質問主意書

第221回国会(特別会)

質問主意書

質問第三号

関東大震災直後の帝国議会における司法大臣答弁で言及された朝鮮人虐殺に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和八年二月二十五日

石垣 のりこ


       参議院議長 関口 昌一 殿



   関東大震災直後の帝国議会における司法大臣答弁で言及された朝鮮人虐殺に関する質問主意書

 政府はこれまで関東大震災時における朝鮮人虐殺について、政府内に記録がない、事実関係を把握できる記録が見当たらないとの見解を示してきた。そこで、私は令和六年四月九日の参議院内閣委員会において、前橋地方検察庁高崎支部に保管されていた倉賀野事件の判決書を示し、政府の見解について質した。これに対し、政府参考人は、「群衆は、群馬県倉賀野町駐在巡査が同駐在所において保護中の年齢二十歳、氏名不詳の男子ら鮮人なりとし、右駐在所より引き出したるをもって、被告人等は、不逞鮮人なりと思惟し、日本刀をもって同人の咽喉を突き、もって同人を死に至らしめたるものなり、こうした記載などがあるものと承知しております。また、御指摘の判決書の主文の欄には、被告人四名をそれぞれ懲役一年六月、懲役八月、懲役八月及び懲役四月に処す旨、このうち被告人三名につき、それぞれ二年間各刑の執行を猶予する旨などが記載されているものと承知しております。」と答弁した。しかし、関東大震災時に風説を信じて朝鮮人を虐殺した日本人がいたことについては、「法務当局としては、独立した司法機関である裁判所が認定した事実について、それが正しいかどうかといった評価を加え得る立場にない」と答弁し、虐殺の有無については明言を避けた。

 一方、関東大震災直後の大正十二年十二月十五日の第四十七回帝国議会衆議院予算委員会において、平沼騏一郎司法大臣は、自警団等による朝鮮人及び朝鮮人と誤認された内地人に対する殺傷行為が多数行われた旨、それらが「無辜ノ良民」の殺傷であり「検察処分」を行った旨答弁している(以下「当該答弁」という。)。

 当該答弁と現在の政府見解との整合性について、以下質問する。

一 政府は、当該答弁の内容を把握しているか示されたい。

二 一般に、国会における大臣答弁は、政府の公式見解として事実に基づき行われるべきである。当該答弁は、当時の司法省が組織として把握していた事実に依拠したものか、政府の認識を示されたい。

三 当該答弁では、殺傷行為が多数行われた旨、検察処分を行った旨言及されている。検察処分を行った以上、その基礎となる捜査記録や内部報告が法務省(旧司法省)等に存在したことは自明である。これら検察処分に関する資料の現在の保管場所を示されたい。保存されていない場合、いつ、どのような理由で廃棄されたか示されたい。

四 大臣が議会において多数の殺傷と検察処分があった事実を認めている以上、事実関係を把握できる記録が見当たらないとする現在の政府見解は、当該答弁を無視した不誠実なものと言わざるを得ない。政府は当該答弁を重く受け止め、朝鮮人虐殺の事実を認定し再調査を行うべきと思料するが、見解を示されたい。行わない場合、当該答弁と現在の政府見解との矛盾をいかに解消するか示されたい。

五 政府は司法機関の認定した事実について評価を控えるとしている。しかし、当該答弁で言及された「検察処分」は行政権の行使であり、その判断に至る捜査記録や内部報告は行政文書である。これらは、政府が言う事実関係を把握できる記録に該当するという認識で相違ないか示されたい。

六 当時の司法大臣が「無辜ノ良民」が多数殺傷された旨国会で答弁している事実は、虐殺の事実認定に係る政府の記録と考える。当該答弁という組織のトップによる事実認定の記録が存在するにもかかわらず、現在の政府が虐殺の記録が見当たらないと強弁し続ける法的・論理的根拠を明確に示されたい。

  右質問する。