質問主意書

第221回国会(特別会)

質問主意書

質問第六号

島嶼地域における国民保護と国防政策の併存に起因する制度的課題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和八年三月六日

高良 沙哉


       参議院議長 関口 昌一 殿



   島嶼地域における国民保護と国防政策の併存に起因する制度的課題に関する質問主意書

 沖縄県の先島諸島(宮古島市、多良間村、石垣市、竹富町、与那国町)を始めとする島嶼地域は、国民の広域避難の困難性が高く、社会基盤や産業の復旧・復興においても他地域と比して著しい制約を受けることが想定される。ジュネーヴ諸条約第一追加議定書の第四十八条(基本原則)、第五十八条(攻撃の影響に対する予防措置)、第六十五条(保護の消滅)の趣旨に照らせば、島嶼地域に自衛隊部隊等の配備を進めることは、国民保護の観点から看過できない課題を内包すると考えられる。

 さらに、島嶼地域においては、自治体が策定する国民保護計画の中で、民間空港・港湾が国民保護の拠点として既に位置付けられている。一方で、政府は国家安全保障戦略(二〇二二年十二月閣議決定)に基づき、「自衛隊・海上保安庁による国民保護への対応、平素の訓練、有事の際の展開等を目的とした円滑な利用・配備のため」の仕組みとして、いわゆる特定利用空港・港湾の指定を推進している。国民保護の拠点として利用する施設を、同時に国防にも利用することとなれば、実務上及び制度上の調整を要する事態が生じ得ることが懸念される。また、本来、国民理解や避難同意に直結する論点は、制度設計の段階から丁寧に整理し、国・自治体で共有・協議されるべきものである。島嶼地域における国民保護と国防政策の併存は、国際人道法の区分原則及び予防原則の観点に照らし、制度設計及び運用上の整理を要する重要な課題を含むものと考える。

 以上を踏まえ、以下質問する。

一 「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」(二〇〇四年法律第百十二号。以下「国民保護法」という。)第一条には、武力攻撃事態等において国民の生命・身体・財産の保護を図ることを目的としている旨規定されている。また、第三条には、国、地方公共団体等の国民保護措置の実施に関する責務が規定されている。空港・港湾が自治体の策定する国民保護計画により国民保護の拠点として既に指定されている場合、自治体の指定を尊重して軍民分離を図り、有事における国民保護措置の実施が最優先で確保されるべき責務であると認識しているか、政府の見解を示されたい。また、武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律(二〇〇四年法律第百十四号)に基づく特定公共施設等の利用調整においても、有事における国民保護措置の実施が最優先で確保されるべき責務であると認識しているか、政府の見解を示されたい。

二 特定利用空港・港湾に指定された施設は、有事の際に国民避難の拠点として利用されることが想定される。一方で、自衛隊等による部隊の展開又は物資輸送などの軍事的利用が同時に行われる可能性がある。国際人道法上、民間人及び民用施設の保護は重要な原則であるにもかかわらず、当該施設が軍事的に利用される場合には軍事目標とみなされ、攻撃対象となる可能性が生じる懸念がある。この場合、当該施設が国際人道法上の軍事目標とみなされる可能性を政府は否定できるか示されたい。否定できる場合、その法的根拠及び理由を具体的に示されたい。

三 特定利用空港・港湾に指定された施設において、国民避難と自衛隊等による部隊の展開又は物資の輸送が同時に行われる際、当該施設が攻撃を受けて国民に人的又は物的被害が生じた場合、その損害に対する賠償責任は政府又は当該施設を管理する自治体のいずれが負うか、責任の所在及びその法的根拠について、政府の見解を示されたい。

四 国民の広域避難が長期化し、市町村長の任期や職員体制、事務執行の制度保障等、避難元自治体の行政運営に影響が生じる場合、その行政機能はどのような形で維持されることが制度上想定されているか、その法的根拠と併せて示されたい。

五 国民保護法は、国民の権利救済について、国及び地方公共団体に対し迅速な対応を求めている(第六条、第百五十九条、第百六十条、第百七十五条)。すなわち、国民の広域避難が行われた後も、損失補償や不服申立て等の国民の権利利益の救済に関する手続が適切に実施されることを前提としていると解される。しかし、避難元自治体の行政機能が長期間にわたり制約される場合、これらの救済事務を誰が主体となって担い、どのような手続によって実施するか、国民保護法に基づく制度内容は明確とは言い難い。国民が広域避難した後における損失補償、不服申立て、その他権利救済に係る事務を担う主体を示されたい。また、当該事務を避難元自治体以外が担うことを想定している場合、国民情報や財産情報等の取扱いに係る国民保護法上の根拠条文及び手続を具体的に示されたい。

六 国民保護法第百七十一条第一項は、武力攻撃災害の復旧に関する財政上の措置について「別に法律で定める」と規定している。これに関し、内閣官房は二〇二五年十一月二十四日、国民との政府交渉において、「武力攻撃事態が終了した後の復興政策の一環として検討される事項であり、その状況下で可能な検討がされるもの」と回答した。国民保護法は、復旧・補償に関する具体的制度設計を事後的に、別途立法によって対応することを前提としている。その結果、国民に対する財政的保障の枠組みが必ずしも明確でないまま避難を求める制度となっている。国民の財産保全や生活再建に関する財政支援及び武力攻撃災害からの復旧・復興に係る制度的裏付けは、どのような枠組みにより担保されるか示されたい。また、武力攻撃災害の復旧に関する財政上の措置について「別に法律で定める」こととしている制度に関し、国民理解・避難の同意形成のため、政府としてこれまで自治体に対して説明・共有し、協議した事実があるか示されたい。ある場合にはその内容を、ない場合にはその理由を示されたい。

  右質問する。