質問主意書

第219回国会(臨時会)

質問主意書

質問第七八号

帰化の許可及び永住許可の要件厳格化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年十二月十六日

百田 尚樹


       参議院議長 関口 昌一 殿



   帰化の許可及び永住許可の要件厳格化に関する質問主意書

 小泉進次郎防衛大臣は令和七年十一月十八日の参議院外交防衛委員会における所信的挨拶において、「我が国を取り巻く安全保障環境は、戦後最も厳しく複雑なもの」となり、「東アジアにおいても、戦後の安定した国際秩序の根幹を揺るがしかねない深刻な事態が発生する可能性は排除でき」ないとし、「中国、北朝鮮、ロシアの軍事的動向等が深刻な懸念」であると表明した。しかし、中谷元防衛大臣(当時)は同年六月五日の参議院外交防衛委員会において、「我が国の防衛政策は、特定の国や地域を脅威とみなし、これに軍事的に対抗をしていくという発想には立って」いないと答弁していた。小泉防衛大臣が「懸念」として名指ししたように、中国、北朝鮮、ロシアに対応しなければならない状況下にあったにもかかわらずである。

 一方、近年の戦争は必ずしも軍隊によるものに限らない。例えば、同年三月二十四日の参議院外交防衛委員会においては、ハイブリッド戦としての三戦「世論戦、心理戦、法律戦」について、「静かなる侵略」の実態を踏まえた議論がなされた。また、島田洋一衆議院議員は同年五月十四日の衆議院国土交通委員会法務委員会連合審査会において、中国の場合、「二〇一〇年に施行された国防動員法によって、有事の際には海外在住の中国人も国防任務に就かないといけない」、「二〇一七年施行の国家情報法によって、有事、平時を問わず、海外在住の中国人は国家情報機関の指示に基づいて情報工作活動に従事しないといけない。」と指摘した。

 この状況下であれば当然、我が国における外国人に対する日本国籍の付与、すなわち帰化の許可は慎重に行われなければならない。帰化した者には同日、被選挙権を含む参政権が付与される。他方、出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)第二十二条が規定する「永住者」には参政権が付与されない。したがって、帰化の許可と永住許可において求められる要件は、前者が後者に対し加重されたものとなるべきである。

 以上を踏まえ、以下質問する。

一 帰化の許可及び永住許可に共通して求められる要件の一つに、住所要件がある。国籍法(昭和二十五年法律第百四十七号)第五条第一項第一号では、帰化の許可において「引き続き五年以上日本に住所を有すること。」が求められている。永住許可においては、入管法に定めはないが、出入国在留管理庁の内規である「永住許可に関するガイドライン(令和七年十月三十日改訂)」では、「原則として引き続き十年以上本邦に在留していること。ただし、この期間のうち、就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能一号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き五年以上在留していることを要する。」とされている。このように、住所要件については、より慎重に判断しなければならない帰化の許可の方が、永住許可と比較して緩やかとなっている。

 政府は令和七年五月十二日の参議院決算委員会において、永住許可の住所要件は、「統一的な運用基準を設ける必要性や基準緩和の要請等を踏まえ、平成十年二月に当時の法務省入国管理局の内規を変更し」たものであり、帰化の住所要件は、明治三十二年に制定された「旧国籍法の条件を踏襲したもの」であると答弁している。

 1 明治三十二年、平成十年、令和七年では、我が国を取り巻く安全保障環境は全く異なっている。帰化の許可及び永住許可における住所要件について統一的な整理を行い、帰化の許可に係る要件は永住許可の要件に対し加重したものとすべきと考えるが、政府の見解を示されたい。また、加重したものとなっていない理由を示されたい。

 2 毎日新聞は令和七年十二月五日、政府が帰化の許可における住所要件を運用上十年以上とする検討を行っていると報じた。住所要件の見直しに当たっては、我が国を取り巻く安全保障環境が「戦後最も厳しく複雑なもの」となっている状況を踏まえ、帰化の許可、永住許可ともに要件を加重する方向性とすべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

 3 現在、帰化の場合は日本人の配偶者及び子について、永住許可の場合は日本人又は永住者若しくは特別永住者の配偶者及び子について、それぞれ住所要件が原則に比べて大きく軽減されている。しかし、特に帰化については、現下の安全保障環境に鑑み、住所要件を現在より加重する必要があると思料するが、政府の見解を示されたい。

二 現下の安全保障環境に鑑み、小泉防衛大臣が懸念を表明した各国を始めとする我が国と国益が対立関係にある国(以下「対立国」という。)の出身者による帰化申請に対しては、対立国以外の国の出身者による帰化申請と比べ、より厳格な審査が必要と考える。

 1 鈴木馨祐法務大臣(当時)は令和七年五月二十七日の参議院法務委員会において、難民認定の審査については「最新の出身国情報等を踏まえて」、「案件の類型化」をしていくと答弁した。帰化の許可についても、例えば申請者の出身国の敵国性を踏まえた対応等の「類型化」を行うべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

 2 帰化の許可の審査に当たり、日本国への忠誠の宣誓と、母国と日本が戦争になった際も日本国の側に立つ意志表明を求めるべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

三 帰化により日本国籍を付与された者には我が国への参政権が付与されるが、対立国の出身者が我が国に帰化する場合がある。

 1 対立国出身の帰化者が参政権の行使を通じて内政をゆがめる危険性があると考えるが、政府の見解を示されたい。

 2 対立国からの内政干渉を防ぐため、対立国出身の帰化者に付与される参政権に一定の制約を課すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

 3 対立国出身の帰化者が選挙へ立候補したとき、有権者への情報提供の一環として帰化情報を告示事項とすべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

 4 前記3に実効性を持たせるため、帰化情報について虚偽や隠蔽があった場合には、当該帰化者に罰則を科すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

四 法務省が公表した「帰化許可申請者数、帰化許可者数及び帰化不許可者数の推移」によれば、令和六年の帰化許可者数は八千八百六十三人であり、平成期よりは少ないものの、昭和期よりは高い水準となっている。こうした現状を踏まえ、年間の帰化許可者数について上限を定める総数制限を行う必要性があると考えるが、政府の見解を示されたい。

五 法務省民事局によれば、帰化の許可に当たり、国籍法上の要件ではないものの、実務上は「日常生活に支障のない程度の日本語能力(会話及び読み書き)を有していること」が求められている。しかし、実態は小学生低学年レベルの日本語能力で足りるとの指摘もある。帰化許可申請者に求める日本語能力については、例えば日本語能力試験のような資格試験を課すなど、現行よりも高いレベルを求めるべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

六 入管法上の永住許可は「永住権」と称されることがある。鈴木法務大臣(当時)は令和七年五月十二日の参議院決算委員会において、「永住権よりも帰化の方が容易だというような状況、これは明らかに私もおかしいと思います」と答弁しており、政府においても「永住権」の用語が使用されている。我が国の法制度上、「永住権」という権利は存在するか、政府の見解を示されたい。

七 日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(平成三年法律第七十一号)に基づき、現在、我が国には特別永住者の外国人が在留している。上川陽子外務大臣(当時)は令和六年五月十五日の衆議院外務委員会において、特別永住者について、「平和条約の発効によりまして本人の意思に関わりなく日本の国籍を離脱した者で、終戦前から引き続き我が国に在留している者及びその子孫でございまして、歴史的経緯を背景とした法的地位であるため、そもそも在留資格取消し制度の対象とはされていない」と答弁した。

 戦後八十年が経過し、平和条約の効力発生からも七十年以上が経過した現在にあっては、特別永住者を通常の永住者の資格に切り替えることを検討してもよいと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。