第219回国会(臨時会)
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質問第八八号 存立危機事態が「平素」であるとする政府答弁に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年十二月十七日 小西 洋之
参議院議長 関口 昌一 殿 存立危機事態が「平素」であるとする政府答弁に関する質問主意書 政府は、福島みずほ参議院議員が提出した「有事における特定利用空港・港湾の利用に関する質問主意書」(第二百十九回国会質問第三二号)に対する答弁(内閣参質二一九第三二号)において、内閣官房が公表した「「総合的な防衛体制の強化に資する公共インフラ整備」に関するQ&A(令和七年八月二十九日更新)」について、「有事については、法令上の用語ではなく、正確な定義があるわけでもないが、お尋ねの「Q3における「有事」」については、武力攻撃事態又は武力攻撃予測事態という意味で用いており、お尋ねの「Q3を含むQ&Aにおける「平素」」については、武力攻撃事態及び武力攻撃予測事態以外の状況という意味で用いており、存立危機事態又は重要影響事態も排除していない。」と答弁した。 以下質問する。 一 「平素」とは、広辞苑(第七版)によれば、「つね日ごろ。ふだん。平常。」の意味である。存立危機事態は、「つね日ごろ。ふだん。平常。」か。 二 存立危機事態においては、我が国に対する武力攻撃がないことから、「平素」という文言を用いたという理解でよいか。 三 平成二十七年五月二十八日の衆議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会において、中谷元防衛大臣兼安全保障法制担当大臣(当時)は、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成十六年法律第百十二号。以下「国民保護法」という。)というのは、「我が国への直接攻撃や物理的な被害からいかにして国民、その生活を守るかという視点に立って、そのために必要となる警報の発令、住民の避難や救援等の措置を定めるものでございます。」と答弁しており、したがって、我が国への直接攻撃や物理的な被害が存在しない存立危機事態においては、令和六年六月六日の参議院総務委員会において政府が答弁したように、「国民保護法は、存立危機事態に際して、その措置、それに対する措置としては適用されない」と考えるのが当然である。 この「国民保護法は、存立危機事態に際して、その措置、それに対する措置としては適用されない」という政府の見解に変更はないか。 四 武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成十五年法律第七十九号)第二条第四号に規定する存立危機事態については、我が国に対する武力攻撃がない「平素」にすぎず、また、国民保護法が適用されないにもかかわらず、「存立危機事態」という名称としたのは、国民に誤解と不安を与え、不適切ではないか。 五 政府は、いわゆる昭和四十七年政府見解である「集団的自衛権と憲法との関係」において、「憲法は、第九条において、同条にいわゆる戦争を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しているが、前文において「全世界の国民が・・・・平和のうちに生存する権利を有する」ことを確認し、また、第十三条において「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、・・・・国政の上で、最大の尊重を必要とする」旨を定めていることからも、わが国がみずからの存立を全うし国民が平和のうちに生存することまでも放棄していないことは明らかであつて、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。しかしながら、だからといつて、平和主義をその基本原則とする憲法が、右にいう自衛のための措置を無制限に認めているとは解されないのであつて、それは、あくまで外国の武力攻撃によつて国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るための止むを得ない措置としてはじめて容認されるものであるから、その措置は、右の事態を排除するためとられるべき必要最少限度の範囲にとどまるべきものである。そうだとすれば、わが憲法の下で武力行使を行なうことが許されるのは、わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られるのであつて、したがつて、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない。」としている。 平成二十七年九月十四日の参議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会において、横畠裕介内閣法制局長官(当時)は「これまでは、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態に当てはまるのは我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみであると考えていたわけでございます。」と答弁したが、昭和四十七年政府見解が「わが国がみずからの存立を全うし」や「武力攻撃によつて国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされる」という文言を用いていることからすれば、我が国に対する武力攻撃が発生した場合こそが「存立危機事態」という名称にふさわしい事態であり、我が国に対する武力攻撃が発生しておらず、「平素」にすぎず、国民保護法の適用がない事態を「存立危機事態」という名称で表すことは、国民に誤解と不安を与え、不適切ではないか。 右質問する。 |