会は例外的、緊急的措置である以上、厳格に限定して解釈すべきであること、憲法は国の根本規範なのでこれに類推解釈を適用することは間違っていることから、憲法の条文を類推解釈することは妥当ではないとの見解
    • 憲法54条2項の解散の中に任期満了は含まれないと考えるが、類推解釈を合憲と考えることは解釈の問題と必要性の問題を混同しており、憲法改正してこの問題に終止符を打つべきとの見解
  • 打越 さく良 君(立憲)
    • 憲法改正による議員任期延長について、立法事実が定かでなく、内閣の権限濫用のおそれと国民主権原理への弊害を拭うことができないため反対であるとの見解
    • 参議院は改憲自体が自己目的化した議論を避けるべきとの指摘
  • 小林 一大 君(自民)
    • 衆議院での緊急事態に関する議論は、パンデミックへの対応や北朝鮮の弾道ミサイルへの対応等、平時とは異なる次元の事態への対応が課題となっているが、国民の生命と財産を守る責任を担う国会議員が国家の重大な危機に対してどう向き合うかが問われており、本院としても緊急集会の議論とともに現実的な課題として緊急事態の対応に取り組んでいくべきとの見解
    • 国会議員の任期延長については、憲法に定められた緊急集会の意義を十分に踏まえた上での丁寧な検討が求められており、本院においても緊急集会の在り方について具体的な議論が一層進むことがこの問題を考える上での大前提であるとの見解
  • 古賀 千景 君(立憲)
    • 緊急集会が災害などの有事を想定していない平時の制度であり、開催期間は70日間が限度であるなどの主張は、憲法制定の立法事実に反し、憲法と参議院をないがしろにするものであるとの見解
    • 衆議院憲法審査会で行われている議員任期の延長と緊急政令の改憲議論は、権力の濫用を防ぐために作られた緊急集会の根本趣旨も議論せずに濫用可能な憲法改正を議論するもので、立憲主義への理解が問われる事態であり、任期延長が時の総理や国会多数派に濫用される危険に真正面から向き合い、緊急集会の意義を確認し、むしろその機能強化の議論を行うのが日本国憲法下の国会議員の使命であるとの指摘
  • 熊谷 裕人 君(立憲)
    • 憲法54条により、衆議院解散と総選挙の間は40日以内、総選挙と国会召集の間は30日以内とそれぞれ限定されているのは、行政による解散権の濫用を防ぐためで、緊急集会は70日を超えて開催することも緊急の事態にはやむを得ず、国民主権の観点から衆議院の任期満了時にも認められるべきとの見解
    • 国民の代表者である議員を選挙により制定する国民の権利は、国民の国政への参加の機会を保障する基本的権利として議会制民主主義の根幹を成すものであるため、緊急事態下にあっても選挙を実施するための所要の措置をとることが必要であり、措置をとらないことは国会の不作為となりかねず、まずは選挙実施を可能とする郵便投票の拡充やオンライン投票の法整備などの所要の措置を考えなければいけないとの見解
  • 山本 太郎 君(れ新)
    • 緊急集会を70日以上開けない国会の空白期間を生じさせないよう緊急事態条項や議員任期延長の必要性を主張する会派こそ、これまで国会の空白期間を生み出してきたとの指摘
    • 違憲状態の中で苦しむ国民の現状について憲法審査会で議論することが優先順位の最上位であり、審査会のテーマ設定をやり直すべきとの指摘

※上記質疑項目は事務局において適宜抜粋し作成しております。質疑の全体内容及び詳細については会議録を御参照ください。