質問主意書

第219回国会(臨時会)

質問主意書

質問第八三号

被害者手帳導入の政策目的及び制度設計に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年十二月十七日

牧山 ひろえ


       参議院議長 関口 昌一 殿



   被害者手帳導入の政策目的及び制度設計に関する質問主意書

 犯罪被害者等基本法(平成十六年法律第百六十一号)の施行から二十一年が経過した。しかし、被害者支援に係る制度は複雑かつ情報が不十分であるため、依然として多くの被害者・遺族が必要な支援に十分アクセスできていない。被害者支援については、制度の周知不足、自治体間格差、関係機関の連携不足、属人性など、これまで指摘されてきた制度の断片化という課題がいまだ解消されていない。

 こうした課題を解消し、被害者支援に係る制度へのアクセスを保障する政策的手段として、被害者手帳の導入が検討されていると承知している。しかし、その政策目的、掲載内容、制度設計等が曖昧なままでは単なる情報冊子になってしまい、本質的な課題の解消にはつながらない。

 本来、被害者手帳は、捜査・公判手続、医療・心理ケア、経済的支援、福祉・生活再建支援など、関係機関にまたがる支援を体系化し、被害者が必要とする支援を可視化する政策的手段として機能すべきものである。全国共通の基準を設けることで、自治体間の支援の格差縮小にも寄与し得る。

 以上を踏まえて、以下質問する。

一 被害者手帳導入の政策目的について

 1 被害者手帳を単なる情報冊子とせず、被害者支援に係る制度へのアクセスを保障する政策的手段として位置付ける考えはあるか明確に示されたい。

 2 被害者手帳を被害者支援に係る制度全体の統合的ガイドラインとして位置付ける考えはあるか示されたい。

 3 被害者手帳の導入により、被害者支援に係る制度における関係機関の連携不足という課題がどのように改善されるか示されたい。

二 被害者手帳の掲載内容について

 1 被害者手帳に、捜査・公判手続、医療・心理ケア、経済的支援、福祉・生活再建支援など、関係する支援を包括的・体系的に整理して掲載し、被害者支援のワンストップサービス化を図る考えはあるか示されたい。

 2 被害者手帳については、被害者の心理状態や生活再建の段階に応じて必要な情報にアクセスできる構成にすべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

 3 政府として、被害者支援の標準的なフローを被害者手帳に明確に示し、全国共通の基準とする考えはあるか示されたい。

 4 自治体間の支援の格差を縮小するために、都道府県警察、自治体、民間支援団体などの窓口情報を統一的に掲載する考えがあるか示されたい。

 5 各自治体が独自に作成する被害者支援に係るガイドブックとの整合性をどのように確保するか示されたい。また、政府として最低限の統一基準を設ける考えはあるか示されたい。

 6 被害者参加制度や修復的司法へのアクセスに係る内容を被害者手帳に掲載する見込みはあるか示されたい。

三 被害者手帳の導入に伴う検討事項について

 1 海外における被害者手帳に相当する政策的手段の導入事例を示されたい。事例がある場合、参考になる先行事例として扱うべきと思料するが、政府の見解を示されたい。

 2 被害者支援のための冊子としては、制度等を説明した「被害者の手引」が活用されてきた。また、東京、京都、佐賀などでは「支援ノート」が作成されている。これらの先行事例における評価すべき点や改善すべき点について、政府の認識を示されたい。

 3 長期的な被害者支援の体制を構築するため、関係機関が支援の経過を共有する「カルテ」の導入も並行して検討されていると承知している。前向きな検討と評価するが、同カルテには個人情報の漏えいに係るリスクがあると思料する。当該リスクへの対応方針を示されたい。

 4 被害者手帳を配付する対象として、どのような犯罪の被害者を想定しているか示されたい。

 5 被害者手帳の導入の検討において、被害者及び関係者等の当事者の意見をどのように取り入れてきたか示されたい。また、被害者手帳の導入に当たり、今後の検討及び運用段階において、どのように当事者の参画を図る方針か示されたい。

  右質問する。