質問主意書

第219回国会(臨時会)

質問主意書

質問第六一号

ディープフェイク広告対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和七年十二月九日

齊藤 健一郎


       参議院議長 関口 昌一 殿



   ディープフェイク広告対策に関する質問主意書

 近年、AI技術の高度化により、著名人の肖像や声を無断で使用したディープフェイク広告(以下「当該広告」という。)が多数生成され、当該広告を信じた消費者が多大な金銭的被害を受けている。また、当該広告は、使用された著名人の社会的信用を毀損するとともに、デジタル空間で情報に接する国民の判断能力に深刻な影響を及ぼしており、政府として対処すべき重要な国民保護の課題である。

 現在、不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号。以下「景品表示法」という。)、特定商取引に関する法律(昭和五十一年法律第五十七号。以下「特定商取引法」という。)、不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)、特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(平成十三年法律第百三十七号。以下「旧プロバイダ責任制限法」という。)等に基づき、当該広告への個別対応は可能である。しかし、生成元の秘匿性、拡散の即時性、本人同意の有無を判別する手段の欠如といった当該広告の特徴を踏まえた対策に関する包括的な制度は未整備であり、関係省庁の所管が分散する構造的課題が指摘されている。

 アジア地域では、登場する人物のデジタル署名が確認できない広告に注意喚起表示を行う仕組みや、デジタル署名がない広告による被害が発生した場合のプラットフォーム各社への対応根拠を明確化する制度が導入され、当該広告の抑制に一定の効果を上げていると報告されている。これらはコンテンツの検閲ではなく、本人同意の有無に着目するものである。行政負担を増大させることなく国民保護を実現できる点は、我が国においても参考となり得ると考える。当該広告の蔓延は、国民の財産保護、デジタル取引の信頼性及び日本の国際的信用に関わる問題であり、政府として早急な検討が求められる。

 以上を踏まえて、以下質問する。

一 国内における当該広告による被害状況、特に、著名人の肖像や声の無断使用に関する通報・削除要請件数、当該広告を起因とする消費者の金銭的被害、プラットフォーム各社の削除対応率について、現状及び推移を示されたい。また、政府は、これらを定期的に把握する体制を構築する考えがあるか示されたい。

二 現行の景品表示法、特定商取引法、不正競争防止法、旧プロバイダ責任制限法等では、当該広告特有の問題に十分な対応ができないと考えるが、政府の認識を示されたい。特に、生成元特定の困難性、拡散の即時性、本人同意の有無を確認する制度が存在しないことを踏まえて答弁されたい。

三 広告に登場する人物に対して、デジタル署名その他の技術を活用した「任意の本人同意確認の仕組み」を制度として整備し、企業が希望する場合に利用可能とすることについて、政府の検討状況を示されたい。

四 登場する人物の同意が確認できない広告について、プラットフォーム各社が自主的に注意喚起表示を行うことができるよう、ガイドライン等を整備する考えがあるか示されたい。また、注意喚起表示としては、「この広告の登場人物については本人確認が行われていません」等が有効と考えるが、政府の見解を示されたい。

五 プラットフォーム各社が当該広告に迅速に対応できるよう、政府として、技術的基準、判断枠組み、注意喚起表示の方法などを明確化し、プラットフォーム各社の実務負担を軽減する制度の整備を検討しているか示されたい。あわせて、本人の同意が確認されていない広告に対してプラットフォーム各社が自主的に対応できるよう、支援策を講ずる考えがあるか示されたい。

六 当該広告の削除について、プラットフォーム各社が迷うことなく適切に対応できるよう、削除要請の判断基準、手続、連絡体制の統一化等、プラットフォーム各社の事務負担を軽減する制度の整備を検討しているか示されたい。特に、総務省、消費者庁、デジタル庁等の関係省庁が連携した対応体制について、現状と今後の方針を明らかにされたい。

七 当該広告に特化した新たな法制度又は既存法の横断的改正について、政府として検討を開始する意思があるか示されたい。特に、本人同意確認、注意喚起表示、プラットフォーム各社の対応基準、削除手続の迅速化を包括的に定める仕組みについて、それぞれの必要性に係る政府の見解を示されたい。

  右質問する。