第219回国会(臨時会)
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内閣参質二一九第一八号 令和七年十一月七日 内閣総理大臣 高市 早苗
参議院議長 関口 昌一 殿 参議院議員伊藤孝恵君提出指定病院等における不在者投票等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員伊藤孝恵君提出指定病院等における不在者投票等に関する質問に対する答弁書 一について 不在者投票制度については、投票日当日に投票所に出向いて投票することができない選挙人の投票する手段として有効なものと考えているところ、選挙は、民主主義の根幹をなすものであり、選挙の公正を確保しつつ、御指摘の「投票所における選挙期間中の投票が困難な入院患者や障がい者」を含め選挙権を有する全ての方が投票できる環境を整えることが重要と認識している。 二について お尋ねの「全国的な実態」の意味するところが必ずしも明らかではないが、公職選挙法(昭和二十五年法律第百号。以下「法」という。)第四十九条第一項の規定による病院等における不在者投票(以下「病院等における不在者投票」という。)については、「意思確認を行った数」及び「事務従事者や立会人の選任方法」は把握していないが、不在者投票施設において当該施設の状況等に応じて適切に対応されるべきものと考えており、全国的な調査は考えていない。「実際の投票者数」が、仮に、病院等における不在者投票の投票者数を意味するものであるとすれば、国政選挙及び統一地方選挙に係るものは把握している。 三について お尋ねの「特化した周知・啓発活動」の意味するところが必ずしも明らかではないが、総務省においては、同省ウェブサイトにおいて病院等における不在者投票の手続について記載しているほか、選挙人の投票機会を確保するため、国政選挙及び統一地方選挙に際し、各選挙管理委員会に対し、それぞれの地域の実情を踏まえ、不在者投票施設の適切な指定がなされるよう要請しているところである。 また、都道府県選挙管理委員会においては、不在者投票施設に対して、病院等における不在者投票の事務の手引きや説明会を通じて、病院等における不在者投票を実施する日時や投票用紙等の請求手続等について当該施設の入所者に適切に周知する等の取組を要請していると承知している。 四について 御指摘の「積極的に利用する指定病院等や選挙管理委員会の事例」の意味するところが必ずしも明らかではないが、総務省においては、国政選挙及び統一地方選挙に際し、各選挙管理委員会に対し、それぞれの地域の実情を踏まえ、不在者投票施設の適切な指定がなされるよう要請するとともに、選挙人に対する不在者投票制度の周知や公正な実施の確保など、病院等における不在者投票の適切な運用が図られるよう要請を行っているところであり、引き続き、病院等における不在者投票における選挙人の投票機会が十分に確保されるよう努めてまいりたい。 五の前段について 法第四十九条第二項の規定による郵便等による不在者投票(以下「郵便等による不在者投票」という。)は、身体に重度の障害がある選挙人に投票の機会を与えるための例外的な投票方法であり、投票管理者や投票立会人がいない中で投票を行うものであるため、どのような者を郵便等による不在者投票の対象とするかについては、要介護五の認定者を郵便等による不在者投票の対象とする法の改正が議員立法により行われた等の経緯もあることから、選挙の公正確保の観点も含め、各党各会派において御議論いただく必要があると考える。 五の後段について お尋ねについては、投票立会人不在の投票を特段の要件なしに広く認めることに関し、選挙の公正確保等との関係から議論が必要であるほか、大規模なシステムを構築することに伴う安定稼働対策や大規模なシステムの構築及び維持に要するコスト等の論点も克服することが必要であり、これらの課題の検証とともに、インターネット投票に関する幅広い関係者の理解の促進等を着実に進める必要があると考えており、また、選挙制度の根幹に関わる事柄であり、各党各会派における議論も踏まえる必要があると考えている。 六について 御指摘の「投票意思の確認」については、できる限り選挙人の投票機会の確保に配慮して行うことが望ましいと考えられるが、その具体的な方法については、不在者投票施設の状況等は様々であることから、各不在者投票施設において、判断されるべき事柄であると考えている。 七について 病院等における不在者投票の期間は、法第二百七十条の二及び公職選挙法施行令(昭和二十五年政令第八十九号。以下「施行令」という。)第五十八条第一項により定められており、その期間においては御指摘の「一括投票後」であっても病院等における不在者投票を行うことは可能であるところ、総務省においては、各選挙管理委員会に対し、それぞれの地域の実情を踏まえ、病院等における不在者投票の適切な運用が図られるよう要請を行っており、御指摘の手引きの記載についても、東京都選挙管理委員会において地域の実情を踏まえて考え方を示されているものと承知している。 八について お尋ねについては、一般的に、医療ソーシャルワーカーによる支援は病院等における患者の円滑な意思決定に資するものとされていると承知しているが、医療ソーシャルワーカーを活用することを含め、御指摘の「選挙人の意思確認」の具体的な方法については、不在者投票施設の状況等は様々であることから、各不在者投票施設において、判断されるべき事柄であると考えている。 九について 御指摘の「様々な疾患の患者会や親の会等と連携しつつ、国や都道府県が投票事務に従事するボランティアを主導的に募集する」の意味するところが必ずしも明らかではないが、不在者投票施設の状況等は様々であることから、「選挙事務補助者」については、各不在者投票施設において当該施設の状況等を踏まえて選任いただくことが適当であると考えている。 十について お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、不在者投票施設における御指摘の「電子投票」の活用については、地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に係る電磁的記録式投票機を用いて行う投票方法等の特例に関する法律(平成十三年法律第百四十七号)第三条において、「電子投票」は、選挙人が、自ら、投票所において、電磁的記録式投票機を操作することにより、当該電磁的記録式投票機に記録されている公職の候補者のうちその投票しようとするもの一人を選択し、かつ、当該公職の候補者を選択したことを電磁的記録媒体に記録する方法によるものとされているところ、病院等における不在者投票は「電子投票」の対象とされておらず、病院等における不在者投票においては活用ができないものである。 また、「鳥取県南部町等におけるオンライン立会い実施」については、「投票所におけるオンラインによる立会いについて(通知)」(令和六年四月二十六日付け総行選第二十六号総務省自治行政局選挙部選挙課長通知)において、法第三十八条第一項の規定において、二人以上五人以下の投票立会人を選任しなければならないこととされている投票立会人に関し、「投票事務の執行を監視することにより、選挙人の自由な意思によって投票できる環境を確保するという投票立会人の役割を確実に果たすためには、少なくとも一人は投票立会人が投票所内に所在し、現に立ち会うことが必要であること」を示したところである。病院等における不在者投票については、施行令第五十八条第三項において準用する施行令第五十六条第三項の規定において、不在者投票管理者は、選挙権を有する者を立ち会わせなければならないこととされており、その立ち会う者は一人いれば足りるものと解されていること等を踏まえ、御指摘の「オンライン立会いの活用」が「人的負担を軽減する手段」として有効かどうかについては、慎重に検討する必要がある。 |