質問主意書

第221回国会(特別会)

質問主意書

質問第五一号

福岡県議会の海外視察に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和八年五月二十七日

北村 晴男


       参議院議長 関口 昌一 殿



   福岡県議会の海外視察に関する質問主意書

 現在、福岡県議会(以下「県議会」という。)の海外視察の在り方が問題視され、他の都道府県議会と比較し、海外視察の実施回数が極端に多く、莫大な公費を費やしているとの批判がなされている。直近のデータとして、令和六年一月十四日から令和七年八月二十四日にかけての一年七箇月余りで、県議会による海外視察が十五回行われ、公費負担は、明らかになっているだけでも一億四千四百万円以上に上っている(令和七年十二月二十七日付け西日本新聞)。この金額には同行者分の費用は含まれていないが、令和六年四月にドバイ等を訪れた視察では、議員五名の他に、県職員五名が随行していた(令和六年四月二十五日放送のテレビ西日本「記者のチカラ」)。毎回、議員と同数程度の県職員が同行しているものと思われる。

 前記十五回の県議会の海外視察のうち五回には知事も同行している(県議会及び福岡県庁ホームページ、監査公表第三〇号(令和八年三月二十四日、県公報第六八〇号)「住民監査請求に基づく監査(令和七年度)」(以下「当該監査結果」という。))。知事及び県職員の渡航費用を合わせると、一年七箇月余りで、少なく見積もっても二億から二億五千万円の公費が支出されたものと思われる。また、令和六年以前においても、平成三十一年度から令和五年度の計五年間のうち、コロナ禍の令和二年度及び三年度を除く実質三年間で、随行した県職員の費用も含めた県議会の海外視察に二億八千四百万円超の公費が支出された(令和六年四月二十二日付け読売新聞オンライン記事及び同日放送のテレビ西日本「記者のチカラ」)。この期間の海外視察の約半数には知事も同行しており(令和六年六月五日付け西日本新聞)、前記一年七箇月と合わせ、約四年半で実に五億円規模の公費が支出されたものである。

 県議会議員の宿泊費は、国家公務員等の旅費支給規程(昭和二十五年大蔵省令第四十五号)を準用して決定されている。令和七年四月に施行された国家公務員等の旅費制度の改正前は、国家公務員等の旅費に関する法律(昭和二十五年法律第百十四号)において、宿泊料は国務大臣クラスで上限三万二千二百円と規定されていた。改正後は、同規程において、渡航国・地域ごとに宿泊費基準額が規定され、今回問題視した県議会の海外視察のうち、唯一、改正後に実施された中国視察では、地域により上限一万四千円から五万千円であった。しかし、実際の宿泊費については、毎度、知事との事前協議で決裁されており、一泊十三万円の部屋への宿泊が認められるケースもあった。

 また、令和七年三月のベトナム視察では、藏内勇夫県議会議員が視察とは無関係な別行動を取り、台湾を経由して帰国したことで、他の議員より交通費が十万円程度増額になったところ、これも公費補填されていた。前記公費補填について、県議会事務局は当該監査結果において、「あらゆる議員活動が議会活動と関連し、有益なものになり得るという議員特有の事情がある」と説明している。しかし、これは議員の行動には際限なく公費を使ってもよいとの結論にもつながり得るもので不可解と言うほかない。

 普通地方公共団体が締結する売買、貸借、請負その他の契約は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百三十四条で定められているとおり、原則として一般競争入札によって行われ、例外として地方自治法施行令(昭和二十二年政令第十六号)で定める場合に該当するときに限り、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結できる。しかし、各海外視察に係る旅行会社との契約は一般競争入札ではなく、全て随意契約によるものであった。各海外視察の当初契約(航空券や宿泊費の費用弁償を除く、主に通訳やガイドの契約)の額は、地方自治法施行令第百六十七条の二第一項第一号で定められた随意契約が可能な上限額(令和七年四月の改正前は百万円、改正後は二百万円)の範囲に収まっている。しかし、その後、契約変更を行い、費用が当初契約額の最大十倍以上に膨らむ等、大幅な増額が常態化している。ガイド料、通訳料、現地移動バス借上げ料等、予算に計上されていた項目が当初契約には含まれておらず、その後の契約変更でこれらの項目が追加された結果、随意契約が可能な上限額を上回ったケースが多数認められた(令和七年十二月二十二日付け西日本新聞)。こうした行為は、随意契約に係る地方自治法の規定を潜脱するのみならず、県民の目を欺き、予算を組み議会の承認を得ている意味を失わせ、議会制民主主義の原則を破壊する行為と言わざるを得ない。この点、随意契約の形式を取ってきた理由について、県議会事務局長は県の予算委員会や当該監査結果で説明しているが、理解に苦しむものである。

 また、各海外視察に係る一部メディアや住民からの批判を受け、県議会は令和六年六月、以後、報告書を作成すべき旨の申合せをした。しかし、令和八年五月現在までの二年間に行われた約二十件の視察のうち、報告書の公開は二件にすぎない。他の海外視察については、県議会のホームページに写真と数行の文章が掲載されるのみで、報告書と言うには程遠いものである。その後、報道や福岡県民を中心とした国民の批判の声を受け、県議会議長及び副議長は令和八年四月、正副議長所信表明(就任二年目にあたって)において、報告書を作成・公表しない理由を、視察の「成果が出てくるには時間がかかる」、「交渉継続中の段階で説明できるものではない」などとしているが、理由として不合理で、理解に苦しむものと言うほかない。

 以上のとおり、県議会の説明や対応を見る限り、自浄作用は期待できないことが明らかであり、国として指導・監督を行っていかなければいけないものと考え、以下質問する。

一 県議会の海外視察に関する一連の契約を全て随意契約で行ってきた事実及び宿泊費を知事との事前協議で毎度上限額を超えて際限なく認めてきた事実については、地方行政を預かる県が、県民の利益ではなく、特定の議員や旅行会社の利益を図ってきたとして、刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百四十七条の背任罪に当たる可能性がある。総務省は事実調査を行うべきと考えるが、その考えはあるか示されたい。

二 契約変更により最終契約額が大きく膨れ上がるケースが常態化していることは、県民の目を欺き、地方自治法施行令第百六十七条の二第一項第一号に規定される少額随意契約の定めを潜脱する行為にほかならないと思われる。総務省として、事実調査を行う考えはあるか示されたい。

三 このような状況においては、地方自治体の自浄作用による解決を期待できる要素が見当たらず、国としてガイドラインを示すなど適切な助言、指導等を行っていかなければ地方行政の違法又は著しく不適切な行為を止めることはできないと考える。総務省として、その必要性の有無について見解を示されたい。

  右質問する。