質問主意書

第219回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二一九第一号
  令和七年十月三十一日
内閣総理大臣臨時代理        
国務大臣 木原 稔


       参議院議長 関口 昌一 殿

参議院議員塩村あやか君提出奨学金返還に係る負担軽減策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員塩村あやか君提出奨学金返還に係る負担軽減策に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「政府が把握している負担の実態」については、例えば、独立行政法人日本学生支援機構(以下「機構」という。)の貸与型奨学金について、令和六年三月に貸与を終了した奨学金に係る一人当たりの貸与総額は約三百三十万円であり、返還に要する年数は平均で約十五年であると承知している。

 また、政府に対しては、機構の奨学金の返還負担の軽減を求める意見、要望等が国民から寄せられているところであり、政府としても、奨学金の返還に係る支援制度である減額返還制度、返還期限猶予制度等により奨学金の返還困難者への経済的負担の軽減に係る支援に努めているところである。

二について

 所得控除及び税額控除に係るお尋ねの「特徴や効果の違い」については、例えば、累進税率を前提とすれば、所得額から一定額を控除する方式では高所得者ほど税負担の軽減額が大きくなる一方、税額から一定額を控除する方式では所得水準によらず税負担の軽減額が一定となることが挙げられる。

 また、これらの控除の創設を検討する際に「考慮する要素や基準等」については、一概にお答えすることは困難であるが、控除対象となる費用等の性格や政策目的に加え、税制の公平性や財政への影響等の様々な要素を総合的に勘案している。

三について

 お尋ねの「これらの税制措置には公平性に課題がない」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「他の政策的な税制措置」については、二についてで述べたように、控除対象となる費用等の性格や政策目的に加え、税制の公平性や財政への影響等の様々な要素を総合的に勘案した上で合理的な措置として創設されたものであると承知している。

 その上で、所得控除や税額控除の創設を検討するに当たり勘案される要素は、個々の税制により異なるものであり、お尋ねの「貸与型奨学金の返還額を所得控除の対象」とする税制措置を創設することについては、御指摘の「当該答弁」における「公平性」などの観点も含めた慎重な検討が必要であると考えており、お尋ねのように「貸与型奨学金の返還額を所得控除の対象としない理由として公平性を掲げるのは不適切」であるとは考えていない。

四及び六について

 御指摘の「これらの施策の導入前後で教育に係る負担の世代間格差が拡大している」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねの「奨学金の返還額について所得控除又は税額控除を認めること」については、御指摘の「教育無償化や奨学金の拡大といった取組」が進んだ場合も含め、「前記の公平性の観点のほか、所得控除の効果が限定的であること」に加え、例えば、税収減に伴う財政への影響の観点や奨学金の貸与を必要以上に受けることにより経済的利益を享受するなど奨学金制度が悪用される可能性の観点から課題があると考えており、お尋ねのような税制措置の創設は、現時点において考えていない。

五について

 お尋ねについては、平成十八年度に、機構の第二種学資貸与金の返還金の利子相当額について所得税の税額控除を行う制度の創設について検討した事実があるが、同貸与金の貸与を受けていない者との公平性に課題があり、かつ、低所得者に対する効果が限定的との判断に至ったことから創設には至らず、以降、御指摘の「貸与型奨学金の返還額を所得控除や税額控除の対象とすること」について検討していない。