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第211回国会 憲法審査会

令和5年4月12日(水) 第2回

1. 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査
 (憲法に対する考え方について(参議院の緊急集会について))

【主な発言項目】
  • 牧野 たかお 君(自民) 
    • 憲法54条に明示されている衆議院が解散されたときとは、それほど長くない期間の一時的な衆議院議員の不存在の例示であり、任期満了後の衆議院議員の不存在の場合も解釈により含まれるとの見解
    • 緊急集会で議員が発議できる議案の範囲は、国の最高機関の一翼を占める参議院の位置付けを踏まえれば事実上広く、また、緊急集会の権能の範囲は、それほど長くない期間の衆議院議員の不存在を念頭に民主政治を徹底させる趣旨を踏まえれば国会の全権能に及ぶとの考えの下、特別会の召集を待てない程度の即時に対応すべきものに限り広く認められるとの見解
    • 緊急集会を超えた事態が発生したときに、憲法に条文がないエマージェンシーパワーに委ねることには民主政治の視点からの議論が必要であり、早急に結論を得るべき論点の一つは、衆議院解散後70日を超え国会召集できない程の緊急事態が発生しているときでも緊急集会で対応するか、議員任期の特例を認めるかであるとの見解
  • 杉尾 秀哉 君(立憲) 
    • 民主政治を徹底させ国民の権利を十分に擁護するため、万年議会である参議院に国会代替機能を定めたという緊急集会の根本趣旨は、衆議院ではほとんど議論されておらず、いわゆる70日間限定説のような改憲ありきの意図的かつ便宜的な解釈論とは参議院は一線を画すべきとの見解
    • 衆議院議員の任期満了後にも緊急集会が可能というもちろん解釈や類推解釈の法的正当性が明らかであること、憲法54条3項の衆議院の事後同意が担保されていること、衆議院が存在しない状況で緊急集会を認めなければ内閣が独断で必要な措置を講ずる事態を招きかねないことを考えると、任期満了後の緊急集会も可能と解することは立憲主義とも符合するとの見解
    • 衆議院議員の任期満了後も緊急集会を開催できるという憲法解釈に立った場合において、現行の国会法の条文改正は必要ではなく、また、その憲法解釈と両立するものとして、国会法や公職選挙法の改正により任期満了前に必ず総選挙を実施するという制度改革案があることの指摘
  • 安江 伸夫 君(公明) 
    • 緊急集会は、衆議院の不存在の状況において、緊急の必要があるときに国会の機能を維持して民主的な統制を維持するために設けられたものであり、任期満了の際も開会でき、その開催期間については緊急の必要が継続する限り開催できると理解することが妥当との見解
    • 緊急集会の権限の範囲を法改正等により拡大する場合の問題や、衆議院議員のみならず参議院議員の任期延長についても議論を深めるべきとの見解
    • 緊急事態対応として、緊急政令や緊急財産処分に類する規定の要否については、緊急集会の制度が創設された経緯等を踏まえると憲法上の許容性には疑義があり、また、法律に基づく政令委任や予備費などで措置可能であることから必要性に乏しいとの見解
  • 浅田 均 君(維新) 
    • 緊急集会は衆議院が解散されたときに国会の機能をどう維持するのかという議論であり、これは緊急事態のごく一部の話でしかなく、司法機能も行政機能も立法機能も喪失した事態をも想定しておく必要があり、私たちは現実的な緊急事態条項を条文化したとの見解
    • 憲法9条に関して、現行憲法には国家主権が何であるかの記載や、我が国の独立という言葉がなく、また、国際法と憲法の関係について、憲法起草当時、国際法がどれだけ理解されていたかは不明であるとの指摘
    • 緊急事態が要求しているのは、カール・シュミットが言う例外状態において誰が何をどのように守るべきかの議論であり、いかにして例外状態を法秩序につなぎ止めることができるのかという議論が不可欠との見解
  • 礒崎 哲史 君(民主) 
    • 緊急集会についての規定は、二院制の例外であることから、その運用がどこまで許容され得るかについて丁寧に議論を重ねていく必要があるとの見解
    • 仮に緊急集会に国会の一般的な権能を代行させようとすると、国会法102条の2との関係で緊急集会の性格が変化することに注意が必要であるとの見解
    • 日本維新の会、有志の会、国民民主党で合意した衆議院議員の任期延長に関する提案の根幹は、緊急集会があくまで臨時対応で長期間の対応が困難とした場合に、いかなる緊急事態においても国会機能を維持し、権力を統制、分立することが重要との考えに基づいているとの見解
  • 山添 拓 君(共産) 
    • 日本国憲法は、明治憲法の緊急勅令や緊急財政処分といった政府の専断で処理できる仕組みを排除したことに大きな特徴があり、いかなる緊急事態であっても国会の関与を求め、行政権の専断を許さないこととしているとの指摘
    • 権力分立を維持し、国民の権利保障を全うしようとした立憲主義を貫こうとするのがこの憲法であるが、自民党の2012年日本国憲法改正草案はこれとは異なり、立憲主義を一時的に停止し、それをいつまで続けるかも内閣次第であり、歯止めがないとの指摘
    • 緊急事態であればなおさら民主政治を徹底し、国民の審判の機会を保障することこそ必要であり、憲法で定めた参議院の機能を否定するかのように議員任期の延長、緊急事態条項の創設など改憲論へ突き進もうとするのは歴史の教訓を踏まえない暴論であり、断じて認められないとの指摘
  • 山本 太郎 君(れ新) 
    • 緊急集会を衆議院議員の任期満了の場合にも開催することは学説上も無理のない解釈であり、緊急集会の規定は政府への全権委任等を避けるために設けられたもので、その理念に沿う限りにおいては柔軟な解釈による運用を認めるべきであるとの見解
    • 緊急集会は、70日間の期間を超えては開催できないとの主張もあるが、この70日という期間は、衆議院解散後40日以内に総選挙を行い、選挙日から30日以内に国会を召集するという規定にひも付いており、非常時でこの期間中の総選挙の実施が不可能な場合、70日という期間に縛られずに緊急集会を行う運用も検討する余地があるとの指摘
    • 緊急集会ではフルスペックの国会機能が果たせないので、衆議院議員の任期延長が必要であるとの意見があるが、非常事態の例外的な議会運営にフルサイズの権限を与えないことが憲法の趣旨であり、緊急時に、選挙で選ばれた期間を超えて任期延長された議員から成る議会にフルサイズの権限を与えることは、民主主義をないがしろにするとの見解
  • 片山 さつき 君(自民) 
    • 緊急集会に関して、衆議院議員任期満了の際に開会できること、内閣が提示できる議案の範囲、衆参同時選挙の場合の出席要件及び定数要件について、国会法の改正等の方法で明確化を行い、機能する緊急集会にすることが憲法上本来あるべき姿の実現であるとの指摘
    • 緊急集会への登院が物理的に困難な非常事態に、各議院の3分の2の多数で任期の特例を認めることや、国会に両院の議員としての身分があるが出席困難な場合に内閣が個別法に基づく緊急政令を制定できることを憲法上明確にしておくことは必要であるとの見解
  • 辻元 清美 君(立憲) 
    • 日本国憲法の緊急事態法制は緊急集会を軸に組み立てられており、立法機能や予算承認機能は万年議会である参議院の緊急集会が担い、緊急集会すら直ちに開催困難な場合の災害緊急事態などにはあらかじめ法律の委任を受けた個別の緊急政令の仕組みが措置され、必要であればまず法律改正で対応すべきとの見解
    • 緊急政令という事実上の内閣への白紙委任のような改憲を唱える姿勢は、立法事実を欠き、民主政治を徹底させて国民の権利を十分擁護するとの根本趣旨に立つ緊急集会を基軸とする日本国憲法の緊急事態法制の考え方と根本的に矛盾するとの見解
  • 矢倉 克夫 君(公明) 
    • 緊急集会について、衆議院では緊急時における議員任期延長の前提的な議論として進んでいるが、参議院の院の自律権の問題に絡むものとして、本院において真正面からしっかり議論すべきとの見解
    • 緊急集会については、適用場面、開催期間、緊急性、案件の範囲の4つの発動要件に関する論点のほかに、効果について、緊急集会で首班指名等を行い得るのか、事後の衆議院の同意が得られない場合の効力をどうするかという論点があり、憲法学者等の意見も拝聴しつつ議論を深めるべきとの指摘
  • 東 徹 君(維新) 
    • 自民党条文イメージたたき台素案では、テロや武力攻撃が行われた場合の緊急事態対応には触れられておらず、昨今の情勢の変化に応じた党としての最新の条文案が示されていないため、具体的な条文案を憲法審査会に示し、議論をリードしてもらいたいとの意見
    • ロシアのウクライナ侵攻や台湾有事の可能性を考えると、憲法9条に関する議論も行わなくてはならず、緊急事態条項に関する議論がまとまれば、次は憲法9条に関する議論を進めてもらいたいとの意見
  • 青山 繁晴 君(自民) 
    • 憲法54条は、パンデミック、大災害、テロ、有事を想定しておらず、不幸にも参議院議員もいなくなるような別次元の事態を想定していない点で抜けがあるとの指摘
    • 安全保障は主権がないと存在しないため、占領下の実質的に主権のない時代に公布、施行された日本国憲法は国民を守るための規定が薄くなっており、憲法96条の改正条項を生かすことが必要との指摘
  • 石川 大我 君(立憲) 
    • 憲法改正の発議、内閣総理大臣の指名等は、緊急の必要の要件を満たさない等により緊急集会の権限外であると考えられるが、両議院同意案件や予算の審議、議決は緊急集会の権能として認められることの確認
    • 緊急集会の権能については、憲法前文が定める国民主権原理、代議制の原理及び二院制の趣旨等も踏まえ、その基本的な在り方及び個別の対象事項についての議論を深めていくべきであるとの見解
  • 進藤 金日子 君(自民) 
    • 緊急集会は憲法が採用する両院同時活動の原則等の例外であり、緊急事態に対する暫定の措置であることが明確に示されており、国家の機能が失われる可能性も排除できない大災害を想定した場合、暫定措置のみに緊急事態対応を委ねるのではなく、国会議員の選挙の適正な実施が困難と認められるときは、任期の特例を定めることができることを憲法改正により明文化すべきとの見解
    • 緊急集会に関する政府見解は、解散という予測しない事態の場合に限って特に明文の規定をもって認めたとする見解と、任期満了後、類推適用が許されるという見解の両論があり、結論に至っておらず、学説も二分されており、緊急集会の期間や権能の範囲についても解釈上議論があるので、現状及び想定し得る将来を見据えて、解釈等で曖昧な部分は、更に議論を重ねて結論を得るべきとの見解
  • 古賀 千景 君(立憲) 
    • 緊急集会を開く期間については、地震等の大災害で緊急の立法措置を講じる必要が生じた場合に備えて措置された旨の緊急集会の立法事実や、全国民を代表する議員から成る国民代表機関であり、全体の改選期のない万年議会である参議院に国会代替機能を求めることにより民主政治を徹底するという根本趣旨を踏まえれば、これらと明確に矛盾する議員任期延長の改憲の根幹の考えである70日間限定説に対して、会派として明確に反対するとの見解
    • 緊急時における国会機能の確保のためと称して議員任期延長の改憲議論がなされているが、現行憲法が定める臨時の緊急措置の一つである臨時国会の召集要求に政府や与党が応えなかった例があり、この問題が議論されていないことは法の支配、立憲主義の観点から重大な課題であることから、本審査会で臨時国会召集義務違反の調査の実施が必要との指摘
  • 臼井 正一 君(自民) 
    • 衆議院議員の任期満了の場合にも緊急集会が開き得るとしても、衆参同時選挙の場合等、非改選の参議院議員という僅かな数の議員で重要な意思決定を行うことは、きちんと民意が反映されたものと言えるのかとの指摘
    • 議員が選挙で選ばれることは重要であるが、東日本大震災の場合等に、臨時特例法による地方議員の任期延長は大きな批判なく行われており、国会議員の任期延長についてのみ賛成できないことは理解できないとの指摘
  • 熊谷 裕人 君(立憲) 
    • 緊急集会中に国に緊急の必要性がある新たな案件が発生した場合、内閣総理大臣は当該緊急集会で審議すべき新たな案件を示すことができ、それに関連する議案を議員側が発議できるようにし、参議院から内閣総理大臣に対して新たな案件を示すように促す制度に関し、仮にこれらの制度を措置する場合の憲法上の問題や国会法の改正の必要性の確認
    • 緊急集会中に国に緊急の必要性がある新たな案件が発生し、内閣から新たな案件が示されない場合、参議院において内閣総理大臣が示した案件に関連のある議案以外の議員による発議を認めること等は議論の余地があるとの見解
  • 加藤 明良 君(自民)
    • 緊急集会については、権能の限界や開催日数に関する論点整理のほか、武力攻撃、存立危機、大規模災害の規模等、緊急の必要がある場合の判断基準についても、十分なシミュレーションが必要であり、また、ねじれ国会の状況においては、緊急集会で内閣の提案が否決され、国会機能が停止するといった混乱が想定されるとの指摘
    • 大規模な自然災害、外国からの武力攻撃、感染症のパンデミック等はいつ日本で起きても不思議ではない状況であるので、いかなる緊急事態にも対応できる体制整備が必要不可欠であり、そのために必要なのは緊急事態条項による対応であるとの指摘

※上記発言項目は事務局において適宜抜粋し作成しております。発言の全体内容及び詳細については会議録を御参照ください。