質問主意書

第219回国会(臨時会)

質問主意書

質問第八六号

スルガ銀行不正融資問題の早期解決に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年十二月十七日

牧山 ひろえ


       参議院議長 関口 昌一 殿



   スルガ銀行不正融資問題の早期解決に関する質問主意書

 スルガ銀行株式会社(以下「スルガ銀行」という。)による不正融資問題は、金融機関の健全性と金融行政への信頼を大きく揺るがした重大事案である。

 この問題について、私は令和四年五月二十四日の参議院財政金融委員会(以下「委員会」という。)において、被害の全体像が十分に解明されていないこと、シェアハウス向け融資のみならずアパート・マンション向け融資(以下「アパマン向け融資」という。)にも深刻な被害が及んでいること、被害者救済がなお不十分であること、金融庁及び内閣府特命担当大臣(金融)(以下「金融担当大臣」という。)の監督責任が厳しく問われることを指摘した。これに対し、政府は、スルガ銀行に対し被害者に寄り添った対応を求めていく旨、金融行政としても必要な指導を行っていく旨を答弁した。

 しかし、現在に至るまで、アパマン向け融資による被害は実質的に解決されておらず、被害者からは、スルガ銀行が真摯に対応していないとの声が上がり続けている。また、司法的解決についても、立証の困難性や時間的・経済的負担の大きさから、実効的な救済に結び付いていない。こうした状況については、政府がこれまで委員会等で示してきた認識や答弁との間に齟齬が生じていると言わざるを得ない。

 スルガ銀行は令和七年五月十三日、金融庁から銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)第二十四条第一項に基づく報告徴求を受領した旨を公表した。これによれば、アパマン向け融資の問題に関して、「全ての債務者の個別解決に至っておらず、解決に向けた取組みが長期化している理由及び期限等を示した上で今後、早期解決を図っていくための具体的な改善策について」示すことを金融庁から求められている。

 以上を踏まえ、以下質問する。

一 私は委員会において、スルガ銀行の不正融資問題について、アパマン向け融資においても被害が発生している旨を指摘した。政府は、アパマン向け融資による被害に関する問題意識を否定せず、実態把握に努める旨答弁した。政府は、現時点において、アパマン向け融資による被害の件数、規模及び内容等の実態をどう把握しているか、具体的に明らかにされたい。

二 政府は委員会において、スルガ銀行に対し、被害者の立場に立った誠実な対応を求める旨答弁した。また、金融担当大臣は、銀行法その他関係法令に基づき、必要に応じて金融機関に対する指導・監督を行う権限を有している。同権限に基づき、金融庁は平成三十年十月五日、スルガ銀行に対し、健全かつ適切な業務運営を確保するため、「投資用不動産融資に関して、金利引き下げ、返済条件見直し、金融ADR等を活用した元本の一部カットなど、個々の債務者に対して適切な対応を行うための態勢の確立」を含む業務改善命令を発出した。

 スルガ銀行が業務改善命令を遵守し、問題解決に向けて真摯に対応してきたと政府は評価しているか示されたい。評価している場合、評価に値するスルガ銀行の対応を具体的に示されたい。評価していない場合、政府としてスルガ銀行に対してどのような対応を行ったか示されたい。

三 私は委員会において、本問題が単なる個別金融機関のトラブルではなく、金融行政の信頼に関わる重要な問題であると指摘した。政府として、スルガ銀行の不正融資問題が金融行政全体への信頼に及ぼしている影響をどのように認識しているか示されたい。

四 政府はこれまで、本問題について司法的解決も一つの手段であるとの立場を示してきた。司法的解決を全て否定するわけではないが、現実には多くの被害者が司法的解決に至っていない。本問題が解決せずに長期化している要因は、司法手続において、スルガ銀行が各案件に固有の事情を個別に検討すべきとの立場に固執し、かつ、融資経緯等の解明に具体的に協力していないことにあると考える。

 スルガ銀行不正融資問題について、司法的解決には限界があると政府は認識しているか示されたい。

五 シェアハウス向け融資問題については一定の政治的整理が行われた一方、アパマン向け融資問題については未整理のままである。こうした状況は、政府が過去の答弁で示してきた被害者救済を進めるとの方針と整合しているとは言い難い。

 早期解決を図るためには、アパマン向け融資問題についてもシェアハウス向け融資問題と同様に、スルガ銀行の組織的な不正が背景にあるという事件の本質の共通性に着目し、包括した解決を強く主導すべきだと考える。シェアハウス向け融資問題でできたことがアパマン向け融資問題でなぜできないか。できない理由を明らかにされたい。

六 スルガ銀行不正融資問題、特にアパマン向け融資問題については、司法的解決のみに委ねず、金融担当大臣の責任において政治的・行政的な解決を図る必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。

七 金融庁は、スルガ銀行に対し、不正に関与した行員の氏名及び処分理由の全面開示を指示し、早期の抜本的な救済及び解決を促すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

八 スルガ銀行は令和七年十二月十五日、アパマン向け融資問題について、裁判所の調停勧告に基づいて解決を目指す旨発表した。合計六百四物件のうち、百九十四物件についてはスルガ銀行の不法行為が成立する可能性があるとして総額百二十一億円の解決金を支払い、四百十物件についてはスルガ銀行の個別支援策で解決を目指すとしている。解決に向けた大きな動きであり、新しい方針の発表に踏み切ったスルガ銀行の決断には一定の評価をするが、この方針によっても救われない被害者はいる。スルガ銀行の不正による被害という共通項に対し、すべからく救済を行ってこそ、求められている「包括的な解決」になると考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。