質問主意書

第219回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一九第四号
  令和七年十月三十一日
内閣総理大臣臨時代理        
国務大臣 木原 稔


       参議院議長 関口 昌一 殿

参議院議員塩村あやか君提出匿名・流動型犯罪グループに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員塩村あやか君提出匿名・流動型犯罪グループに関する質問に対する答弁書

一、七及び八について

 お尋ねについては、令和七年四月二十二日の犯罪対策閣僚会議で決定した「国民を詐欺から守るための総合対策二・〇」(以下「総合対策」という。)において、「対策が進むにつれ、犯人側は、それに応じて手口を巧妙に変化させている」とされているところ、政府としては、総合対策に基づき、「地方公共団体、民間事業者、外国当局や国際機関等国際社会とも連携・協力」しながら、「各種サービスやインフラの不正利用を防止するための取組」や「変化する欺罔の手口の国民への迅速かつ実効的な広報・注意喚起」等の各種施策を強力に推進しているところであり、「手口の変化に応じて機敏に対策をアップデート」してまいりたい。また、一連の施策の一つとして、御指摘の「匿名・流動型犯罪グループ」の「解体・撲滅」のため、同年十月に組織犯罪又はサイバー犯罪への対策に精通した約四十人の職員を配置した匿名・流動型犯罪グループ情報分析室を警察庁長官官房企画課に設置したほか、同月に組織犯罪対策に精通した捜査員を中心に約二百四十人の職員を配置した匿名・流動型犯罪グループ対策本部が警視庁に設置されたところである。さらに、お尋ねの「海外の組織体制」の「調査・研究」については、その具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、警察においては、平素から関係国の捜査当局と緊密に意見交換及び情報交換を行っており、捜査当局の体制等についての必要な情報収集に努めているところである。

二について

 お尋ねの「被害状況」及び「政府の対策」の「効果」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、御指摘の「悪質ホストクラブ問題」について、引き続き深刻な問題であると認識しており、被害の防止のための広報啓発を実施するとともに、善良の風俗の保持等の観点から、いわゆる「ホストクラブ」の実態把握に努めているほか、悪質な違法行為については風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和二十三年法律第百二十二号)違反で検挙するなど、関係法令に基づき適切に対処しているところである。また、これらの対策の効果については、様々な観点から総合的に評価されるものであり、一概にお答えすることは困難である。

三について

 御指摘の「エージェント」並びにお尋ねの「捜査等」及び「具体的な成果」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねのような事案について、職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)第六十三条第二号の罪で検挙するなど、これまでも取締りを行ってきたところであり、引き続き、法令に違反する行為が認められれば、法と証拠に基づき厳正に対処することとしている。

四について

 御指摘の「検挙逃れ」については、その具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「犯罪組織」による犯罪であるか否かにかかわらず、刑罰法令に触れる行為を認めた場合には、法と証拠に基づき厳正に対処することとしている。また、御指摘の「犯罪組織に係る確度の高い情報提供があるにもかかわらず、警察が積極的に捜査をせず、犯罪組織に検挙逃れを許すことが常態化」した場合の「情報提供」が行われなくなる「可能性」については、仮定の質問であることからお答えすることは差し控えたいが、いずれにせよ、引き続き、首謀者の検挙を始めとした犯罪組織の壊滅に向けた取組を推進してまいりたい。

五について

 御指摘の「匿名・流動型犯罪グループ撲滅に向けたロードマップ」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「匿名・流動型犯罪グループが引き起こす各種犯罪に対する具体的な数値目標」については、例えば、国家公安委員会及び警察庁が実施した政策評価である「令和六年度実績評価書」(令和七年八月公表)において、「匿名・流動型犯罪グループの主な資金獲得犯罪である特殊詐欺」に係る「認知件数及び被害総額」、「検挙件数及び検挙人員」及び「中枢被疑者の検挙人員」を指標として「達成目標」を設定し取組の評価を行っており、これらの評価も踏まえ、「今後の取組の重点」を示しているところである。

六について

 前段のお尋ねについては、お尋ねの「その成果」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、警察においては、関係国との二国間協議を実施するとともに、犯罪対策に関する国際会議に積極的に参画しているほか、外務省とも連携しながら、現地の捜査当局との協力・連携を強化し、特殊詐欺等の海外拠点の摘発に向けた捜査を推進しており、例えば、令和七年二月から八月までの間において、タイ、カンボジア、フィリピン及びマレーシアから送還された特殊詐欺に係る日本人の被疑者四十一人を我が国警察当局において検挙している。

 後段のお尋ねについては、お尋ねの「フィリピンを始めとする海外における日本人による犯罪数の推移等」の具体的に指し示す範囲が必ずしも明らかではないため、網羅的にお答えすることは困難であるが、在外公館が邦人援護を通じて把握した国外における日本人による犯罪の認知件数は、令和三年においては百四十四件、令和四年においては百十六件、令和五年においては二百七十三件であった。