質問主意書

第221回国会(特別会)

質問主意書

質問第一五号

奨学金返済減税の導入に否定的な高市内閣総理大臣の答弁に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和八年三月十二日

石垣 のりこ


       参議院議長 関口 昌一 殿



   奨学金返済減税の導入に否定的な高市内閣総理大臣の答弁に関する質問主意書

 斎藤嘉隆参議院議員は令和八年二月二十六日の参議院本会議において、奨学金返済減税の実現に向けた検討を提案した。これに対し、高市早苗内閣総理大臣は、「奨学金の貸与を受けなかった方との公平性」、「モラルハザードが起こる可能性」、「日本学生支援機構の実施体制」、低所得者への「効果が限定的」などの課題を挙げ、導入に否定的な答弁を行った(以下「総理答弁」という。)。

 奨学金返済減税の導入により、物価高騰が続く中でも奨学金返還者の可処分所得を確保でき、消費マインドの引下げを押しとどめ、経済の好循環を生むことができると思料する。

 政府の認識を改めて確認するため、以下質問する。

一 総理答弁では、課題として「必要のない奨学金を借りるといったモラルハザードが起こる可能性」を挙げている。一般的に、返済義務を伴う借入金について、その一部を所得控除する制度が導入されることで不必要な借入れが誘発されるとは考えにくい。総理答弁で示された「モラルハザード」とは具体的にどのような行為を想定しているのか、政府の認識を示されたい。また、我が国における過去の税制において、借入金等の返済額に係る所得控除を設けたことにより、不必要な借入れが増加したという統計的な実例はあるか、「モラルハザード」を懸念する根拠を示されたい。

二 総理答弁では、課題として「貸与を受けなかった方との公平性」を挙げている。しかし、奨学金返済減税は、返済原資である所得に対する課税の調整であり、奨学金の元金免除や利息の肩代わりではない。奨学金返済減税が導入された場合、奨学金を利用せずに進学した者と利用して進学した者を比較し、具体的にどのプロセス(所得確保、資産蓄積等)においてどのような不公平が生ずると政府は考えているのか、見解を示されたい。

三 現行の税制優遇措置である「住宅ローン減税」の導入に際し、資金を借り入れて住宅取得した者と借り入れずに自己資金で住宅取得した者との公平性については、同措置の導入を阻む決定的な理由にはならなかったと承知している。住宅取得に際しては借入れを行う者と行わない者がいるところ、両者の公平性に係る政府の見解を示されたい。

 その上で、住宅取得のための借入れには税制優遇措置があるにもかかわらず、将来の国力を担う教育のための借入れ(奨学金)には「公平性」を課題として税制優遇措置を導入しない理由を示されたい。また、総理答弁における「公平性」の判断基準を示すとともに、住宅取得のための借入れと教育のための借入れの公平性に係る整合性を示されたい。

四 総理答弁では、課題として「約五百万人の返還者に対応するための日本学生支援機構の実施体制」を挙げている。しかし、所得控除の手続は納税者等が税務当局に対して行うものであり、当該機構側に新たに発生する事務は限定的と考える。実施体制を揺るがすほどの負担になると政府が想定している当該機構側に新たに発生する事務について、具体的に示されたい。また、現行の「奨学金返還証明書の発行」等の事務の延長では対応が不可能と考える理由を示されたい。

五 総理答弁では、課題として「所得が小さく所得税の税額がない方や少ない方にはその効果が限定的であること」を挙げている。所得控除では減税効果が少ない場合、社会保障国民会議で検討を始めた「給付付き税額控除」の手法を奨学金返還支援にも適用することで、公平かつ効果的な支援が可能になると思料する。「効果が限定的であること」を理由に奨学金返済減税の検討さえも否定しながら、給付付き税額控除の検討を進める政府の姿勢は矛盾していると考える。政府は、奨学金返還支援に給付付き税額控除の手法を用いることを検討するか示されたい。検討しない場合、その理由を示されたい。

  右質問する。