質問主意書

第219回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一九第六二号
  令和七年十二月十九日
内閣総理大臣 高市 早苗


       参議院議長 関口 昌一 殿

参議院議員高良沙哉君提出米軍関係者による犯罪に係る通報手続及び再発防止対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員高良沙哉君提出米軍関係者による犯罪に係る通報手続及び再発防止対策に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「事件の経緯」の具体的に意味するところが明らかではないが、御指摘の「誘拐・性的暴行事件」については、日本側の捜査当局において、事案が公になることによって被害者の名誉やプライバシーに甚大な影響を与えることがあり得ること等を考慮して、非公表とすべきと判断したものと承知しており、政府としても、こうした判断を踏まえ、関係者に対する情報提供は控えるべきものと理解し、対応したところである。その上で、御指摘の事件については、日本側の捜査当局から外務省への情報提供を踏まえ、日米間で適切な情報のやり取りが行われ、また、日本側の関係当局による迅速な対応も確保されていたところであり、こうした対応においては、御指摘の平成九年三月三十一日の在日米軍に係る事件・事故発生時における通報手続に関する日米合同委員会合意の目的が達成されたものであると考えている。

 いずれにせよ、アメリカ合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族(以下「合衆国軍隊構成員等」という。)による事件・事故は本来起きてはならないものであり、我が国政府としては、米側に対して、綱紀粛正等を随時働きかけており、こうした事件・事故の防止に向けて、引き続き、米側とともに取り組んでまいりたい。

二について

 お尋ねの「どのように定めた」の具体的に意味するところが明らかではないが、捜査当局においては、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第四十七条の趣旨を踏まえて、個別の事案ごとに、公益上の必要性とともに、関係者の名誉及びプライバシーへの影響並びに捜査・公判への影響の有無・程度等を考慮し、公表するか否か、公表するとしてどの程度の情報を公表するかを判断するものと承知しているところ、関係機関は、そのような捜査当局における判断も踏まえ、地方公共団体を含む関係者に対する情報提供の必要性及び相当性を判断している。その上で、合衆国軍隊構成員等による性犯罪で、日本側の捜査当局による積極的な広報がなされない事件について、我が国政府内で検討を行い、御指摘の令和六年七月五日の記者会見において、林内閣官房長官(当時)が「そのような事案であっても、特に全国の約七十パーセントの在日米軍専用施設・区域が集中している沖縄においては、米軍人による犯罪予防の観点から、迅速に対応を検討する必要があることに留意し、関係省庁で連携の上、可能な範囲で、地方自治体に対しての情報伝達を行うことといたします。」と述べたとおり、沖縄県に対しての情報伝達を行うこととなったものである。

三について

 お尋ねについては、御指摘の「通報が遅れることによって関係自治体や専門機関等が実施する被害者支援や再発防止対策に遅れが生ずる懸念がある」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。その上で、令和六年七月から、合衆国軍隊構成員等による事件・事故に係る情報共有について、合衆国軍隊構成員等による性犯罪で、日本側の捜査当局による積極的な広報がなされない事件について、起訴された事案については全ての事案について、また、不起訴とされた事案についても、被疑者により犯行が行われたと認められる事案については、捜査当局による事件処理が終了した後、沖縄県へ可能な範囲で情報を共有する運用を開始した。

 これに加え、同県警察からも、合衆国軍隊構成員等による性犯罪で報道発表しないものについて、被疑者を検挙した後に那覇地方検察庁と相談した上で、被害者のプライバシー保護等に留意しつつ、同県へ可能な範囲で情報共有を行うこととなった。

 政府としては、今後も、このような新たな運用の下で適切に情報提供を行っていく。

四について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和三十五年条約第七号。以下「日米地位協定」という。)第十七条5(c)は、「日本国が裁判権を行使すべき合衆国軍隊の構成員又は軍属たる被疑者の拘禁は、その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、日本国により公訴が提起されるまでの間、合衆国が引き続き行なうものとする。」と規定しているところ、日本国の当局が被疑者の身柄を拘束した場合には、この規定の適用はなく、日本国の当局において引き続きその身柄を拘束し得るものである。

 加えて、御指摘の日米地位協定第二十五条第一項に基づき設置される合同委員会における平成七年十月二十五日の刑事裁判手続に関する合意では、起訴前におけるアメリカ合衆国軍隊の構成員又は軍属たる被疑者の身柄の引渡しについて、「合衆国は、殺人又は強姦という凶悪な犯罪の特定の場合に日本国が行うことがある被疑者の起訴前の拘禁の移転についてのいかなる要請に対しても好意的な考慮を払う。」とされているのみならず、「日本国が考慮されるべきと信ずるその他の特定の場合について同国が合同委員会において提示することがある特別の見解を十分に考慮する。」とされている。

五について

 令和六年七月に、在日米軍司令官が、米軍施設への出入りの際の飲酒運転に対する検問の強化、米軍の憲兵隊によるパトロールの強化、在日米軍内部での研修及び教育の強化、在日米軍の勤務時間外の行動指針であるリバティー制度の見直し、在日米軍、日本政府、沖縄県庁及び地元住民との協力のための新しいフォーラムの創設等を発表したと承知している。その上で、政府としては、これらの米側が同年に発表した一連の再発防止策が実効性のある形で実施され、実際に事件・事故の再発防止につながっていくことが重要であると考えており、米側に対し、これらの防止策の実効性の確保を含め、在日米軍の綱紀粛正と再発防止の徹底を働きかけてきており、引き続き、こうした働きかけを行うとともに、これらの防止策が実効性のあるものとなるよう、これらの効果を見極めながら、日米間で協力していく考えである。

六について

 お尋ねの「広く国民全体の利益となる」の具体的に意味するところが明らかではないが、日米地位協定について、政府としては、これまで、手当てすべき事項や事案の性格に応じて、効果的かつ機敏に対応できる最も適切な取組を通じ、一つ一つ、具体的な問題に対応してきた。引き続き、このような取組を積み上げることにより、日米地位協定の在り方を不断に検討していく。