第219回国会(臨時会)
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質問第八五号 子どもからのSOSを聞き逃さない仕組みに関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年十二月十七日 牧山 ひろえ
参議院議長 関口 昌一 殿 子どもからのSOSを聞き逃さない仕組みに関する質問主意書 児童虐待や学校等におけるいじめは、子どもの生命・身体・尊厳に重大な危害を及ぼす深刻な人権侵害である。近年、児童相談所への虐待通告件数は高止まりし、いじめの重大事態も後を絶たない。子どもが発する微細な兆候や間接的な訴えを社会全体で受け止め、適切な支援につなげる体制の構築は、国の最重要課題である。 私はこれまで、平成二十七年三月二十六日の参議院厚生労働委員会等において、本質問主意書と同様の問題提起及び提案をしてきた。しかし、相談窓口の分散、学校・福祉・医療・警察等の縦割り、通報後の対応のばらつき、子どもが安心して声を上げられる環境の不足などにより、子どもからのSOSが届かない事例、届いても救済につながらない事例の存在が引き続き指摘されている。政府の認識と具体的な対応を明らかにするため、以下質問する。 一 児童虐待及びいじめに関し、子どもからのSOSが「未把握」、「把握遅延」となる主因を、政府はどのように分析しているか。直近の課題認識を具体的に示されたい。 二 子どもからのSOSの相談窓口は、子ども関係の所管省庁の縦割りを反映して、多数ある状況にある。これに地方自治体の担当部署も加わると、子どもにとってはどこに相談するのが適切かの判断が困難となる。また、相談窓口を必要とする子どもは既に追い詰められており、最適な窓口を冷静に選べる状況にないと想定される。 子どもからのSOSが適切な相談窓口に届かない原因の一つとして、相談窓口の乱立があるのではないかと考える。この点に関する政府の認識を示されたい。 三 子どもからのSOSを受け止める体制の整備に当たっては、相談を受ける側である所管省庁の立場に立つのではなく、相談をする側である子どもの立場に立った制度設計にすべきである。具体的には、子どものSOSに関することについて、いじめ・虐待・人権問題など種別を問わず、子ども本人・周囲の大人など相談者を問わない、全てを統合した窓口(以下「統合窓口」という。)を創設し、事案の性質や専門性に応じて最適な部署等に割り振るべきと考える。この点に関する政府の見解を示されたい。 四 児童相談所虐待対応ダイヤル「一八九(いちはやく)」や二十四時間子供SOSダイヤル「〇一二〇―〇―七八三一〇(なやみいおう)」については、「いちはやく」や「なやみいおう」は大人の言葉遣いであり、小さな子どもにとって分かりにくく幅広く浸透しているとは言えない状況である。統合窓口の電話番号については、例えば、一二三番や一一一番など、一一〇番や一一九番よりも子どもが簡単に覚えることができる三桁の分かりやすい番号を付与することを提案する。子どもの命に関わる問題であり、提案のような対応をすべきと考えるが、政府の見解を伺う。 五 統合窓口を適切に運用していくためには、相談を受けた後、緊急度を判定するトリアージと関係機関への引継ぎが迅速かつ確実に行われる必要がある。そのためには、標準化された統合窓口の運用指針を整備する必要があると考える。運用指針の必要性に関する政府の認識を示されたい。不要と考える場合、その理由を示されたい。 六 私が前記の問題提起及び提案をしてから十年以上が経過している。その間に、多くの子どもが危険な目に遭い、苦しんだと考えられる。救える命もあったはずである。政府が対応しなかった間に被害が拡大した可能性について、認識を示されたい。 右質問する。 |