質問主意書

第219回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一九第四七号
  令和七年十一月二十八日
内閣総理大臣 高市 早苗


       参議院議長 関口 昌一 殿

参議院議員塩村あやか君提出闘犬と動物愛護・動物福祉に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員塩村あやか君提出闘犬と動物愛護・動物福祉に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「闘犬が行われている地域・自治体及びその実施状況」については、例えば、平成二十二年度に環境省が地方公共団体に対して行ったアンケート調査によると、七件の「闘犬」の実施が把握された。当該調査において把握した「闘犬」の具体的な実施地域等については、当該調査が地域名等の公表を前提としないで行われたものであったことから、お答えすることは差し控えたい。また、お尋ねの「過去十年間で闘犬が行われなくなった事例」については、網羅的に把握していないが、例えば、高知県においては、五で御指摘の「とさいぬパーク」が平成二十九年五月に「閉園」したことは承知しているところ、お尋ねの「理由」の詳細については承知していない。

二について

 お尋ねについては、詳細かつ網羅的に把握していないが、お尋ねの「背景」を示唆するものとして、例えば、神奈川県においては、闘犬、闘鶏、闘牛等の防止に関する条例(昭和三十一年神奈川県条例第四十号)第一条において、「この条例は、粗暴又は残虐な風潮を助長するおそれのある闘犬、闘鶏、闘牛等を防止することにより、公共の危害を防止し、風俗をじゆん化し、動物の愛護を図ることを目的とする」と、石川県においては、闘犬、闘鶏、闘牛等取締条例(昭和五十年石川県条例第四十三号)第一条において、「この条例は、闘犬、闘鶏、闘牛等を禁止することにより、善良の風俗を保持することを目的とする」と、福井県においては、闘犬、闘鶏、闘牛等取締条例(昭和三十三年福井県条例第四十九号)第一条において、「この条例は、闘犬、闘鶏、闘牛等を禁止することにより、善良な風俗を保持することを目的とする」と規定されているものと承知している。

三について

 お尋ねの「動物愛護管理法上、一切の問題がない」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「闘犬」も含め、伝統的な行事として行われる行為が「動物虐待に該当する」か否かについては、令和六年三月六日の参議院予算委員会において、伊藤環境大臣(当時)が「伝統行事だからといって動物虐待が許されるわけではありません。動物虐待に該当するか否か、これは、その行為の目的、手段、態様、動物の苦痛の程度等から判断されるものだと考えております。長きにわたって文化として地域には根付いておりますけれども、社会的に容認されているものである場合には、正当な目的があるとは、ある行為とは言えると考えております。しかしながら、正当な目的があったとしても、当該行為の手段、態様等が社会通念上容認される範囲を超えている場合には、動物愛護管理法の趣旨に照らして問題があると、そのように考えます。個別の伝統行事における動物の取扱いが虐待等に当たるかどうか、これは最終的には司法の場で判断されるものというふうに考えます」と答弁しているとおりである。

四について

 お尋ねの「闘犬の取扱いや考え方」も含め、「動物愛護管理のあり方検討報告書」(平成二十三年十二月中央環境審議会動物愛護部会動物愛護管理のあり方検討小委員会作成)において、「闘犬等の動物同士を闘わせる行為については禁止すべきであるという意見があったが、伝統行事として社会的に認容されている事例については一律に禁止することは適切ではない。・・・行事開催者の動物取扱業の登録の徹底・・・など、動物への負担を可能な限り軽減し、情報集約や実施内容の透明性を確保する取組が必要である」とされたことも踏まえ、例えば、動物(動物の愛護及び管理に関する法律(昭和四十八年法律第百五号)第十条第一項に規定する動物をいう。以下同じ。)の取扱いに当たって、同項に規定する第一種動物取扱業の登録や、同法第二十四条の二の二に規定する第二種動物取扱業の届出等の仕組みがあるところ、同法第二十一条第一項(同法第二十四条の四第一項の規定において準用する場合を含む。)の規定に基づき、第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う動物の管理の方法等の基準を定める省令(令和三年環境省令第七号)を定めた上で、都道府県等による同令の厳格な運用に資するよう、「動物取扱業における犬猫の飼養管理基準の解釈と運用指針~守るべき基準のポイント~」(令和三年五月環境省作成)において、「第一種動物取扱業及び第二種動物取扱業の遵守基準のうち、特に立入検査において確認が行われる事項を中心にチェックリストとしてまとめて」示す等するとともに、「動物虐待等に関する対応ガイドライン」(令和四年三月環境省策定(最終改訂 令和七年三月))において、「実際に「虐待」該当性が問題となった事案としては、例えば、闘犬・闘牛・馬力大会がある。動物保護管理法下でのこれらについての疑義照会に対して、内閣総理大臣官房管理室長は「伝統行事として社会的に認容されている闘犬、馬力大会等を実施する行為は、当該行事を行うために必要な限度を超えて動物に苦痛を与えるような手段、方法を用いた場合を除き、動物の保護及び管理に関する法律第十三条(保護動物虐待罪)の規定に該当しないものと解する」と回答している。また、警察庁保安部防犯少年課長は「伝統行事として行われるものであっても、残虐であれば同法第十三条(保護動物虐待罪)に該当する」とした上で、「闘犬・闘牛について残虐かどうかは、当該闘犬・闘牛が動物を死に至らせ又は以後の生存に重大な影響を及ぼすような傷を負わせる性質を有するかどうかを基準として判断している」・・・と回答している。(中略)地域性、時代性により社会通念は常に変化しており、一つ一つの事案について、これらを踏まえた慎重な判断が求められる」等と示すことなどにより、都道府県等を通じて、動物取扱業者における動物の適正な取扱いを促しているところである。政府としては、引き続き、こうした取組を進めることとしており、現時点で、お尋ねのように「闘犬を全国的に禁止する」ことは考えていない。

五について

 文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)第百八十二条第二項において、「地方公共団体は、条例の定めるところにより、重要文化財、重要無形文化財、重要有形民俗文化財、重要無形民俗文化財及び史跡名勝天然記念物以外の文化財で当該地方公共団体の区域内に存するもののうち重要なものを指定して、その保存及び活用のため必要な措置を講ずることができる」と規定されているところ、御指摘の「土佐闘犬」は、高知県が、同項の規定に基づき、高知県文化財保護条例(昭和三十六年高知県条例第一号)の定めるところにより、当該指定を行い、その保存及び活用のため必要な措置を講じているものと承知しており、お尋ねの「必要性」も含め、高知県において適切に判断されるべきものと考えている。

六について

 お尋ねのように「地域の伝統や文化の継承と動物愛護・動物福祉を両立させる」ことは重要であると考えており、引き続き、こうした観点から、四についてで述べた動物愛護に関する必要な取組を進めてまいりたい。