第219回国会(臨時会)
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内閣参質二一九第七三号 令和七年十二月二十六日 内閣総理大臣 高市 早苗
参議院議長 関口 昌一 殿 参議院議員ラサール石井君提出難民認定を受けたトランスジェンダー当事者の在留カードの性別記載変更に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員ラサール石井君提出難民認定を受けたトランスジェンダー当事者の在留カードの性別記載変更に関する質問に対する答弁書 一について 出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)第十九条の四第一項第一号は、在留カードの記載事項の一つとして「性別」を規定している。 二について お尋ねについては、「入国・在留審査要領」(平成十五年九月十日付け法務省管在第五千三百二十九号法務省入国管理局長通知。以下「審査要領」という。)において、「旅券の身分事項欄に記載された情報を表記する。ただし、旅券に男女以外の性別である「X」が記載されている場合、在留カードの性別の表記は空欄とし、裏面余白部分に「旅券上の性別表記はXである」と記載する。」としているとおりである。 三について お尋ねの「性同一性障害特例法に定める性別の取扱いの変更の審判に係る請求権」について、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(平成十五年法律第百十一号)においては、同法第三条第一項に規定する審判(以下「性別変更審判」という。)の申立ての要件として、国籍の要件は規定されていない。その上で、仮に、「在留カードを身分証明書とする者」が性別変更審判の申立てをした場合には、当該申立てを受けた家庭裁判所において、我が国の裁判管轄の有無等について、個々の事案に応じて慎重に検討した上で判断されるものと承知しているが、政府として、「在留カードを身分証明書とする者」による性別変更審判に係る当該管轄の有無等について、具体的に検討しているものではない。 四について 外国人は、入管法第十九条の十第一項において、性別を含む在留カードの記載事項に変更を生じたときは、出入国在留管理庁長官に対し、変更の届出をしなければならないとされているところ、二についてでお答えしたとおり、御指摘の「在留カードの性別記載」については、審査要領において「旅券の身分事項欄に記載された情報を表記する」こととしており、御指摘の「医師による性同一性障害又は性別不合の診断を受けた」ことのみをもって、同項に規定する「変更を生じたとき」に当たるとはしていないが、外国人は、性別の記載が変更された新たな旅券の発給等を受けた上で、同庁長官に対し、在留カードの性別の記載の変更の届出を行った場合、同項に規定する「変更を生じたとき」に当たるとして、性別の記載が変更された新たな在留カードの交付を受けることができる。 また、審査要領において、「提出された資料のみでは在留カードの記載事項を変更すべき事由があることの立証が不十分と判断される場合は、・・・改めて所要の立証資料の提出を求め、又は必要に応じて入管法第十九条の三十七の規定に基づく事実の調査等を実施する」こととしており、外国人が、御指摘の「在留カードを身分証明書とする者が医師による性同一性障害又は性別不合の診断を受けた場合」で、その者が新たな旅券の発給等を受けることができないような例外的な場合には、同庁は、前記の所要の立証資料の提出を求めるなどした上、個別具体的な事案に応じて、同項に規定する「変更を生じたとき」に当たるかどうかを判断することとしている。 五について お尋ねの「ジェンダーアイデンティティに基づくものとする運用」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、「在留カードの性別記載」については、二についてでお答えしたとおり、旅券に男女以外の性別が記載されている場合には、その旨を記載しており、また、四についてでお答えしたとおり、入管法第十九条の十第一項の規定により出入国在留管理庁長官に対し、性別を含む在留カードの記載事項の変更の届出を行うことが可能であることから、これらの取扱いを変更することは考えていない。 また、お尋ねの「カナダ、オーストラリア、ドイツ等で導入されている制度運用」については、政府として把握していない。 六について 御指摘の「研修やマニュアル作成」の対象が必ずしも明らかではないが、「公共職業安定所」や「地方公共団体」の職員における「性的マイノリティ当事者に対する差別防止及び合理的配慮」に係る理解の増進のための取組として、例えば、「公共職業安定所」に係る「研修やマニュアル作成」については、厚生労働省において、都道府県労働局に対して「LGBT等の性的マイノリティに対する理解と適切な対応に関する周知について」(令和二年十二月十八日付け厚生労働省職業安定局首席職業指導官室長補佐(職業紹介担当)事務連絡)を発出し、御指摘の「性的マイノリティ」について職員が正しく理解することにより、「難民認定された性的マイノリティ当事者」を含めた求職者に適切な対応が行われるように、同省において作成した職員向けのリーフレットを研修において活用するよう通知しているところであるが、当該リーフレットを用いた研修等に係るお尋ねの「実施状況」は把握していない。 また、「地方公共団体」に係る「研修やマニュアル作成」については、総務省において、都道府県等に対して「地方公共団体における各種ハラスメント対策の一層の徹底について」(令和六年十二月二十六日付け総行女第三十七号総務省自治行政局公務員部長通知)を発出し、「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律・・・が施行されたことを踏まえ、」「①事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針・・・において、「被害を受けた者の性的指向又は性自認にかかわらず、当該者に対する職場におけるセクシュアルハラスメントも、本指針の対象となる」旨示されていること」、「②事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針・・・において、パワーハラスメントに該当すると考えられる例として、「相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うこと」及び「労働者の性的指向・性自認(略)等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること」が明記されていること」「について、改めて認識し、適切に対応いただきたい」と示しているところであるが、これを踏まえて各都道府県等が行う研修等に係るお尋ねの「実施状況」は、政府として把握していない。 七について 御指摘の「身分証明書」には様々なものがあり、また、「ジェンダーアイデンティティに合致するものに変更できない」及び「趣旨に反するおそれ」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではなく、さらに、「ジョグジャカルタ原則」は、法的拘束力を有する国際約束ではないところ、例えば、在留カードにおける「性別記載」に係る取扱いについては、五についてでお答えしたとおりであり、このような取扱いは、お尋ねの条約に違反するものではないと考えている。 |