第219回国会(臨時会)
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質問第九二号 高市総理の言う「台湾有事」の存立危機事態における「我が国と密接な関係にある他国」の意味等に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年十二月十七日 小西 洋之
参議院議長 関口 昌一 殿 高市総理の言う「台湾有事」の存立危機事態における「我が国と密接な関係にある他国」の意味等に関する質問主意書 令和七年十一月七日の衆議院予算委員会において、岡田克也委員の「どういう場合に存立危機事態になるのかということをお聞きしたいんですが、いかがですか。」との質疑に対して、高市内閣総理大臣は「これはやはり他国に、台湾でしたら他の地域と申し上げた方がいいかもしれませんが、あのときはたしか台湾有事に関する議論であったと思います。その台湾に対して武力攻撃が発生する、海上封鎖というのも、戦艦で行い、そしてまた他の手段も合わせて対応した場合には、武力行使が生じ得る話でございます。例えば、その海上封鎖を解くために米軍が来援をする、それを防ぐために何らかのほかの武力行使が行われる、こういった事態も想定されることでございますので、そのときに生じた事態、いかなる事態が生じたかということの情報を総合的に判断しなければならないと思っております。」と答弁した(以下「第一答弁」という。)。 その後、高市内閣総理大臣は「先ほど有事という言葉がございました。それはいろいろな形がありましょう。例えば、台湾を完全に中国、北京政府の支配下に置くようなことのためにどういう手段を使うか。それは単なるシーレーンの封鎖であるかもしれないし、武力行使であるかもしれないし、それから偽情報、サイバープロパガンダであるかもしれないし、それはいろいろなケースが考えられると思いますよ。だけれども、それが戦艦を使って、そして武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースであると私は考えます。実際に発生した事態の個別具体的な状況に応じて、政府が全ての情報を総合して判断するということでございます。実に武力攻撃が発生したら、これは存立危機事態に当たる可能性が高いというものでございます。法律の条文どおりであるかと思っております。」と答弁した(以下「第二答弁」という。)。 また、岡田克也委員の「武力攻撃が発生したら存立危機事態に当たる。どういう意味ですか。武力攻撃が誰に発生することを言っておられるんですか。」との質疑に対して、高市内閣総理大臣は「武力攻撃が発生をして、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合という条文どおりでございます。」と答弁し、質疑に答えていない。 以下質問する。 一 第一答弁で高市総理が想定している存立危機事態では、「米軍が来援をする」としていることから、存立危機事態の要件である「我が国と密接な関係にある他国」は、米国を想定しているのか。 二 第二答弁で高市総理が想定している存立危機事態では、存立危機事態の要件である「我が国と密接な関係にある他国」は、米国か。米国は「我が国と密接な関係にある他国」ではないという想定である場合にはその理由を明確に説明されたい。 三 第二答弁で高市総理が想定している存立危機事態では、存立危機事態の要件である「我が国と密接な関係にある他国」は、台湾か。台湾は「我が国と密接な関係にある他国」ではないという想定である場合にはその理由を明確に説明されたい。 四 高市総理は、第一答弁において「その台湾に対して武力攻撃が発生する、海上封鎖というのも、戦艦で行い、そしてまた他の手段も合わせて対応した場合には、武力行使が生じ得る話でございます。例えば、その海上封鎖を解くために米軍が来援をする、それを防ぐために何らかのほかの武力行使が行われる、こういった事態も想定されることでございますので、」とし、第二答弁において「例えば、台湾を完全に中国、北京政府の支配下に置くようなことのためにどういう手段を使うか。それは単なるシーレーンの封鎖であるかもしれないし、武力行使であるかもしれないし、それから偽情報、サイバープロパガンダであるかもしれないし、それはいろいろなケースが考えられると思いますよ。だけれども、それが戦艦を使って、そして武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースであると私は考えます。」としているところ、高市総理が想定する存立危機事態とは、中国(北京政府)が戦艦を使う武力の行使によって台湾に海上封鎖を行い、その海上封鎖を解くために米軍が来援した際に、その米軍に対して中国軍が行う武力の行使(武力攻撃)が発生する場合を述べているものなのか、具体的に説明されたい。また、仮に、これ以外の場合を想定しているのであれば、高市総理として、どのような場合を「どう考えても存立危機事態になり得るケース」と考えていたのかについて具体的に説明されたい。 五 岸田文雄外務大臣は、平成二十七年六月十五日、衆議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会において「密接な関係にある他国につきましては、今申し上げましたように、自衛権を行使するのは国でありますので、国家が該当し、そして未承認国あるいは分裂国家も入る、このように説明をしております。そして、その上で、台湾について御質問をいただきました。台湾につきましては、我が国として説明する際に慎重を要するということ、これは外交についてお考えを持つ委員であるならば十分御案内のことかと思います。我が国は、サンフランシスコ平和条約第二条によって、台湾に対する全ての権利、権原及び請求権を放棄していますので、台湾の法的地位に関して独自の認定を行う立場にない、このように我が国としましては説明をさせていただいております。台湾につきましては、以上でございます。」と答弁した。 高市内閣はこの政府見解を維持しているか。台湾は、存立危機事態の要件である「我が国と密接な関係にある他国」にいう「国」なのか。また、「台湾の法的地位に関して独自の認定を行う立場にない」との見解は、政府として存立危機事態条項の「我が国と密接な関係にある他国」の要件に台湾を法的に当てはめて検討すること自体を行わない、あるいは、行い得ないという見解を意味するのか。更に、台湾は、第一答弁で高市総理が「「これはやはり他国に、台湾でしたら他の地域と申し上げた方がいいかもしれませんが、」としているように、政府において国ではなく地域としているのであれば、「我が国と密接な関係にある他国」には、そもそも当たらないのではないか、政府の見解を具体的かつ明確に示されたい。 右質問する。 |