第221回国会(特別会)
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内閣参質二二一第一五号 令和八年三月二十四日 内閣総理大臣 高市 早苗
参議院議長 関口 昌一 殿 参議院議員石垣のりこ君提出奨学金返済減税の導入に否定的な高市内閣総理大臣の答弁に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員石垣のりこ君提出奨学金返済減税の導入に否定的な高市内閣総理大臣の答弁に関する質問に対する答弁書 一について お尋ねの「「モラルハザード」を懸念する根拠」については、令和八年三月四日の衆議院文部科学委員会において、松本文部科学大臣が「先日の参議院本会議における高市総理の答弁は、奨学金制度の観点から検討すべき課題の一つといたしまして、斎藤議員からお尋ねのあった奨学金返済減税を仮に制度化した場合に、学業に真摯に取り組むために奨学金の貸与を受けるほとんどの方には関係のないことではあるものの、必要のない奨学金を借りることが生じる可能性もあるとの認識を示したものと承知をしているところであります。日本学生支援機構の貸与型奨学金は、民間教育ローンと異なりまして、無利子又は低利であるとともに、返済能力を審査せず、基準を満たす希望者全員に貸与するという特徴を持つものであります。こうした特徴を前提といたしまして、仮に返還額を所得控除又は税額控除する税制優遇策を設けた場合、既に奨学金を返還中の方への影響はない一方で、これから貸与を受けられる方については、より多くの奨学金の貸与を受けることで、より多くの金銭的利益が得られる仕組みとなることが一例として考えられる」と答弁したとおりであり、また、お尋ねの「「モラルハザード」とは具体的にどのような行為を想定しているのか」については、当該答弁で示したとおり、将来における税制上の経済的利益の享受を目的として独立行政法人日本学生支援機構(以下「機構」という。)の奨学金の貸与を必要以上に受けようとする行為を想定したものであるところ、当該行為がなされる可能性は低いものの無視することはできないと考えている。また、政府として確認した限りでは、税制措置として御指摘の「借入金等の返済額に係る所得控除」を設けた事実は承知していないため、お尋ねの「不必要な借入れが増加したという統計的な実例はあるか」についてお答えすることは困難である。 二について お尋ねについては、仮に、機構の奨学金の返還額の一部を所得税等における所得控除の対象とする税制措置を導入した場合、当該奨学金を「利用して進学した者」は、当該奨学金の貸与を受けることにより、その返還期間において、当該税制措置による所得控除を受けることによる経済的利益を享受することができるという点で、当該利益を享受することができない当該奨学金を「利用せずに進学した者」との間の公平性に課題があると考えている。 三について 御指摘の「住宅ローン減税」は、控除対象となる費用等の性格や政策目的に加え、税制の公平性や財政への影響等の様々な要素を総合的に勘案した上で合理的な措置として創設されたものであると承知している。 その上で、お尋ねの「「公平性」の判断基準」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、税制措置の創設を検討するに当たり勘案される要素は、個々の税制により異なるものであり、御指摘の「教育のための借入れ(奨学金)」に係る「税制優遇措置」を導入することについては、二についてで述べたような公平性の観点も含めた慎重な検討が必要であると考えている。 四について お尋ねについては、仮に、機構の奨学金の返還額の一部を所得税等における所得控除の対象とする税制措置を導入した場合、当該税制措置の制度の内容に応じた手続を当該奨学金の返還者が行うことができるよう、当該奨学金の返還者の返還金に係る情報を再度整理する事務が新たに発生し、当該事務を円滑に行うための情報システムの改修が必要となることが考えられる。また、お尋ねの「現行の「奨学金返還証明書の発行」等の事務の延長では対応が不可能と考える理由」については、当該税制措置の実施に伴い証明書の発行を求める者が著しく増加し、現在の機構の体制では対応が困難となる程度の負担が発生することが見込まれる。 五について 御指摘の「給付付き税額控除の手法」としてどのようなものを想定しているのか必ずしも明らかではないが、仮に、機構の奨学金の返還に係る支援として、当該奨学金の返還額の一部を所得税等における所得控除又は税額控除の対象とする税制措置と当該奨学金の返還者に対する一定額の給付とを組み合わせて行う制度を設ける場合についてのお尋ねであれば、例えば、二についてで述べたような公平性や四についてで述べたような機構の負担が発生すること等の課題があるため、現時点において、当該制度を設けることを検討する予定はない。 |