質問主意書

第219回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一九第二三号
  令和七年十一月七日
内閣総理大臣 高市 早苗


       参議院議長 関口 昌一 殿

参議院議員伊勢崎賢治君提出集団殺害犯罪の防止及び処罰に関する条約批准に向けた同条約と国内法制との関係の整理に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員伊勢崎賢治君提出集団殺害犯罪の防止及び処罰に関する条約批准に向けた同条約と国内法制との関係の整理に関する質問に対する答弁書

一について

 国際連合の公表によれば、北朝鮮は、集団殺害犯罪の防止及び処罰に関する条約(以下「ジェノサイド条約」という。)に加入しており、また、ロシア及び中国はジェノサイド条約を批准していると承知している。

二について

 国際連合の公表によれば、お尋ねの「加入、承継又は批准のいずれもしていない国」に該当するのは、我が国であると承知している。

三について

 前段のお尋ねについては、ジェノサイド条約は、締約国に対し、集団殺害等の行為を国内法により犯罪化する義務を課していることから、ジェノサイド条約を締結するためには、ジェノサイド条約上の義務と国内法制との関係を整理する必要があり、関係省庁において議論を深めてきているところである。後段のお尋ねについては、「ジェノサイド条約が求める内容の全て」及び「ジェノサイド条約に抵触しない」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、仮にジェノサイド条約上の義務の具体的な内容についてのお尋ねであれば、ジェノサイド条約を締結するためには、当該内容について整理する必要がある。

四について

 お尋ねの「日本人の委員」の発言は、国連国際法委員会の委員としてなされたものであり、我が国政府の見解として述べたものではなく、また、「「the most serious crimes」の一つであるジェノサイドについて「the most serious cases」(最も重大なケース)である煽動罪を設けることに「法的な障害」はなく」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、いずれにせよ、ジェノサイド条約は、締約国に対し、集団殺害等の行為を国内法により犯罪化する義務を課していることから、ジェノサイド条約を締結するためには、ジェノサイド条約上の義務と国内法制との関係を整理する必要があり、関係省庁において議論を深めてきているところである。

五について

 お尋ねの「前文の責務」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、国際刑事裁判所に関するローマ規程(平成十九年条約第六号)前文は、国際法によって処罰すべきことが定められている国際的な犯罪とされる行為について、刑事裁判権を行使することが全ての国家の責務であることを一般的に述べているものであり、お尋ねの「ジェノサイドについて責任を有する者に対して刑事裁判権を行使する」ための国内法の整備について義務付けるものではないと認識している。