第219回国会(臨時会)
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質問第六五号 ミャンマー軍事政権が引き起こす人道問題への我が国の対応に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和七年十二月九日 ラサール石井
参議院議長 関口 昌一 殿 ミャンマー軍事政権が引き起こす人道問題への我が国の対応に関する質問主意書 ミャンマーでは、二〇二一年二月の国軍による軍事クーデター発生以降、武力衝突、空爆、無差別砲撃、放火、インフラの破壊等によって深刻な人道危機が発生している。国連難民高等弁務官事務所は、ミャンマーにおける国内避難民数について、二〇二五年十一月二十四日時点で約三百六十三万九千人と公表している。 ミャンマー軍事政権は、二〇二五年十二月二十八日から二〇二六年一月にかけて総選挙を実施する予定である。しかし、総選挙については、軍事政権を正当化するための「見せかけの選挙」にすぎないとの国際的な批判が高まっている。また、国連人権高等弁務官事務所は、軍事政権が市民に投票を強要しているとの懸念、白票や無効票を認めない電子投票装置や人工知能による監視システムが反政府派の特定に利用されるおそれがあるとの懸念を表明している。在日ミャンマー人活動家有志が十八歳以上の在日ミャンマー人一万五千百六十七人を対象に行った世論調査では、回答者の九十九パーセントが「総選挙を受け入れない」と回答している。 一方、米国のトランプ政権は二〇二五年十一月、ミャンマーを含む十九箇国出身の移民の受入れを停止すること、二〇二一年のクーデター以降米国に避難してきたミャンマー出身者に滞在を認める一時保護資格を打ち切ることを発表した。 日本国憲法は、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」、「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」と定めている。我が国は、国際社会の一員として、ミャンマーの人々が「平和のうちに生存する権利」を享受できるよう、しかるべき措置を講ずるべきである。 以上の問題意識から、以下質問する。 一 我が国は前記の総選挙の正当性を断じて認めてはならないと考えるが、政府の認識を示されたい。 二 岩屋毅外務大臣(当時)は、二〇二五年三月二十一日の衆議院外務委員会において、「日本政府といたしましては、アウン・サン・スー・チー氏を含む被拘束者の解放や、事態打開に向けた対話などの政治的進展に向けた動きが見られないままで総選挙を実施しても、かえってミャンマー国民による更なる強い反発を招いて、平和的解決がより困難になるということを深刻に懸念をしております。」と答弁した。政府は現在も同じ認識を継承していると考えてよいか示されたい。 三 前記の総選挙が実施され、新たな政権が誕生したとしても、我が国はその正当性を認めてはならないと考えるが、政府の認識を示されたい。 四 二〇二一年以降、我が国において難民認定申請を行ったミャンマー国籍者の人数、そのうち難民として認定された者の人数及び難民とは認定されなかったものの補完的保護対象者と認定された者の人数を年ごとに示されたい。 五 二〇二一年以降、我が国において補完的保護対象者認定申請を行ったミャンマー国籍者の人数及びそのうち補完的保護対象者と認定された者の人数を年ごとに示されたい。 六 二〇二一年以降、ミャンマー国籍であって退去強制令書を発付された者の人数及びそのうち強制送還された者の人数を年ごとに示されたい。 七 前記の総選挙が実施され、新たな政権が誕生したとしても、完全な民政に移管されるわけではなく、国軍による人権侵害が収束するとは限らない。総選挙が終わったことを理由にミャンマーへの送還を進めてはならないと考えるが、政府の認識を示されたい。 八 ミャンマー政府は、二〇二三年九月一日以降、海外で就労するミャンマー人に対し、収入の二十五パーセントを本国に送金することを義務付けている。我が国で就労するミャンマー人が本国に送金した総額について、政府は把握しているか示されたい。 九 ミャンマー政府は海外で就労するミャンマー人に対し、送金のみならず、所得税の納付も義務付けている。これらは、我が国で就労するミャンマー人にとっては過重な負担になっており、国軍にとっては外貨獲得手段になっていると指摘されている。政府は、我が国で就労するミャンマー人の収入の一部が、送金や納税によって国軍の資金源になっている可能性について把握しているか示されたい。把握している場合、政府の認識を示されたい。 十 米国国土安全保障省は、ミャンマー出身避難民の政権による打切りを決めた理由について、「情勢が改善し安全に帰国できる」と判断したと説明している。政府は、ミャンマーの現在の情勢について、米国と同じ認識か、又は、いまだ情勢は改善しておらず、安全に帰国できるとは言えないとの認識か、いずれか示されたい。 十一 トランプ政権による移民の受入れ停止やミャンマー出身避難民の一時保護打切りは、軍政下の本国に帰ることができないミャンマー出身者を命の危険にさらすことになる。我が国として、トランプ政権に方針転換を求めるべきと考えるが、政府の認識を示されたい。 十二 政府は在留資格の更新手数料を大幅に引き上げる方針と報道されている。しかし、同手数料の引上げは、送金や納税によって経済的に困窮しているミャンマー避難民を一層の困窮に追い込むと懸念される。手数料を払えないために在留資格を更新できず、非正規滞在になる人も少なくないと考えるが、政府として救済策を考えているか示されたい。 右質問する。 |