質問主意書

第219回国会(臨時会)

質問主意書

質問第六二号

米軍関係者による犯罪に係る通報手続及び再発防止対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年十二月九日

高良 沙哉


       参議院議長 関口 昌一 殿



   米軍関係者による犯罪に係る通報手続及び再発防止対策に関する質問主意書

 市民グループ「フェミブリッジ沖縄」は二〇二五年十月三十日、沖縄県議会議員等と共に、米軍関係者による性的暴行事件への抗議、不平等な日米地位協定の抜本改定等についての要請書を政府等に提出した。二〇二三年以降、沖縄県においては米軍関係者による性的暴行事件が相次いでいる。二〇二五年十一月十九日には、同年六月に米軍関係者が十八歳未満の少女への不同意わいせつを行った疑いで書類送検されていたことが判明した。

 以上を踏まえて、以下質問する。

一 二〇二三年十二月二十四日、沖縄県において米軍関係者による十六歳未満の少女に対する誘拐・性的暴行事件が発生した。その際、米軍や日本政府が沖縄県に対して迅速に通報しなかったことにより、被害者支援や再発防止対策の遅れにつながった可能性があると問題になった。当該事件発生時の沖縄県への通報について、一九九七年の日米合同委員会の合意(以下「日米合意」という。)に沿った通報が迅速に行われなかった理由を、事件の経緯と併せて示されたい。

二 林芳正内閣官房長官(当時)は二〇二四年七月五日の記者会見において、在日米軍による犯罪における国内情報共有体制として、「沖縄においては、米軍人による犯罪予防の観点から、迅速に対応を検討する必要があることに留意し、関係省庁で連携の上、可能な範囲で、地方自治体に対しての情報伝達を行う」と発言した。しかし、米軍関係者による犯罪に係る地方自治体への通報手続については、日米合意で定めた手続の方が迅速であり、同手続に戻すべきとの声が沖縄県内で上がっている。前記記者会見で公表された手続は、誰がどのように定めた手続か詳細を示されたい。

三 前記記者会見において、林内閣官房長官(当時)は、「対外的な事件広報に当たっては、刑事訴訟法第四十七条の趣旨を踏まえ、個別の事案ごとに、公益上の必要性とともに、関係者の名誉・プライバシーへの影響、将来のものも含めた捜査・公判への影響の有無・程度等を判断した上で、公表するか否かや、その程度及び方法を慎重に判断しているものと承知をしております。」と発言した。日米合意で定めた通報手続においては、関係自治体への通報の際、訴訟に関する書類は求められておらず、関係者の名誉やプライバシーは守られている。通報が遅れることによって関係自治体や専門機関等が実施する被害者支援や再発防止対策に遅れが生ずる懸念があるが、こうした懸念をどのように払拭するか、政府の見解を示されたい。

四 被疑者が米軍関係者であった場合の身柄の拘束について、「刑事裁判手続に係る日米合同委員会合意(一九九五年十月)」では、合衆国は、「殺人又は強姦という凶悪な犯罪の特定の場合に日本国が行うことがある被疑者の起訴前の拘禁の移転についてのいかなる要請に対しても好意的な考慮を払う。」とされている。しかし、国内で発生した犯罪については、凶悪な犯罪か否かに関わらず、日本側が被疑者の身柄を拘束できれば捜査の円滑化が望める上、米軍関係者による犯罪の抑止力になると考えるが、政府の見解を示されたい。

五 米軍関係者による犯罪防止のため、米軍は二〇二五年四月から基地外で巡回パトロールを行っている。しかし、その効果は見られず、同年六月に前記の事件が発生した。

 沖縄県における米軍関係者に係る刑法犯検挙件数は、十月末の暫定値で既に昨年の件数を超える八十二件となっている。過去二十年間の最多記録を更新しており、政府はこの事態を重く見るべきである。米軍関係者による犯罪に歯止めを掛け、更なる被害者を生まないためにも、早期に実効性のある施策を行う必要があるが、具体的な施策と併せて政府の見解を示されたい。

六 米軍関係者による犯罪については、通報手続の改善だけでなく、日米地位協定の不平等性の解消も求められている。事件の適切な処理、被害者への迅速な支援とともに、再発防止の徹底が重要である。日米地位協定の改定は、沖縄県民だけでなく、広く国民全体の利益となると考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。