第219回国会(臨時会)
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内閣参質二一九第五八号 令和七年十二月十二日 内閣総理大臣 高市 早苗
参議院議長 関口 昌一 殿 参議院議員塩村あやか君提出要介護認定に係る制度の改善に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員塩村あやか君提出要介護認定に係る制度の改善に関する質問に対する答弁書 一について 令和七年六月二日に開催された第百二十一回社会保障審議会介護保険部会の資料三「要介護認定について」において、「在宅介護等のケア時間及びケア内容の調査」の「対応方針」として、「在宅で介護保険サービスを利用する方の介護の内容が、現行の一次判定に反映されていない旨の指摘を踏まえ、現行の要介護認定における一次判定の妥当性の検証のため、在宅介護等のケア時間及びケア内容の調査を実施する。具体的には、令和七年度に在宅、通所などの介護保険サービスの利用者について、ケア時間及びケア内容の調査を実施し、その結果を介護保険部会に改めて報告することとする」としているところ、お尋ねの「調査項目」については、当該「要介護認定における一次判定の妥当性の検証」を行う中で、必要な「見直し」について検討することとしている。 また、御指摘の「認定調査員」に対する「いわゆる「カスハラ」」の「増加」や「看護師が非協力的なために聞き取りに支障を来す事例」について具体的かつ詳細に把握していないところ、お尋ねの「調査手法」については、介護保険法(平成九年法律第百二十三号。以下「法」という。)第二十七条第二項等の規定に基づき、御指摘の「認定調査員」において、要介護認定又は要支援認定(以下「要介護認定等」という。)を申請する被保険者を面接し、その心身の状況、当該者の置かれている環境等について、調査をすることとし、具体的には、「認定調査票記入の手引き」(平成二十一年九月三十日付け老老発〇九三〇第二号厚生労働省老健局老人保健課長通知別添一。以下「認定調査票記入の手引き」という。)において、例えば、「「拘縮の有無」については、・・・他動運動により目的とする確認動作・・・ができるか否かにより確認する」等としているとおり、御指摘の「認定調査員」が当該被保険者に対面で調査をすることが必要であるところ、現時点において、当該手法の「見直し」が必要であるとは考えていない。 二について 御指摘の「両資料における調査対象者の状態に関する記述に乖離がある場合」の「再調査」については、要介護認定等を適切に実施する上で必要なものであると考えているため、これに「追加の時間を要する」こと自体が「是正」すべき「問題」であるとは考えておらず、いずれにせよ、御指摘の「認定調査票」の記入及び「主治医による意見書の作成」については、それぞれ、認定調査票記入の手引き及び「主治医意見書記入の手引き」(平成二十一年九月三十日付け老老発〇九三〇第二号厚生労働省老健局老人保健課長通知別添二)を示しているところ、これに基づき、適切に対応されているものと承知している。 また、御指摘の「主治医による意見書の作成」が「認定調査から大幅に遅れる事例」を「是正する取組」については、「認定審査期間等の公表について」(令和七年三月三十一日付け厚生労働省老健局老人保健課事務連絡。以下「事務連絡」という。)において、都道府県等(都道府県、市町村又は特別区をいう。)に対して、「介護保険法第二十七条第十一項において、要介護認定申請に対する処分は、原則として「当該申請のあった日から三十日以内にしなければならない」と規定されており、認定者数が増加する中、より適切なサービスを提供する観点から、各保険者が要介護認定等を迅速かつ適切に実施することが求められます」とした上で、「認定審査を三十日以内に実施するための、認定審査期間における要介護認定の調査及び審査の各段階」のうち、「主治医意見書の入手」については、「主治医意見書の作成依頼から十三日以内」と示すとともに、「保険者における要介護認定事務の効率化、迅速化に係る取組例」の中で「主治医意見書の入手」として「主治医意見書を電子的に読み込んで処理することで、一次判定や認定審査会資料の作成事務の効率化を図っている」こと等を示しているところである。また、御指摘の「担当医の不足」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではなく、御指摘の「適当な審査判定に結びつかない事例」について具体的かつ詳細に把握していないが、法第二十七条第三項の規定において、「市町村は、・・・申請に係る被保険者の主治の医師に対し、当該被保険者の身体上又は精神上の障害の原因である疾病又は負傷の状況等につき意見を求めるものとする。ただし、当該被保険者に係る主治の医師がないときその他当該意見を求めることが困難なときは、市町村は、当該被保険者に対して、その指定する医師又は当該職員で医師であるものの診断を受けるべきことを命ずることができる」としているところ、これに基づき、市町村(特別区を含む。以下同じ。)において、適切に対応されるものと考えている。 さらに、御指摘の「認定調査」については、認定調査票記入の手引きにおいて、「認定調査の実施場所については、原則として日頃の状況を把握できる場所とする。・・・病院や施設等で認定調査を実施する場合は、調査対象者の病室や居室等、通常過ごしている場所を確認」する等としているところ、御指摘のように「調査対象者が一週間、同一の場所にとどまることを前提にしている」ものではないため、このことを前提としたお尋ねにお答えすることは困難である。 三について お尋ねについては、「介護認定審査会運営要綱」(平成二十一年九月三十日付け老発〇九三〇第六号厚生労働省老健局長通知別添)において、都道府県に対して、法第十四条に規定する介護認定審査会の適切な運営に資するため、「審査及び判定の手順」として「検討過程」等について示すとともに、同審査会の委員は「都道府県又は指定都市が実施する認定審査会委員に対する研修(認定審査会委員研修)を受講し、審査及び判定の趣旨、考え方、手続き等を確認する」ことと示した上で、「介護保険事業費補助金交付要綱」(平成十四年十二月四日付け厚生労働省発老第一二〇四〇〇一号厚生労働事務次官通知別紙)に定める「介護認定審査会委員研修事業」により当該研修に対する補助を行っているほか、厚生労働省が令和七年度においても実施している「要介護認定に係る調査及び適正化事業」により、「要介護認定に係る調査及び適正化事業調達仕様書」に基づき、「全国的な要介護認定の適正化を推進すること」を目的とし、「都道府県及び市町村等の求めに応じて、認定適正化専門員が個別の介護認定審査会を訪問し、合議体の審査を傍聴の上、介護認定審査会の運営手順や認定調査の状況等について、技術的助言を行う」等の取組を行っているところであり、これらを通じて、お尋ねの「要介護認定に係る基準の全国的な統一性」及び「保険者による介護認定審査会の適正な運営」の確保を図っているところである。 四について 御指摘の「事例」について具体的かつ詳細に把握していないため、お尋ねにお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、法第二十九条第一項の規定において、「要介護認定を受けた被保険者は、その介護の必要の程度が現に受けている要介護認定に係る要介護状態区分以外の要介護状態区分に該当すると認めるときは、・・・市町村に対し、要介護状態区分の変更の認定の申請をすることができる」としているところ、これに基づき、市町村において、適切に対応されているものと承知している。 五について 御指摘の「事例」について具体的かつ詳細に把握していないため、お尋ねにお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、「被保険者の審査判定が遅れる」ことに関しては、令和七年三月十三日の参議院厚生労働委員会において、福岡厚生労働大臣(当時)が「厚生労働省では、適正かつ迅速な認定の実施に資する観点から、・・・認定調査項目の見直しであったり、要介護更新認定等の有効期間の延長、認定審査会の簡素化などを行ってきております」と答弁したとおりであり、さらに、事務連絡において、「認定審査を三十日以内に実施するための、認定審査期間における要介護認定の調査及び審査の各段階について・・・参考となる期間」を示し、市町村に対して、「迅速かつ適切な要介護認定等の実施」を依頼しているところである。 |