第219回国会(臨時会)
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質問第七五号 ネットオークションにおけるアイヌ民族の戸籍簿の売買に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年十二月十六日 福島 みずほ
参議院議長 関口 昌一 殿 ネットオークションにおけるアイヌ民族の戸籍簿の売買に関する質問主意書 全国的な戸籍として一八七二年から編製された壬申戸籍には犯罪歴や身分が記載された。また、地域によっては、新平民、元非人などの賤称も記載された。こうした記載が就職や結婚に際して悪用されるなどの差別につながったため、法務省は一九六八年に回収と厳重保管を通達し、壬申戸籍は閲覧禁止となった。北海道立文書館などでは、旧土人戸籍や給与地は非公開となっている。 二〇二五年十二月、アイヌ民族の戸籍簿と称するものがネットオークションで売買されていたと報道された。過去にもネットオークションで壬申戸籍の売買が行われたが、出品者の特定や回収、再発防止は制度化されていない。これは、アイヌ民族への差別を助長し、人権を毀損するだけにとどまらず、「全国部落調査」復刻版出版事件や「部落探訪」削除裁判にもつながる問題である。差別されない権利の保障と個人情報保護の観点から、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)や特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(平成十三年法律第百三十七号。以下「情報流通プラットフォーム対処法」という。)の問題点の解消を踏まえた新たな制度の検討が求められる。 以上を踏まえて、以下質問する。 一 前記報道によれば、アイヌ民族の戸籍簿は、表紙に「旧土人戸籍写 豊栄尋常小学校」と書かれており、「同校の児童とみられる個人名と両親の名前、性別、生年月日」等が記されていた。差別を助長する戸籍簿がネットオークションで売買されていたことを政府は把握していたか示されたい。把握していた場合、どのように対応したか示されたい。把握していない場合や対応していない場合、今後対応する予定があるか示されたい。 二 戸籍法は、「偽りその他不正の手段」により戸籍謄本等の交付を受けた場合等を罰則の対象としているが、これ以外の入手手段については罰則の対象としていない。ネットオークションにおける戸籍簿の売買は、「偽りその他不正な手段」に該当するか示されたい。また、出品者の特定及び戸籍簿の回収を速やかに行い、規制の対象とすることを検討すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。 三 二〇二五年四月一日に施行された情報流通プラットフォーム対処法は、インターネット上の誹謗中傷や権利侵害への対応を強化するための法律であり、大規模プラットフォーム事業者に対して、削除対応の迅速化及び運用状況の透明化に係る義務を定め、これらの義務に違反した場合の罰則を定めている。 総務省は情報流通プラットフォーム対処法に規定する大規模特定電気通信役務提供者に「LINEヤフー株式会社」を指定している。しかし、壬申戸籍やアイヌ民族の戸籍簿が売買された「Yahoo!オークション」は、LINEヤフー株式会社が提供するサービスである。厳重保管となっている戸籍簿の売買が行われ続ける状況に鑑み、政府は、「Yahoo!オークション」を提供するLINEヤフー株式会社に対して勧告等の措置を講ずるべきと考えるが、見解を示されたい。 四 ネットオークションでこれまでに売買された壬申戸籍やアイヌ民族の戸籍簿について、政府はどのように回収を行い、再発防止に努めるか示されたい。 右質問する。 |