質問主意書

第221回国会(特別会)

質問主意書

質問第四三号

DVを理由とする離婚に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和八年五月十三日

福島 みずほ


       参議院議長 関口 昌一 殿



   DVを理由とする離婚に関する質問主意書

 離婚後共同親権を導入等する改正民法が令和八年四月一日に施行された。改正民法については、ドメスティック・バイオレンス(以下「DV」という。)被害の当事者・支援者、弁護士等から強い懸念が表明されてきた。一方、DVを理由とする離婚はごく少数であり大きな課題ではない旨の誤った主張も散見される。こうした点を踏まえ、改正民法の運用においてDVを無視・軽視又は否認・否定することは、取り返しのつかない事態を招きかねないことを改めて肝に銘じるべきである。

 以上を踏まえて、以下質問する。

一 DVを理由とする離婚はごく少数であり、たった四%である旨の主張が散見される。同主張は、厚生労働省「令和三年度全国ひとり親世帯等調査結果報告(令和三年十一月一日現在)」に依拠していると見受けられる。同調査によれば、「母子世帯の母の養育費の取り決めをしていない理由(最も大きな理由)」との設問に対し、「相手から身体的・精神的暴力を受けた」との回答割合が四・四%、「母子世帯の母の面会交流の取り決めをしていない理由(最も大きな理由)」との設問に対し、「相手から身体的・精神的暴力や児童虐待があった」との回答割合が三・八%、「子どもの連れ去りや虐待の可能性がある」との回答割合が〇・七%、「母子世帯の母の現在面会交流を実施していない理由(最も大きな理由)」との設問に対し、「相手に暴力などの問題行動がある」との回答割合が三・三%であった。しかし、これらの設問は、離婚理由を直接問うものではない。また、「最も大きな理由」を選択する回答方法であるため、前記の回答割合が少ないことをもって、DVを理由とする離婚はごく少数と言うことはできない。

 また、令和二年度法務省委託調査研究「「協議離婚制度に関する調査研究業務」報告書」によれば、「別居した相手と話し合わなかった理由はなぜですか。一番近いものを教えてください。」との設問に対し、「DVや子どもへの虐待等の問題があり話をする余裕がなかったから」との回答割合が四・一%であった。この結果を基に、DV・虐待を理由とする別居は四%にすぎない旨の主張もされている。

 これらをもって、DVを理由とする離婚及びDV・虐待を理由とする別居はごく少数であり、たった四%である旨解釈し、主張することは誤りと考えるが、政府の見解を示されたい。

二 DVは加害者にも被害者にも自覚がないことが多く、別離から一定期間経過してからDV被害に気付く場合も珍しくはない。離婚に至る経緯にDVが影響していることは、自覚がない場合を含め、決して少数事例ではないと考える。内閣府男女共同参画局「男女間における暴力に関する調査報告書(令和六年三月)」によれば、配偶者からの被害経験があるとの回答割合は、女性が二十七・五%、男性が二十二・〇%である。また、最高裁判所事務総局「司法統計年報」の「婚姻関係事件数―申立ての動機別」によれば、妻の動機のうち「暴力を振るう」は約二割を占め、上位となっている。種々の制約もあり単純に結論を導くことはできないが、他の民間調査などを併せて見ても、離婚の理由又は背景にDVが影響している可能性は決して低くないと考える。少なくとも、DVは無視・軽視してはならないと考えるが、政府の認識を示されたい。

三 トラウマインフォームドケアにおいては、トラウマ体験の影響を念頭に置いた物の見方をすることを「トラウマのメガネをかける」と表現している。同様に、離婚事案に係る相談支援においては、被害者から明言されずとも、DV被害があるのではないか、DVの影響が言動や心身状態などに現れているのではないかとDVのメガネをかけて敏感に対応することが求められると考えるが、政府の認識と取組を示されたい。

四 離婚後共同親権、離婚後の子どものための共同養育計画書作成及び親子交流実施に係る積極論、推進論においては、DVの否認・否定が見られる。また、DVを前提としても、「夫婦関係と親子関係は別である」、「DVと親子関係は分けて考えられるべき」と主張し、児童虐待に含まれる「面前DV」であっても子どもへの影響は別と考えるべきとの意見もある。子どもがDVを直接目撃していない場合には、DVと親権や親子交流の問題は分けるべきと主張する傾向にある。

 しかし、DVについては、直接子どもが巻き込まれない場合や目撃していない場合であっても、被害者である親の心身状態の悪化や行動制約等を介して子どもの養育環境、福祉に悪影響を及ぼす可能性がある。また、デイビッド・マンデル「DVから子どもの安全を守る」(令和七年、明石書店)では、専門的知見に基づき、加害者である親の認知や言動が直接子どもに悪影響を及ぼす可能性があることを示している。政府は、DVが子どもに及ぼす影響についてどのように認識し、関連施策に反映しているか示されたい。

  右質問する。