第219回国会(臨時会)
|
内閣参質二一九第三号 令和七年十月三十一日 内閣総理大臣臨時代理
国務大臣 木原 稔
参議院議長 関口 昌一 殿 参議院議員塩村あやか君提出物価高対策としてのエネルギー自給率向上及び産業基盤強化等の必要性に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員塩村あやか君提出物価高対策としてのエネルギー自給率向上及び産業基盤強化等の必要性に関する質問に対する答弁書 一の前段及び二について お尋ねの「エネルギー自給率向上に向けた現状の課題」については、エネルギー源について化石燃料に過度に依存している状況からの脱却、再生可能エネルギーの導入拡大、原子力の活用等が挙げられる。また、お尋ねの「目標の達成に向けた戦略・施策」及び「エネルギー自給率向上の確実な実現に向け、政府はどのような計画を策定するのか」については、政府としては、「エネルギー基本計画」(令和七年二月十八日閣議決定)において、令和二十二年度におけるエネルギー需給の見通しを示すものとして一定の前提の下で令和七年二月に経済産業省が作成した「二千四十年度におけるエネルギー需給の見通し(関連資料)」が「実現した場合、二千四十年度エネルギー自給率は三~四割程度が見込まれる」としており、同計画に記載しているとおり、「再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源」の活用などに取り組む方針である。 一の後段について 政府としては、「エネルギー基本計画」に記載しているとおり、「エネルギー分野のインフレーションが契機となり、食品など様々な分野において国際的なインフレーションが発生した。我が国においても、電力需給ひっ迫やエネルギー価格の高騰が生じるなど、石油危機以来のエネルギー危機が危惧される極めて緊迫した事態に直面することとなった」との認識の下、お尋ねについて、「化石燃料への過度な依存から脱却し、エネルギー危機にも耐え得るエネルギー需給構造への転換を進めていく」ことが重要であると考えている。 三について お尋ねの「太陽光パネル」については、令和七年三月二十六日の衆議院経済産業委員会において、武藤経済産業大臣(当時)が「政府としても、この間、固定価格買取り制度等、いわゆるFIT導入を進めた一方で、量産体制の確立ですとかサプライチェーンの強化などの面では、必ずしも対応が十分ではなかった」と受け止め、「欧州ですとか、特に中国の海外市場が猛烈なスピードで拡大をする中で、原材料のシリコンの安定調達、そして市場の拡大に対応した十分な規模の設備投資がなされず、厳しい価格競争にさらされ、急速にシェアを落としていった」と述べているとおりである。 お尋ねの「大型風車」については、同年六月六日の参議院本会議において、同大臣(当時)が「現在、大型風車を製造できる日本企業がないのは、・・・事業環境の変化への対応が官民共に十分ではなかったとの反省があります」と受け止め、「世界の洋上風力市場が急拡大をした二千十年代後半に風車の受注や大型化競争で海外企業に後れを取ったことなどが背景だと考えています」と述べているとおりである。 お尋ねの「蓄電池」については、同年四月十一日の同委員会において、同大臣(当時)が「従来の政策というものは、世界に先行して日本が技術優位を確立した液系のリチウムイオン電池、これについて、量産投資は民間企業に委ね、そして、次世代技術である全固体電池、この方に技術開発を我々は政策資源を集中してきた」として、「蓄電池産業政策に対する反省については、有識者を交えた官民で議論を行いまして、二千二十二年に蓄電池産業戦略を策定した際に整理をした」と受け止め、「世界では、例えばお隣の国ですとか、政府支援の強力なものを背景に、液系リチウムイオン電池の投資競争が激化をして、中国並びに韓国企業が技術で日本に追いつき、コスト面も含めて国際競争力で逆転をされてしまった、まさに日本の蓄電池の世界シェアの低下につながったものと分析をしている」と述べているとおりである。 四について お尋ねについては、御指摘の「世界市場の獲得」も見据えた我が国の産業の国際競争力の強化に向けて、国際競争の激化、急速な技術革新の進展、産業構造の変化等の我が国の産業を取り巻く情勢の変化を勘案しつつ、令和七年十月二十四日の所信表明演説において、高市内閣総理大臣が「我が国の課題を解決することに資する先端技術を開花させることで、日本経済の強い成長の実現を目指します」及び「AI・半導体、造船、量子、バイオ、航空・宇宙、サイバーセキュリティ等の戦略分野に対して、大胆な投資促進、国際展開支援、人材育成、スタートアップ振興、研究開発、産学連携、国際標準化といった多角的な観点からの総合支援策を講ずることで、官民の積極投資を引き出します」と述べている方針に沿って、具体的な政策を不断に検討し、実施していく考えである。 五について 御指摘の「国内技術の確立」及び「産業基盤の強化」に係るお尋ねの「工程」について、御指摘の「ペロブスカイト太陽電池」については、「エネルギー基本計画」において、「二千二十五年までに二十円/キロワットアワー、二千三十年までに十四円/キロワットアワー、二千四十年までに十円~十四円/キロワットアワー以下の水準を目指して技術開発を進める。また、国内において強靱な生産体制を確立させることが重要であり、二千三十年を待たずにギガワット級の構築を目指す。官民関係者が総力を挙げて、世界に引けを取らない規模とスピードで、量産技術の確立、生産体制整備、需要の創出に三位一体で取り組み、二千四十年には約二十ギガワットの導入を目標とする」としている。 御指摘の「洋上風力」については、技術開発を行う事業者等に対してグリーンイノベーション基金を通じた開発費用の一部補助等の継続的な支援を行っており、「洋上風力産業ビジョン(第二次)」(令和七年八月八日洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会策定)において、「我が国におけるライフタイム全体での国内調達比率を二千四十年までに六十五パーセントにする」との産業界の目標を定めている。また、「エネルギー基本計画」においても「特に浮体式洋上風力発電について、技術開発によるコスト低減と量産化、生産・設置基盤や最適な海上施工方法の確立を通じ、国内サプライチェーンの強化や国際展開を進めるとともに、産業界と教育・研究機関が連携した人材育成を強力に推進する」としている。 御指摘の「蓄電池」については、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画二〇二五年改訂版」(令和七年六月十三日閣議決定)において、「蓄電池産業戦略に基づき、二千三十年に向けた国内外の蓄電池・部素材・製造装置の製造基盤の更なる拡大及び二千三十年頃の本格実用化に向けた全固体電池の研究開発を進める」こととしており、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(令和四年法律第四十三号)第七条の規定に基づき特定重要物資として政令で指定された蓄電池等の生産基盤の整備等に関して、安定供給確保支援基金を通じて事業者等を支援するとともに、蓄電池の開発を行う事業者等に対してグリーンイノベーション基金を通じてその費用の一部補助等を継続的に行っている。 六について 政府としては、お尋ねの「研究開発を支える予算の拡充」については、「統合イノベーション戦略二〇二五」(令和七年六月六日閣議決定)において、「科学技術・イノベーションを巡る国家間の競争を勝ち抜くため、官民が連携・協力して引き続き必要な研究開発投資を行う」としていることなどを踏まえ、その確保に取り組むこととしている。また、お尋ねの「人材育成」については、同戦略において、「世界トップ水準の大学院教育を行う拠点形成や教育研究の国際化等の大学院改革の推進とともに、博士課程学生・若手研究者の処遇向上を進める」としていることなどを踏まえ、人材育成の強化に取り組むこととしている。 七について 前段のお尋ねについては、令和七年五月二十一日の参議院本会議において、あべ文部科学大臣(当時)が「公教育の再生に向け、教師に優れた人材を確保する必要があると認識しております」と述べているとおり、御指摘のように「質の高い教師を十分に確保する必要」があると認識している。 後段のお尋ねについては、御指摘の「抜本的な制度改正や改革」及び「再び発展させる」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、次代を担う科学技術人材の育成のための取組を、義務教育段階及び高等学校段階から総合的に推進することは重要であると認識しており、これらの教育を担う御指摘の「質の高い教師」を「確保」するための「政府の方針」として、「経済財政運営と改革の基本方針二〇二五」(令和七年六月十三日閣議決定)において「教師に優れた人材を確保するため、働き方改革の更なる加速化、処遇改善、指導・運営体制の充実、育成支援を一体的に進める。二千二十九年度までを緊急改革期間と位置付け時間外在校等時間の月三十時間程度への縮減を目標とし、学校・教師の担う業務の適正化やDXによる業務効率化、教育委員会ごとの取組状況の見える化、PDCAサイクルの強化、指導・運営体制の充実に取り組む。(中略)地域枠の活用を含む教員養成大学等の機能強化、養成段階からの教師人材の育成・確保の仕組みの改革、研修の充実、奨学金返還支援の学部段階を含む更なる検討に取り組む」としている。 |